幸田文のレビュー一覧
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ネタバレ崩れを大地の暴力のように感じていた筆者が、「崩れとは地質的に弱いことだ」と言われて衝撃を受ける場面は印象的だった。日本は古来、災害を克服しようとし、災害と共に生きてきた国なのだと実感。
崩れの痕跡を求めて日本各地をゆくエッセイだと思っていたけど、痕跡ではなくいまなお崩れが続いており、しかもそんな崩れの地は日本各地にたくさんあると知って驚いた。
崩れなどという行くのに体力もいるような(そりゃ山崩れが起きるような場所ですから…)ものに、年老い体の自由も利かなくなった今になって興味を芽吹かせてしまった因果を嘆く筆者だが、老いてもなお好奇心に満ち満ちている文さんがかわいくもあります。 -
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ネタバレ姉と名のつくものは共感して止まない話ではないだろうか。しかも、ちょっと生きるのが下手な弟を持つ身には特に。冒頭の、雨の中傘をささずにぐんぐん歩いて行ってしまう弟の描写からもう引き込まれていった。
ゲンが碧郎を思うときの、可哀想と可愛いが絡み合って、胸がぐっとつまる感じ。いたたまれない。
可哀想に思ってしまうことをどうにかしたくて、母にも父にも友達にもなってやりたいと頑張ってしまう。姉にしかなれないことに結局は気づくのだけれど…。ゲンはよく頑張っていた。懸命な姿にもぐっと来てしまった。
碧郎のした丘の話が印象的だった。身に染みついてしまったうっすらとした哀しみを、拭わないまま死んでしまうことを思うとたまらない気持ちになる。 -
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文さんの文筆デビューは43歳と比較的遅い。
おそらく当時の読者は文さんに、父・露伴を描いた作品を過度に期待したはず。彼女も当初は随筆で、亡父の面影を公けにしていたが、この小説で“満を持して”自分の家族について世に出した観がある。しかし、世間の期待をわざと少しはぐらかすかのように、主人公は父ではなく、弟である。
この作品で「姉」は、女学生としての弱い姿のみでなく、病気がちで精神的にも不安定な継母に代わり、炊事などの家事をこなし、家族の生活を守る強い姿も描かれている。実際にも、文さんは他人よりも多くの苦労を、持ち前の気丈さで乗り切ったのだろう。だからなのか(意識的か無意識的か)時間を経るうちに心のフィルターで自分の少女時代を“純化”し、過去から守っているように思える。
例えば、弟が中学校で、ちょっとしたアクシデントで同級生にけがを負わせてしまう。弟は故意ではないと主張したが、周りは弟がわざとやったと思い込み、弟は孤立する。姉は、元々明るく屈託のなかった弟を信じるが、弟自身には、姉の純化された記憶とはまったく違った心の動きがあったはず。
確かに純化した自分自身と、自分を軸とした家族との位置関係はよく描けている。だが弟の心理描写は「女性視点」から見た男子の姿、すなわち文さんの心に映った“鏡像”の描写にとどまり、弟の精神的成長の動機を含んだ描写に、今ひとつ踏み込めていないのでは、と感じた。
男子の思春期にみられる精神的成長は、女性が想像できない複雑な過程をたどるもの。それがこの作品では「姉から視点」が勝ちすぎていて、不十分に感じる。私は男だから、そういう偏った女性視点に対しては、厳しい言い方をしてしまう。
「三つ違いの姉になど母親の愛はもてないものだ、と言われたのを痛く想いかえす。」のような、弟に対する自分自身の心象表現は、すごく光ってるのに…
だから、家族の絆が描かれた“仲良し”小説が好きならば本作品は気に入るだろう。でもドストエフスキーのような、一般的な家族像を超越した人間存在そのものを深く描く小説が好きならば、ちょっと食い足りないかもしれない。
(2010/6/9) -
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NHK番組「グレーテルのかまど」で紹介されていた幸田露伴と幸田文の関係を見て興味を持ち読みました。
露伴が亡くなった時の話から始まり、思い出を回想する形式なので、本全体を通してお父様を懐かしむような寂しさと愛おしさが感じられました。丁度自分の父親の病気が発覚したタイミングで読み進めたため、より一層その雰囲気が身に迫る思いでした。
