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季節と詩情が常に添う父・露伴の酒、その忘れられぬ興趣をなつかしむ「蜜柑の花まで」。命のもろさ、哀しさをさらりと綴る「鱸」、「紹介状」「包む」「結婚雑談」「歩く」「ち」「花」など、著者の細やかさと勁さが交錯する29篇。「何をお包みいたしましょう」。子供心にも浸みいったゆかしい言葉を思い出しつつ、包みきれない「わが心」を清々しく1冊に包む、珠玉のエッセイ集『包む』。
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Posted by ブクログ
一つ読んでは唸り、また一つ読んでは唸り… 唸りつくした1冊。見事としか言いようがない。 昨今の小説を読んでがっかりするくらいなら幸田文さんの作品を読んでいたい。間違いがないもの。 ちょっと自分にはついていけない…というような、細やかで独自の感じ方をされる方です。 その感性や鋭い観察力によって心がど...続きを読むんなふうに動いていったかを表現する文章がまたすごい。 名文のオンパレードで、心の中で「まいりました!」と平伏したくなることが何度あったか。 例えば、「道ばた」の出だし。 「茶の間は往来からたった六尺ほどひっこんでいるだけなので、外の物音や声は随分よく聞えてしまう。あまり何でもよく聞えるから、ときどき変な気もちにさせられる。からだが家のなかにいながら、眼だの耳だのが往来の物事のところへついて行ってしまう。そんなとき、茶の間が往来へ編入されているような気がするし、私が往来へ参加しているような錯覚も起きる。」 ----- 特に好きだったのはこの「道ばた」、「廃園」「むしん」「包む」「菓子」「枇杷の花」など。 ----- 読むうちにふっと堀江敏幸さんの随筆を思い出すことがあったのだけど、 堀江さんは幸田文さんが好きなのかしら。影響を受けているのかしら。
幸田文のエッセイ集は数々ありますが、最初に読むのなら「包む」をおすすめします。 「何をお包みいたしましょう」で、思いがけないお土産を大量に包んでしまった話、幸田文の父が文が結婚するにあたって相手の親の気持ちになっていろいろ考える結婚雑談、晩年になって「この人私に似ている」と思う話、可愛がっていた猫を...続きを読むなくしてしまう話など読みどころが盛りだくさんです。
小津安二郎の映画みたいな昭和の生活風景が浮かんでくる、言葉遣いもゆかしいエッセイ。 昭和29年〜30年ころの作。
著者のエッセイをまとめた本です。 本書の表題になっている「包む」という文章では、かつてお菓子屋に務めていたひとが著者のもとをおとずれ、菓子折りを包装紙で包む手順などが昔のままであることを見て、包を受け取ったとたんに心のなかのわだかまりが解けていくのを感じたと語ったことが記されています。そのひとの心...続きを読むのきわめて具体的な動きをつづっている文章ですが、そこに人間の心についての普遍的な理解へと通じる光が差し込まれているように感じられて、どことなく『徒然草』の名人譚を連想させられます。
いただいたお寿司(それもおそらく巻物)を全部食べられなくて勿体ないからと食べてくれる人を探して右往左往する幸田文さんがこの時代の一般の人の姿だったのか、当時としても珍しいくらいの凛とした方だったのか?凛とした人であることは異論はなくとも、おそらく前者だったのではあろうなぁ。 昭和すら遠くなりにけった...続きを読む現代では想像もつかん。あゝ、冷蔵庫って偉大だなぁ。
儂が生まれた頃に書かれたエッセイ集。観察のこまやかさ、内省の深さは流石。人に対する観察には怖さも感じる。感覚は大変モダン。
そうか、随筆か、エッセイではないのか。 ぼんやりとしているが腹に落ちる。エッセイほどスラスラ読めない、でもじわじわくる。 父娘のやり取り含めて育ちが良いとはこういう人物なんでしょう。
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包む 現代日本のエッセイ
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