幸田文のレビュー一覧

  • 草の花 現代日本のエッセイ

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    女子学院に通った少女時代を回想する表題作がよい。思春期の感性豊かな心の動きが丁寧に描かれている。特に精神的に惹かれる正枝や、作者に手紙で好意を打ち明けてくる滝沢さん等、思春期の女子特有の精神的恋愛のエピソードが面白い。

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    2026年09月13日
  • 木(新潮文庫)

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    木を見て人の生き方を思い、それを文章に変えて表現するその才能が素晴らしい。

    私はよく山に行く。山に行くと、木を見て、触ったりもする。

    「これは◎◎だ」などと木や草花の名を言えたらカッコいいかなという下心で、ポケット図鑑片手に山を歩いて、勉強している。

    そもそも、木というもの自体が好きだ。

    人の一生なんかでは追いつかないほど長い間そこにあるということが、なぜだか惹きつけられる。

    ゆっくりじっくり時間をかけて育ち、虫や気候条件、場所などの環境に耐えて生き残った木々が山にあり、それを見て癒されたり、材として活用したり。

    人間の長い長い歴史の側には必ず木の存在があり、人はそれを節度を持って使うことで、繁栄してきた。

    建築にしろ道具にしろ、木がなければ人の生活は成り立たない。

    そのはずなのに、森林や木はなんだか縁の遠いもののようになってしまっていると感じる。

    私は日本の木の家具雑貨のインテリアブランドを運営しているが、その立ち上げの理由の一つは、「国産材のことをもっと知ってほしい」というものだ。

    意外と、身近にある森林のことを知らないよだ。

    まだまだ勉強中で、先をいく方々のお話を伺うと、本当に木の世界は奥深いなと痛感する。

    この本の中に、法隆寺の宮大工である西岡棟梁のエピソードがある。

    「木は生きている」と西岡棟梁は言い、それは立木の時も、材になってからもそうだと言う。

    長い時間かけて育った木を、有り難く大切に使い、長く使われるものを作る。そして山にまた木を植えて未来につなぐ。

    言葉にすれば簡単だが、多くの人間と商流が絡み合い、一筋縄にはいかない課題だ。その課題の解決に、多くの人が尽力している。

    私もその課題の解決のために多くの人が積み上げてきたものに、石の一つでも置けるような人間でありたい。

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    2026年09月08日
  • 木(新潮文庫)

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    映画『PERFECT DAYS』で登場した一冊。何気なく読み始めてみたらとんでもない良書に出会ってしまって、嬉しい。
    花や木など植物、自然に真摯に向き合うことはこのことだと感じさせられた。そんな情景描写や自然への愛を語る著者の文章や文体に引き込まれ、これから植物や自然の見方や価値観を刺激する読書体験だった。
    それぞれの木をじっくり観察したいし、その木にまつわるストーリーを想像し感じたい。そして1回きりではなく、1本の木を四季を通して様々な角度・姿で観察しないと本当の理解はできないのかと感じさせられる。
    同時に自然からの学びは、人生にも通ずるところがあるのだろう。
    著者の文章や心や人となりが心地よかった。何度も読み直したい1冊になった。
    7000年の屋久杉、ぜひともリアルで見てみたい。

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    2026年08月01日
  • 木(新潮文庫)

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    木に纏わる15のエッセイ。
    えぞ松、藤、ひのき、杉、やなぎ、桜、松・楠・杉、ポプラ、幼い樹、老樹、生きている樹、材として生きている樹・・・

    木に寄り添い、木を訪ね、木を学ぶ。
    幸田文はこの時70代だ。すごいバイタリティだと思う。
    木の中に流れる水の音が聴こえてくるような、深い一冊だった。
    これから木を見る目が変わるなあ。

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    2026年07月29日
  • 木(新潮文庫)

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    某百貨店に催し物を見に行った帰りに店内の書店に立ち寄ったら、真っ先に木漏れ日の表紙が目に飛び込んできて即購入した。

    幸田文は好きな作家だし、何より数年前に観た映画『PERFECT DAYS』で役所広司演ずる掃除夫が読んでいた本として忘れられない。いつか読みたいと思っていた。
    ある本を読む日というのはこんなふうに訪れるんだと思った。 

    木について15篇のエッセイで構成されている。

    1つ目の「エゾマツ」の倒れた樹木の上に芽吹く倒木更新のことから最後の「ポプラ」の不運な境遇まで、
    節度ある擬人化で、樹木についてだけでなく人の一生についても考えさせられた。