文豪の父親、というと恐ろしく近寄りがたい人物というイメージがありましたが、この本を読む限り、厳しくはあるものの怖いということはなく、シングルファザーとして子どもと上手に接していたのだなと思います。文豪は世間離れしているという勝手なイメージもありましたが、実学をしっかりと教えていたのだなと驚きました。
父親とじっくり話したい気分になりましたが、、実際は難しいかな。 -
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【本の内容】
幸田露伴の死の模様を描いた「父」。
父と娘の日常を生き生きと伝える「こんなこと」。
偉大な父を偲ぶ著者の思いが伝わる記録文学。
[ 目次 ]
[ POP ]
家事全般に人づきあい、果ては男女のことまでも、あらゆる作法を父・幸田露伴から習ったという著者。
「こんなこと」に書かれている露伴の物言いは大和美人になるための教科書のよう。
「薪割りをしていても女は美でなくてはいけない」って、所作が雑な私としては反省しきり。
[ おすすめ度 ]
☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)
[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ] -
Posted by ブクログ
一度目は高校2年の時。その時はただ読んだだけに終わり、内容もそんなに残らずに終わった。
二度目は23の歳。全く違った。全て自分にはない体験ではあるのだけれど、だけれど何と言うのだろう、書かれている内容が全部染み込んでいった感じ。共感?すごく、「よくわかる」のような気分で読んでいた気がする。恐らくるつちゃんの生きた時間と同じだけ時間を経た分の理解がそこにあったのかもしれない。
自分は、女の子に本を勧めるとしたら、この本を同じようなタイミングで二度読みすることを勧めたいと思っている。下手な道徳よりも考えること思い当たることがあるし、こうすることで、この本の記憶がより鮮烈な体験となる。 -
Posted by ブクログ
現代人、いや私には理解できない着物の肌感覚。今の洋服にそこまでの感覚を持って洋服をきていないなぁと感じる。色、柄、触感。どれも大切なことなのに、おろそかにしている自分を感じた。
着物を通じて、主人公は成長をしていく。いや、成長を通して着物について深く考えていく主人公。それは女子なら通る道ではあるだけれど、着物というものを通してみていくと時代感覚もあって、理解できるけど今はない、奥ゆかしい女子の成長が描かれていた。
祖母の存在の大きさ。これは現代には薄くなってしまったな。祖母のいうことがいちいち含蓄を含んでいて、また主人公を深く理解していることが伝わってくる。身近な人の話を聴くことの大切さを改めて考えた。
震災の打撃。震災によってみえてくるもの。今だからこそ、この場面が真実味をもって見えてくる。
最初は着物の感覚が鋭すぎて、感覚についていけなかったが、後半に入って俄然面白くなった。
これは男性にはなかなか理解できない小説なんじゃないかと思った。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ名作なんだろうが、小公女とか灰かぶり姫とか、文学少女が好きな童謡を下敷きにされているのではと思うほど、主人公が辛らつな目に遭っていく。
幼い頃は着物に対する美意識がとにかく高くきかん気で、高いものねだりをするヒロイン。末っ子の我がままかと思うが、長ずるにしたがい、気位の高い長女、金に賢しい次女に、奴隷のように扱われる。「鬼龍院花子の生涯」みたいに。
女学校在学中に母が倒れ看病に疲れ、父のかつての浮気相手(?)も登場し、母の葬儀では姉ふくめた親類の酷さを見つけ、震災で焼け出されたあとで就職したものの、父の反対を押し切って結婚する。が、どうも不幸の影が付きまとったような終わり方。
遺作なので半端に切れたようだが、物わかりのいい祖母や苦学生の友人・和子の存在感だけが光り、あまり後味のいい話ではない。ただ着物の美学や当時の女性の感じ方を知るにはうってつけの教材かもしれない。
しかし、子どもだてらに下着をひけらかしたり、痴漢が出たり、初夜がなまめかしかったり。タイトルから品の良さを勝手に期待していたのでびっくりした。
自伝的小説らしいが、父も幸田露伴がモデルなのだろうか。