幸田文のレビュー一覧

  • 木(新潮文庫)

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    ネタバレ

    初読みの幸田文さん、文章が始終綺麗でテンポが良く、良い文章とはこういうののことをいうのだな。
    面白いかというと、私にとってはそうではなかった。あまり興味が湧かず、読むのに骨が折れた。

    全体を読んで感じたのが、作者の共感性の強さ。人よりも圧倒的に木が登場するのだが、人にも木にも、たちまち深く共感して、お節介という言葉が適切かはわからないけれど、その境地まで達する。その温かく何事にも突っ込んでいく作者の様子に温かさを感じ、ほっとさせらた。

    解説は、佐伯一麦さん。とても読み応えがあった。

    解説の中で、サマセット・モームの『要約すると』が引用されていた。
    「良い文章と言うものは、育ちの良い人の座

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    2025年04月20日
  • おとうと(新潮文庫)

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    関東大震災(1923年9月1日)前後の東京を舞台に姉と弟の日常が描かれています。女流作家・幸田文はその時代の空気を丁寧にすくい上げています。

    昭和のはじまりを知ることができる名著として、また産業革命と共に広まった結核の猛威を垣間見れる作品としてもオススメ。

    初出は1956年1月から九ヶ月間に連載された「おとうと」。私が手にした文集は1959年の活字印刷。旧仮名使いが続出するのでGoogle検索を多用しました。それでも読みやすく、さすがの文学家系でした。

    印象に残るのは、主人公の姉は結核を患う弟と喫茶店でアイスクリームを注文する場面です。その直後に写真館で肖像を残そうと姉に提案する罹患者の

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    2025年04月08日
  • おとうと(新潮文庫)

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    昭和でも大正の香りがする風景のお話。やんちゃな弟に手を焼きながらも愛情を注ぐ姉。継母と姉弟の描写が切なくて時代かなと思いを馳せる。
    弟の奔放さにこのお話の展開が…と思っているとこの時代の大病に臥せて終焉。

    檸檬に似た感覚を覚えた本で、続けて幸田文を読みたいと思う。

    追記
    解説は篠田一士
    この解説で幸田文が幸田露伴の息女と知った。
    成る程、文章を読むごとに景色が広がるはずだ。
    益々気に入った。

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    2025年02月13日
  • 雀の手帖(新潮文庫)

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    こういうのを文学作品というんだなあとしみじみ感じさせられた作品。
    登録者が何故こんなに少ないのか不思議。
    ビスケットとお茶をいただきながら、品の良いご婦人のお話しを聞いてる感じ、という感想を投稿してる方がいて、ほんとうにその通りだなと思った。

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    2024年12月16日
  • 木(新潮文庫)

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    日本語力が、とにかくすごい!木にまつわる筆者の多くの体験を通して様々な思い入れを感じた。
    木に対してきめ細やかな視点があるのがすごいなぁ。

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    2024年12月14日
  • 雀の手帖(新潮文庫)

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    ビスケットとお茶をいただきながら、品の良いご婦人のお話をずーっと聞いてる気持ちになりました。60年ほど前の日本人の文章はなんとも味わい深くて豊かでした。

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    2024年11月27日
  • 雀の手帖(新潮文庫)

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    幸田露伴の次女、幸田文による新聞連載をまとめた一冊。
    連載が掲載された1959年から早65年超を経ての新装版。
    新聞のコラム連載であり、一編の長さは、文庫本のページ数にして約1ページ半と読みやすい。
    「幸田家とその周辺で使われていた言葉」に昔の日本語の響きが合わさり、少々手こずる部分もあったが、現代のインスタントなやりとりが中心の世の中より昔の、言葉をより丁寧に紡いでいた時代の女性の筆に、日本語の美しさと奥深さを感じた。
    今としたら時代錯誤な言葉もあるが、かつての日本の日常にふらりと触れられるような、ぺらりとめくるとふわりとタイムスリップできるようなエッセイだった。

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    2024年09月30日
  • 木(新潮文庫)

