幸田文のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
昭和30年代〜40年代に発表された10編からなる短編集。
いつの時代も生きていればいい時も悪い時もあり、日常においても心にさざ波が立つこともしばしばある。
そんな昭和の日常が作家の視線を通して繊細に描かれている。
個人的には表題にもなっている「台所のおと」がよかった。
病んで寝付いてしまった料理人が障子一枚を隔てた台所で女房がたてる作業の音から様々なことを感じとるという話。
的外れな感想になってしまうけれど子供の頃風邪をひいて寝ていた時 母が台所で作業する音が聞こえてきてなんとなく安心して眠ったことを思い出した。
料理人の佐吉は女房のあきがたてる音を聞きながら昔縁のあった女達がたてた音を思い出していた。〝女はそれぞれ音をもっている…〟 台所の音がテーマだけれどとても静かな空気をもった作品だった。 -
Posted by ブクログ
女性作家の作品はあまり読まず、読んでも面白いと思えるものがなかったが(アイン・ランドは極端で、ジェーン・オースティンは退屈だ)、
この『きもの』は一気に読めてしまった。
昔の東京の日常を描く細やかな描写は永井荷風を思わせるが、そこに女性独特の目線が新鮮だ。
「きもの」を軸に繰り広げられる、家族の物語と人間模様。
姉妹間での親からの扱いの違い、一緒に育ったのに全く異なる人間性、姉と妹の役割、など鋭い描写が興味深かった。
主人公の三女・るつ子は、着物の見た目よりも着ごこちにこだわる。
見栄を張る長女や流行を追いかける次女の承認欲求に比較して、自分の価値観を確立したるつ子の感覚は、一歩も二歩も進んで洗練されている。
「振袖も見ざめ興ざめのくる時があるし、餓えるように木綿絣がほしくなる時もあるものかと思います。着物も外国にいると、日本とは逆になるようです。」
ロンドンへ行った裕福な友人のゆう子は、海外の生活に刺激され、高価な絹の着物に飾られるよりも、実用的な綿絣を着て自分の力で人生を切り開きたいと願っている。
ファッションの歴史は、女性の解放の歴史なのだ。
わずか100年ほど前に、衣類がどれほど貴重であったかが感じられた。
裕福な家庭でも、新品からお下がりへ、よそ行きから普段着へと、使い回して大切にする。
リサイクル、サステナブル、などとやかましく言う最近の傾向は、豊かになったことの裏返しだ。
暮らしが便利で豊かになるということは、不快や不便が無くなるとともに、その分だけ生活に直に触れる喜びも失われる。
月並みな言い方だが、「丁寧な暮らし」に触れる一冊だった。