    日頃知ることのない職人さんたちの叡智にも深く静かに感動した。

    杉の章では、確かに3000年も生きる生物ってそうはないと改めて思ったし、他の樹木にしても長い年月を生き抜く樹木の知恵というか苦闘が木肌や幹、根の張り具合に出るところも、当然と言えば当然だけれど面白かった。

    作者の年齢60代後半から80代に書かれており、気になる木があれば全国各地を訪れていた著者の意欲的な様子にも感心した。

    170ページ足らずの厚さの本だが読み応えあり
    端正で品格のある文章に心が洗われた。


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    2026年07月23日
  • 木(新潮文庫)

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    <poka>
    屋久島の話がよかったです。
    <だいこんまる>
    NHK「神様の木に会う~にっぽん巨樹の旅~」もよく見ています。

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    2026年06月07日
  • 季節のかたみ

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    頭の上に乳酪のかたやりを載せていると考えなさい、徐々にあぶらが溶けて、そのトゲトゲした心を柔らげてくれるからね、と。なるほど、頭上にあぶらを頂いて端坐し、うなじが肩が胸が徐々にうるおってくる、と思えば心は静まる。 六月はうるおう月、濡れそぼつ月、私は好きだ。

    ◆言葉遣いというのはこういうことなのだなと気付かされる。心を落ち着けたいときに読む本。

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    2026年05月08日
  • おとうと(新潮文庫)

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    弟を思う姉の気持ちがきめ細かく切実に描写されていた。一見ありふれている姉弟の対話や諍いのひとつひとつが、読み終わったときにはかけがえのない尊いものに感じられた。よい小説だった。

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    2026年04月25日
  • 男

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    働く男たちへのまなざしがやさしいし、働く男たちの躍動や仕事でのこだわりが伝わってくるような読んでて気持ちのいいエッセイでした。
    男でも女でもひとをそんな目で見つめれるようになりたいものです。

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    2026年03月09日
  • 木(新潮文庫)

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    私は仕事柄、動いているものを自分は動かずに見ることよりも、動かないものを自分が動いて見ることの方が得意なようで、スマホのスクロールは大変に目が疲れる。疲れるどころか、毎年の健康診断の度に視力が落ち続けている現実を、落ち続けている視力のせいにして、見ないようにしている

    四方が山に囲まれた那須育ちの私は、よく「目が疲れたら遠くの緑を見なさい」と、母にも祖母にも言われた。幸田文の文章は、遠くの緑のように、おかしくなった眼を整えてくれる

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    2026年02月23日
  • きもの(新潮文庫)

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    折々にきもののエピソードを入れながら家族の暮らしが描かれている。人それぞれの心情が沁みる。

    静かに人の心を感じ、大切にする。
    自分の芯を持つ。
    そうありたいと思わされる作品だった。

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    2026年01月17日
  • 木(新潮文庫)

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    文庫本の1冊としてはとても薄い、にもかかわらず、内容は濃かった
    著者の好奇心と行動力がすごい
    言及されているのは50年以上前の風景なので、今では全然違っていることも多そうだけど、それを差し引いても読み応えがあった
    機会を見て、また何度か読み直したい

    欲を言うなら、専門家の解説があったらもっと理解が深まったように思う
    ただ、エッセイ集であることを考えるとそれがありなのかどうかよくわからないので(個人的にはありだが)、手元で検索しながら不明を補うことにする

    新潮文庫の100冊2025

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    2025年09月21日
  • 木(新潮文庫)

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    2-3年前から登山を好きになった自分にとっては、木や山をもっとちゃんと見たいと思わされる本だった。

    が、良かったのはそこじゃない。

    なにより、幸田文の書く文章である。根が土中にそれを張るように、思ったこと感じたこと、あとは彼女の轍がつらつらと放り込まれ、生き生きとしていると感じた。「イカれた」といったぶっきらぼうだが下品ではない表現を時たま見ると、愛らしさでたまらない。

    草木山に対する、背伸びもしなければちぢこまるわけでもない彼女のあっけらかんとした境地に、なんだか救われる。

    読書をはじめてから、「出会えて良かった」と初めて心から思える本でした。

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    2025年07月23日
  • 台所のおと 新装版

