幸田文のレビュー一覧

  • 木(新潮文庫)

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    映画『PERFECT DAYS』で登場した一冊。何気なく読み始めてみたらとんでもない良書に出会ってしまって、嬉しい。
    花や木など植物、自然に真摯に向き合うことはこのことだと感じさせられた。そんな情景描写や自然への愛を語る著者の文章や文体に引き込まれ、これから植物や自然の見方や価値観を刺激する読書体験だった。
    それぞれの木をじっくり観察したいし、その木にまつわるストーリーを想像し感じたい。そして1回きりではなく、1本の木を四季を通して様々な角度・姿で観察しないと本当の理解はできないのかと感じさせられる。
    同時に自然からの学びは、人生にも通ずるところがあるのだろう。
    著者の文章や心や人となりが心地

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    2026年08月01日
  • 木(新潮文庫)

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    木に纏わる15のエッセイ。
    えぞ松、藤、ひのき、杉、やなぎ、桜、松・楠・杉、ポプラ、幼い樹、老樹、生きている樹、材として生きている樹・・・

    木に寄り添い、木を訪ね、木を学ぶ。
    幸田文はこの時70代だ。すごいバイタリティだと思う。
    木の中に流れる水の音が聴こえてくるような、深い一冊だった。
    これから木を見る目が変わるなあ。

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    2026年07月29日
  • 木(新潮文庫)

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    某百貨店に催し物を見に行った帰りに店内の書店に立ち寄ったら、真っ先に木漏れ日の表紙が目に飛び込んできて即購入した。

    幸田文は好きな作家だし、何より数年前に観た映画『PERFECT DAYS』で役所広司演ずる掃除夫が読んでいた本として忘れられない。いつか読みたいと思っていた。
    ある本を読む日というのはこんなふうに訪れるんだと思った。 

    木について15篇のエッセイで構成されている。

    1つ目の「エゾマツ」の倒れた樹木の上に芽吹く倒木更新のことから最後の「ポプラ」の不運な境遇まで、
    節度ある擬人化で、樹木についてだけでなく人の一生についても考えさせられた。

    日頃知ることのない職人さんたちの叡智

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    2026年07月23日
  • 木(新潮文庫)

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    <poka>
    屋久島の話がよかったです。
    <だいこんまる>
    NHK「神様の木に会う~にっぽん巨樹の旅~」もよく見ています。

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    2026年06月07日
  • 季節のかたみ

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    頭の上に乳酪のかたやりを載せていると考えなさい、徐々にあぶらが溶けて、そのトゲトゲした心を柔らげてくれるからね、と。なるほど、頭上にあぶらを頂いて端坐し、うなじが肩が胸が徐々にうるおってくる、と思えば心は静まる。 六月はうるおう月、濡れそぼつ月、私は好きだ。

    ◆言葉遣いというのはこういうことなのだなと気付かされる。心を落ち着けたいときに読む本。

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    2026年05月08日
  • おとうと(新潮文庫)

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    弟を思う姉の気持ちがきめ細かく切実に描写されていた。一見ありふれている姉弟の対話や諍いのひとつひとつが、読み終わったときにはかけがえのない尊いものに感じられた。よい小説だった。

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    2026年04月25日
  • 男

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    働く男たちへのまなざしがやさしいし、働く男たちの躍動や仕事でのこだわりが伝わってくるような読んでて気持ちのいいエッセイでした。
    男でも女でもひとをそんな目で見つめれるようになりたいものです。

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    2026年03月09日
  • 木(新潮文庫)

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    私は仕事柄、動いているものを自分は動かずに見ることよりも、動かないものを自分が動いて見ることの方が得意なようで、スマホのスクロールは大変に目が疲れる。疲れるどころか、毎年の健康診断の度に視力が落ち続けている現実を、落ち続けている視力のせいにして、見ないようにしている

    四方が山に囲まれた那須育ちの私は、よく「目が疲れたら遠くの緑を見なさい」と、母にも祖母にも言われた。幸田文の文章は、遠くの緑のように、おかしくなった眼を整えてくれる

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    2026年02月23日
  • きもの(新潮文庫)

