幸田文のレビュー一覧
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ネタバレ幸田文「回転どあ 東京と大阪と」、2001.2発行。庶民生活を清新に描いた単行本未収録のエッセイ101編。 ①明けまして、という挨拶には希望がこめられている。 ②自慢、高慢、馬鹿の骨頂という。(心に留めておかねばw) ③年の暮れは忙しい。年の暮れも、卒業も、結婚も、葬式も、区切りは忙しいにちがいない。でも、その忙しさの中にしんみりした情緒を含んでいる。
3月は、気候はゆるむし、花は咲こうとするし、きもちのいい月。一方で、若い人が卒業、就職、入学とざわつく月。幸田文(1904.9.1~1990.10.31、享年86)「回転どあ 東京と大阪と」、2001.2発行、101編のエッセイ集、再読。 -
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男の自分にとっては、すごく女性の視点が新鮮に感じた。
男とは体の作りとか、体力とか、その前に備わってるもんが全然ちゃうということがよくわかる。
それは、生物学的とか、社会的とかをやかましく言わんでもあるもの。
話は戦後の花柳界へ女中にいった主人公の話。
どこにでもある、人間芝居を色鮮やかというか、立体的というかとにかくリアル、主人公の目線としてりある。
大河に身を任せて、ひとは生きるもの
突っ張るのも悪くないが、まわりに押されゆらりと流れてゆく
芯があればこその人生、しかししゃれこうべになるまでの舞台
立ち居振る舞いは人それぞれ
2021/10/19
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掃除婦や犬の食事係といった様々な仕事を勤めた未亡人・梨花が、芸者置屋の女中として住み込んで花柳界の舞台裏を経験する物語。
慣れぬことに苦労しつつ働くのでなく、ひたすら強い女性として仕事を淡々とこなす梨花には感情移入しにくかったものの、芯のしっかりした優しさがあり、その強さのために加速度的に没落していく置屋の誰にでも心を添わせることができるんだろうな、ということに気付くと俄然彼女が魅力的に映るように。
華やかな表舞台は描かれず、暗い裏事情ばかりが書かれているのに、陰惨な感じはあまりない。というのも女主人のしなやかさや、時に触れて現れるいやらしさのない美質が、文面からふんだんに伝わってくるためなの -
Posted by ブクログ
昭和34年のほぼ1年間、婦人公論に連載されたルポルタージュを中心に、“男"に関する文章をまとめて文庫化したもの。
まだまだ日本が貧しかった時代で、人力でやらなければならないことが多かったとき、下水処理やごみ収集、あるいは北の海での漁業、森林伐採、橋脚工事のような、華々しく表に現れることはないが、しかし、日常の暮らしを支える現場で黙々と働く男たちに、作者は感謝とともに、細やかな視線を注ぐ。肉体労働や底辺労働に関しては、ともすると感情移入が過多になりがちであるが、全体を通して、作者らしい、きびきびした文章が読んでいて快い。
作者は、それぞれの道に働く男たちを頼もしく思うこともあれ -
Posted by ブクログ
父と娘
本当は別の一冊を読みたいと思っていたけど
自分も父を亡くしていることもあって
こちらを先に読んでみたくなった。
父、露伴の病と葬儀の記録。
そして父娘の思い出。
作家である露伴の娘だった幸田文にとって
書くことは無意識のうちに彼女自身の中に
すでにあり、ごく自然なことだったんだと思う。
そして作者はメモ魔だったのでは…
それを示すような一節が度々出てくる。
父、露伴から教えられたことや出来事について
いくつか書いているけど、
それもその当時の湧き出した
思いが原動力となり一気に書かれている気がした。
休みなく呼吸することすら忘れてひたすら書き続けた、そんな印象だった