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    ネタバレ


    10の短編からなる、こちら。
    基本的に、妻の目線から描いた短編なんだけれど、どの章にも心に残る文があり、驚いた。
    いくつかを書き留めておきたい。

    「仕事が思うように切り開けず、一生この程度の生活しかできないかもしれないけど、それはそれで仕方がないと思う。だからなおさら、家庭はいい家庭に持続しなければ、誰が損なのでもなく自分が損なのであった。」(「祝辞」)

    「夫には妻をしいんとさせるいくつかの過去があっても、埴子には夫をしいんとさせるだけの過去はないが、それは馬鹿を見たような気もするものだった。」(「雪もち」)

    「こういう場合、病気という弱さを持って、臥せているほうが、健康という強さをもっている看病人より力があった」(「食欲」)

    「『心の貧困が原因よ。心をよせることが、あまりにもなんにもないから、看病だのお葬式だのっていうとハッスルするのよ。』(中略)ひとりよがりのさし出た仕わざじゃなかったろうか、そこを思うとたしかに悔いがあった。その愁いや悔いに重石をかけているようなのが、克江のいう、人の不幸にハッスルするなんて、ほんとうにいやらしい、という言葉だった。」(「おきみやげ」)

    読むきっかけになったのは、ヴィム•ヴェンダースの映画「Perfect Days」に、幸田文さんの「木」が出てきたから。

    書店hera booksさんで、「木」はなかったんだけれど、こちらがあったので、思わず購入。

    買って正解。読めて本当に良かった。

    1956〜から書かれた短編なんだけど、現代の日本の女性作家に通じるものがここですでに始まっていると思う。

    斬新とか、ドラマチックとかそういうのではないんだけれど、人間を観察する目がとても鋭い著者が、当時の特に大それたことはない日常を描きながらも、巧みな文章で人間のさがとその社会を描いてる。

    「それだけの持ち札で、ここまでストーリーを深くさせられる?!」ってびっくするお話ばかり。「台所のおと」は吉本ばななさんの「キッチン」、「祝辞」では原田マハさんの「本日は、お日柄もよく」を思い出させるんだけど、実際内容としては、2つの作品ほどドラマチックな展開は起こってないんだよね。
    それなのにここまで感動するし、この常に落ち着いてしーんとした感じの中で、人を惹きつけるものがあるのがすごい。

    こういうの大好きなので、ちょっと慌てて読んだところもあるからまた読み見直したい!


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    2025年06月08日
  • 木(新潮文庫)

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    薄い本からは想像出来ないほどの清々しさがあった。
    幸田文の「木」をタイトルとした15のエッセイだ。
    著者の「おとうと」を読み終わり、積読しているこの本を引っ張り出してきた。幸田文のワールドにどっぷり浸かって、なんていい文章を書くんだろうと心地よさでいっぱいだ。

    木についてのエッセイは長年コツコツと積み重ねた様子がある。文量は少ないがどの作品もしっかりと主張があるし学びが多い。

    解説は佐伯一麦、こちらもこの本と著者について語ってくださる。解説から読んで欲しい…そんな一冊でもある。

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    2025年02月24日
  • 木(新潮文庫)

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    いやこの表紙じゃないんだけどね、わたしの持ってるのは。。
    『PERFECT DAYS』で平山さんが求めてたのと同じやつ(わたしも彼と同じく古本屋で100円で購入)。その表紙のほうが全然かっこいい。

    その昔、幸田文を見つけては買っていた時期があり、買ったものの読んでいなかった作品。上記映画に出てきてびっくりして読んでみた。

    いや面白い。幸田文さんは率直だ。素直だ。そのような姿勢で、感じたことをそのままあぶり出すかのような文章が素晴らしく魅力的だと思う。

    たとえば、「杉」のこんな文章。
    「本当のことを打明ければ、私はおびえていた。おびえているから考えることもなみを外れるし、並外れを考えるから、またそれにおびえる。この杉は、なにか我々のいまだ知らぬものに、移行しつつあるのではなかろうか、などと平常を外れたことを思ったりして、だいぶイカレていたのだが、同行皆さんの厚い好意の手前、感じたままのあしざまはいえない遠慮があり、その遠慮で、イカレをかくした。」