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    帯ではなくカバー自体に「アカデミー賞国際長編映画賞部門ノミネート『PERFECT DAYS』で話題の一冊!」と印刷されていた。実際、それだけでこの2年間に6刷もしているので効果あるのだろう。もちろん、わたしもそれで買った。映画の方は、このままいけば今年のマイNo. 1になる。本書は、未だ物語が動き出す前に映画の主人公が寝る前に少しづつ読んでいた本である。つまり、主人公平山さんの信条そのものを現していた本でもあったというべきだろう。

    そういう風に読んでみると、幸田文の木々に対する思い出や、態度は、まさにPERFECT DAYSそのものだったような気がする。

    いっとき、わたしは野の花に凝ったこ

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    2024年08月21日
  • 台所のおと 新装版

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    歳を重ねれば重ねるほど面白く感じられる一冊だと思う。
    数年後絶対に読み返そう。
    解説に「心の機微にたいする視線の糸が張り巡らされている」とあるが本当にその通りで、幸田文さんは日常の機微を見つけて言語化する能力に長けている。
    「食欲」以後特にどんどん面白くなる。
    自分一人が褒められている時の描写が特に素晴らしかった。(「食欲」より)

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    2024年08月20日
  • おとうと(新潮文庫)

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    某所読書会課題図書:碧郎を姉のげんが見守る物語だが、少しやんちゃな弟を病気で活動があまりできない母の代わりをしている感じだ.いろいろな事件が起こるが、男の子がよくやるかっぱらいを契機に不良仲間と付き合う碧郎.げん自身が疑われた万引き事件での彼女の警官に対する態度は素晴らしいと感じた.碧郎がキリスト教系の学校を退学処分になり仏教系の学校に入り、大人らしくなりつつある弟を冷静に見つめるげん.ほどなく弟が結核にかかっていることが分かり、母に代わって看病をするげん.当時満足な治療方法が無かった病気だったので、医師も時間を引き延ばして、何とか生かしておくことしかできず、次第に衰弱していく碧郎.げんの看病

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    2024年06月14日
  • 流れる(新潮文庫)

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    濃い、でも読める、これが上手い文章というべきか。
    それがないと、いやそれがあるからか、人間の生態というか嫌らしさが抉り取られて読者の真正面に据え置かれる感じで読み進めたいけど重いというか。
    今はもうないだろう古き歓楽の世界も垣間見えて、風俗史としても楽しめる一面があります。
    巻末の解説も女性らしさを前面に押し出した解説で時代を感じさせてくれます。ただ、女性にしか分からない感覚はどうしたってあるはずですが、それを万民に肌感で読ませるのもこの作家の力量かと。

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    2024年06月01日
  • おとうと(新潮文庫)

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    弟を中心として家族4人の関係を描く。家族とは良いとか悪いとかではなく、とにかくそこにいるもの

    はじめは少しくどい心理描写に退屈するかとも思ったが、文章自体の歯切れが良いのにも救われ、読むにつれ引きこまれた。ストレートで胸に迫る

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    2024年05月11日
  • 木(新潮文庫)

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     花や滝、もっと大きな単位の自然を見に行こうと思ったことはあっても、「木」を見に行こう!と思ったことはないかもしれない。身近な存在なのに。
    この本を読むきっかけは映画ですが、読んだことで相乗効果がうまれた気がする。
    作者が「木は生き物」という思いが強いというか当たり前のことと思っている。印象的だったのは、台風で薙ぎ倒された木たちを、「集団死傷」と表現していること。
    もう殺人事件並み。
    そして、「死んだ木」と「木の死んだの」の違いなんて考えたこともなかったけど、木の死んだのは「無垢無苦の天然死」という表現は感覚的にも分かりやすい。
    まずは生きている木、屋久杉を見に行きたくなりました。

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    2024年04月17日
  • おとうと(新潮文庫)

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    中学校の国語の授業で一部分だけ、読んだ記憶があります。その時は、若くして病死する弟という、現代では稀有なストーリーで昔話としてしか捉えていませんでした。
    アラフィフになった現在。私にも弟がいます。二人姉弟です。今は、各々の人生を生きる立派なオッサンとオバチャンです。
    そんなオッサンの弟がもし亡くなったら、やっぱり考えられません。親を亡くすのとは、違うだろうな、中学生の頃とは、全く違う読後感に襲われてました。