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    折々にきもののエピソードを入れながら家族の暮らしが描かれている。人それぞれの心情が沁みる。

    静かに人の心を感じ、大切にする。
    自分の芯を持つ。
    そうありたいと思わされる作品だった。

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    2026年01月17日
  • 木(新潮文庫)

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    文庫本の1冊としてはとても薄い、にもかかわらず、内容は濃かった
    著者の好奇心と行動力がすごい
    言及されているのは50年以上前の風景なので、今では全然違っていることも多そうだけど、それを差し引いても読み応えがあった
    機会を見て、また何度か読み直したい

    欲を言うなら、専門家の解説があったらもっと理解が深まったように思う
    ただ、エッセイ集であることを考えるとそれがありなのかどうかよくわからないので(個人的にはありだが)、手元で検索しながら不明を補うことにする

    新潮文庫の100冊2025

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    2025年09月21日
  • 台所のおと 新装版

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    ネタバレ


    10の短編からなる、こちら。
    基本的に、妻の目線から描いた短編なんだけれど、どの章にも心に残る文があり、驚いた。
    いくつかを書き留めておきたい。

    「仕事が思うように切り開けず、一生この程度の生活しかできないかもしれないけど、それはそれで仕方がないと思う。だからなおさら、家庭はいい家庭に持続しなければ、誰が損なのでもなく自分が損なのであった。」(「祝辞」)

    「夫には妻をしいんとさせるいくつかの過去があっても、埴子には夫をしいんとさせるだけの過去はないが、それは馬鹿を見たような気もするものだった。」(「雪もち」)

    「こういう場合、病気という弱さを持って、臥せているほうが、健康という強さをも

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    2025年06月08日
  • 木(新潮文庫)

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    薄い本からは想像出来ないほどの清々しさがあった。
    幸田文の「木」をタイトルとした15のエッセイだ。
    著者の「おとうと」を読み終わり、積読しているこの本を引っ張り出してきた。幸田文のワールドにどっぷり浸かって、なんていい文章を書くんだろうと心地よさでいっぱいだ。

    木についてのエッセイは長年コツコツと積み重ねた様子がある。文量は少ないがどの作品もしっかりと主張があるし学びが多い。

    解説は佐伯一麦、こちらもこの本と著者について語ってくださる。解説から読んで欲しい…そんな一冊でもある。

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    2025年02月24日
  • 木(新潮文庫)

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    いやこの表紙じゃないんだけどね、わたしの持ってるのは。。
    『PERFECT DAYS』で平山さんが求めてたのと同じやつ(わたしも彼と同じく古本屋で100円で購入)。その表紙のほうが全然かっこいい。

    その昔、幸田文を見つけては買っていた時期があり、買ったものの読んでいなかった作品。上記映画に出てきてびっくりして読んでみた。

    いや面白い。幸田文さんは率直だ。素直だ。そのような姿勢で、感じたことをそのままあぶり出すかのような文章が素晴らしく魅力的だと思う。

    たとえば、「杉」のこんな文章。
    「本当のことを打明ければ、私はおびえていた。おびえているから考えることもなみを外れるし、並外れを考えるから

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    2024年04月20日
  • 木(新潮文庫)

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    人生を共にしたい本
    木の話なんだけど、確実に人間が生きる上で大切なことが書いてある
    「人にも木のように年輪があって…」とかどっかで聞いたような生半可な教えではなかった。若いわたしにはまだまだ分からないような核心があった。時が経ったら読み返して、どんな気持ちになるのか知りたい。

    文字量は多くないが、その分無駄が一切ない。
    こんなに美しい文を久しぶりに読んだ。なんとも言葉では言い表しにくい感覚。
    著者の人格、今まで積み重ねてきた人生を読んでいるような気持ちにさせられる。「尊敬」としか形容できない…
    書末の解説を読んだら十数年かけられて出来上がった作品とのこと。丁寧にひとつひとつ書かれたものなんだ

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    2024年04月02日
  • 流れる(新潮文庫)

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    ミーハー極まり無いけど『PERFECT DAYS』で作家に興味がわいて。