    その文章の魅力を、巻末の「解説」で佐伯一麦さんがサマセット・モームの文章を引用し、実に的確に語っておられる。
    モームいわく、良い文章とは、育ちがよく、礼儀を尊重し、生真面目すぎもせず、つねに適度であり、『熱狂』を非難の眼で見なければならない、という。
    そして幸田文さんの文章はまさにこれに当てはまると。
    実に同感です。

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    なお「木のきもの」を読み、樹皮に興味がわいてきた。

    「木は着物をきている、と思いあててからもう何年になるだろう。北海道へえぞ松を見に行ったとき、針葉樹林を走りのぼるジープの上で当惑したことは、どれがえぞ松だか、みな一様にしかみえず、見分けができないことだった。仕方がないので、目的地へついてから、教えを乞うた。あなたは梢の葉っぱばかり見るから、わからなくなっちゃう。幹の色、木の肌の様子も見てごらんといわれた。つまり、高いところにある葉や花にだけ、うつつを抜かすな、目の高さにある最も見やすい元のほうを見逃すな、ということである。そのときに、これは木の装いであり、樹皮をきものとして見立てれば、おぼえの手掛かりになると知った。」

    「木は着物をきている」という発想が面白くて、ジョギングの最中、樹皮ばかり見るようになった。もともと桜が樹皮だけでわかる唯一の木だったけど(子どものころ桜の木に登ってたから)、楠を覚えて、そしたら他の場所でも「あ、楠だ!」とわかるようになり、楽しい(字を覚えた子どものよう)。
    先日はジュゴンの肌みたいだなぁと思って興味をもっていた木が、「ヤマモモ」だと知る。
    わたしは葉っぱを見ずに樹皮ばかり見ているので、葉にも目を広げつつ、少しずつ木の種類をわかるようになっていきたい。

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    2024年04月20日
  • 木(新潮文庫)

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    人生を共にしたい本
    木の話なんだけど、確実に人間が生きる上で大切なことが書いてある
    「人にも木のように年輪があって…」とかどっかで聞いたような生半可な教えではなかった。若いわたしにはまだまだ分からないような核心があった。時が経ったら読み返して、どんな気持ちになるのか知りたい。

    文字量は多くないが、その分無駄が一切ない。
    こんなに美しい文を久しぶりに読んだ。なんとも言葉では言い表しにくい感覚。
    著者の人格、今まで積み重ねてきた人生を読んでいるような気持ちにさせられる。「尊敬」としか形容できない…
    書末の解説を読んだら十数年かけられて出来上がった作品とのこと。丁寧にひとつひとつ書かれたものなんだなと、忍耐力にまた感服…

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    2024年04月02日
  • 流れる(新潮文庫)

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    ミーハー極まり無いけど『PERFECT DAYS』で作家に興味がわいて。

    登場人物たちの日常の、流れるように移ろい行く様を利発な女中の主人公の視点で柔らかく描く。
    舞台となる芸者置屋のちょうど転換期を描いてはいるけど、派手な事件が起きるでも無く、淡々と日常が過ぎていく。

    芸妓の着物や持ち物や化粧の艶やかさ、表情や声色や仕草から溢れる心情、花街の情景が主人公の目を通して鮮烈に綴られて読み手を本の世界へ引き込む。

    主人公の過去は細やかに仄めかす程度で、読み手に想像させる余白のバランスも良い。

    読み進める内に構造や雰囲気に映画と共通するものが見つかり実に興味深いと感じた。

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    2024年03月27日
  • 台所のおと 新装版

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    短いストーリーの中に、人生の機微や細やかな感情の動き、五感を研ぎ澄ませなくては味わえないような描写がたっぷりと詰っていて、読み終わるたびに余韻が残ります。しゃきっと背筋がのびるような文体も美しい。20代の頃に読みかけたままおいてあったのですが、40代の半ばになって改めて読むことができてよかったです。たぶん歳を重ねてからのほうが良さがわかります。

    映画「PERFECT DAYS」で主人公が幸田文を読んでなかったら忘れたままになってたかもしれません。良い御縁でした。

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    2024年01月19日
  • 流れる(新潮文庫)

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    芸者置屋で働くことになった梨花という女性のお話です。華々しい世界の裏側の描写も面白かったし、梨花の心理描写も小気味良いテンポで描かれていて、読んでいて飽きなかったです。筆者の流れるような美しい文章に圧倒されました。とにかく物語の世界に没入できましたし、読んだあとの余韻が凄くて中々現実世界に帰って来れなかったです(笑)

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    2024年01月08日