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    2024年03月25日
  • おとうと(新潮文庫)

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    ネタバレ

    主人公げんの責任感の強さと愛情深さ、人それぞれがおかれた立場を汲み取る理解力に感心させられる。小説執筆に没頭し、常日頃家族を親身に顧みない父、形ばかりで母親らしい愛情を注げない継母、そして自分の居場所を探し、自由奔放に振る舞うおとうと。げんは、若さゆえになぜ自分を二の次におかねばならぬのか、不満に思いながらも、父、継母、おとうとのおかれた立場や性格を思い、自分しかいないと奮起し、家事や継母の使い、おとうとの面倒を見続ける。読んでいるこちらが焦ったくなるほどの責任感だ。なかでもときに本音を唯一ぶつけられる3つ違いのおとうと・碧郎の不安定さを危惧し、目をかける。碧郎の危なっかしさに、冒頭から不穏な

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    2024年03月25日
  • 木(新潮文庫)

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     ひと月ほど前、映画『PERFECT DAYS』を観ました。とてもいい映画でした。役所広司さん演じる平山は、毎日フィルムカメラで木々がつくる"木洩れ陽"を撮り続けます。その一瞬は二度と同じではないと‥。そして平山が読んでいた本が本書でした。

     この映画に触発され本書を手にしました。幸田文さん(幸田露伴次女、1990年没)の15篇の随筆集で、92年に単行本が刊行された遺著のようです。ただ、それぞれの初出は1971〜1984と、古いものは半世紀も前の文章ということになります。

     草木に心を寄せるのは、心が潤み、感情が動き余韻が残るからと、幸田文さんは記しています。
     漠然

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    2024年03月18日
  • おとうと(新潮文庫)

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    久方ぶりに手に取りました。
    実話をベースにした話のようですが、家族間の言ってみれば甘えを責めるわけでもなく、ただ淡淡と描き切ってます。いやぁ、文章が上手いことも相まってかもですが、じわじわと真綿で締めてくる感じ。
    この間観た映画でもっと評価されるべき作家とのセリフがありましたが、当方ごときも本当にそう思います。

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    2024年02月25日
  • 木(新潮文庫)

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    ネタバレ

    映画PERFECT DAYSの主人公平山さんが読んでた本を読んでみようと手に取った本。平山さんは木漏れ日が好きなんだけど、そんな人が読んでそうなエッセイだった。

    いくつかの木にまつわるエッセイ集になっていて、難しいかなと思ってたら読みやすい文体。木の表情とか描写が細かくて、一瞬で目を離しそうな風景を1ページ余裕で書かれてる。
    読んでるうちにぼーっと眠くなってしまったりして、何回も同じページを読んだりして全部ちゃんと読めてない気がするけど、半分くらいは読めたのかな。
    木のことを犬猫とか人間とかと同じくらい好きで、感情持ってる人なんだなと思った。
    今まで通りすがりにも気にしてなかった街路樹や遠く

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    2024年02月25日
  • 木(新潮文庫)

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    幸田文(あや)の15篇からなる随筆集。父は露伴。

    樹木に逢って感動したいとの思いから、1971年1月『えぞ松の更新』から、1984年6月『ポプラ』まで、13年半にわたり、北は北海道から南は屋久島まで、実際に見に行って木と触れ合った感想が書かれています。

    木は動かないが故に、漠然とただそこに「ある」という感情を抱きがちですが、筆者はそれを「いる」という感情で接している。そのあたりが、木を見に行った先々で会う、木を木材として利用している人たちとの考え方の違いとなっていて、読んでいて興味深かったです(どちらが正しいとか間違っているということではないです)。

    内容は、どの随筆も学びが多かったです

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    2024年02月15日
  • 木(新潮文庫)

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    木を愛でる人の優しさに触れながら、筆者の優しさに浸る事ができるエッセイ。素敵な日本語の所々に現代風な言葉があって妙に親近感が湧く。

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    2024年01月16日