    登場人物たちの日常の、流れるように移ろい行く様を利発な女中の主人公の視点で柔らかく描く。
    舞台となる芸者置屋のちょうど転換期を描いてはいるけど、派手な事件が起きるでも無く、淡々と日常が過ぎていく。

    芸妓の着物や持ち物や化粧の艶やかさ、表情や声色や仕草から溢れる心情、花街の情景が主人公の目を通して鮮烈に綴られて読み手を本の世界へ引き込む。

    主人公の過去は細やかに仄めかす程度で、読み手に想像させる余白のバランスも良い。

    読み進める内に構造や雰囲気に映画と共通するものが見つかり実に興味深いと感じた。

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    2024年03月27日
  • 台所のおと 新装版

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    短いストーリーの中に、人生の機微や細やかな感情の動き、五感を研ぎ澄ませなくては味わえないような描写がたっぷりと詰っていて、読み終わるたびに余韻が残ります。しゃきっと背筋がのびるような文体も美しい。20代の頃に読みかけたままおいてあったのですが、40代の半ばになって改めて読むことができてよかったです。たぶん歳を重ねてからのほうが良さがわかります。

    映画「PERFECT DAYS」で主人公が幸田文を読んでなかったら忘れたままになってたかもしれません。良い御縁でした。

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    2024年01月19日
  • 流れる(新潮文庫)

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    芸者置屋で働くことになった梨花という女性のお話です。華々しい世界の裏側の描写も面白かったし、梨花の心理描写も小気味良いテンポで描かれていて、読んでいて飽きなかったです。筆者の流れるような美しい文章に圧倒されました。とにかく物語の世界に没入できましたし、読んだあとの余韻が凄くて中々現実世界に帰って来れなかったです(笑)

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    2024年01月08日
  • 台所のおと 新装版

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    1960年代に発表された10作品を収録した短編集。
    「台所のおと」「濃紺」「祝辞」「おきみやげ」という4作品が、特に良かった。
    「草履」は、幸田文の作品には珍しく、ですます調で語られる一人称小説。物語の展開も探偵小説っぽく感じた。
    〈食べ物〉と〈病〉に関する物語が多かった。


    幸田文の短編を読むと、村上春樹の「牡蠣フライ理論」のことを思い出す。

    「あなたが牡蠣フライについて書くことで、そこにはあなたと牡蠣フライとのあいだの相関関係や距離感が、自動的に表現されることになります。それは
    すなわち、突き詰めていけば、あなた自身について書くことでもあります。」(『村上春樹 雑文集』)

    幸田文の書

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    2023年09月07日
  • 男

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    ネタバレ

     北の国はあらゆることに強さを要求している。覚悟のないものには辛い土地。知床半島、羅臼町。胸もズボンもずぶ濡れ、海の男。すなどりびと。獲る業は荒くとも獲る心は優しい。鮭は4年で産卵に戻る。遡上する鮭の夫妻。その努力と産卵後の結末があまりにいじらしくて正視できないほど。すっかりみじめになり、最後の努力を尽くす。産卵する妻を見守る夫。精根尽きる。死を待つ鮭を「ほっちゃれ」と呼ぶ。幸田文「男」、2020.7発行、20編のエッセイ。1959年「婦人公論」等に連載。冒頭を飾るのが「濡れた男」。漁師の男と牡鮭の話。

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    2023年06月02日
  • 台所のおと 新装版

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    ネタバレ

    幸田文さんの本を読むと、小説家ってすごいんだなと心から思わされる。全話良くて、特に『台所のおと』は自分が間近で夫婦のやり取りを見ているかのようだった。文章としては『食欲』のこの部分が刺さった。

    ネタバレ



    ・光るなんてことは自分一人が光っても、肝腎の自分には明るさを見て楽しむこともできはしない、光は自分から外へ出て行ってるんだもの。みんながいっしょに光ってこそ、こっちから人の明るさを見ることができて楽しいだのに、光るべきはずの一緒にいた人がみんな光らなくされて自分ひとり光らされていれば、光の楽しさはなくて、光らされているだけに身動きもままならないつまらなさ、てれくささ。見当違いに褒められ

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    2023年04月26日