幸田文のレビュー一覧
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新潮文庫の紹介文を引用すれば
人それぞれに履歴書があるように、
木にもそれがある。
それを基調として、北海道から屋久島まで
木々を訪ね歩いた随筆集。
映画『PERFECT DAYS』
ヴィム・ヴェンダース監督の『PERFECT DAYS』(2023年公開)では、主人公・平山(役所広司)が日常の中で穏やかに生きる姿が描かれますが、彼が手に取り、繰り返し読む文庫本が幸田文『木』でした 。
幸田文さんは、幸田露伴の次女。
幸田露伴からの木々の教育は受けていたとしても
文章を書き始めたのは、離婚して父を介護し
その父の死を契機として。
初出は、丸善の機関誌『學鐙』
どうして、それが今年の新潮文庫 -
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作者が折に触れて書いてきた木に対しての15の随筆を死後にまとめたエッセイ集。
作者の深い洞察、素直な視点、少しのユーモアが混じっており、1編1編がとても読み応えのあるものとなっていた。
「木のきもの」という着物の知識が問われる章もあるにはあったが、基本的には知識がなくても読んでいて楽しめる内容となっており、ストレスなく読めた。
個人的には「ひのき」の章が好きだった。木の歴史というものに触れ人の性格と似た部分があることを匂わせながら、大工からするとどうしようもないアテという材木の頑固者への作者の思いやりのある視点やそれでもヒノキであることを否応なく思い知らされるハードボイルドさが、神妙な -
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ネタバレ「紅葉黄葉ほど美しい別れ、あるいは終り、ほかにあるまい。いのちの退き際に、華やかに装いを改め、さりげなく、ためらいもなく、居場所をはなれてしまう。はなれて散り敷けば、どこに舞いおりようと、姿よく納まって美しい」
今年はどうしたことだろう。GWも過ぎてしまった五月の今日も、五月晴れという言葉があるにもかかわらず、まるで似つかわしくない天候だった。気持ちよく晴れ渡る青空など、今年の五月に限っては、とんとお目にかかれない。いつになっても春先のことわりの如く、夕刻から夜半にかけては気温が下がり、肌寒く、明け方の空が薄々と白んでくる時刻ばかりが日増しに早くなるばかりの季節感。夜更かしというものでもなく -
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ネタバレ初読みの幸田文さん、文章が始終綺麗でテンポが良く、良い文章とはこういうののことをいうのだな。
面白いかというと、私にとってはそうではなかった。あまり興味が湧かず、読むのに骨が折れた。
全体を読んで感じたのが、作者の共感性の強さ。人よりも圧倒的に木が登場するのだが、人にも木にも、たちまち深く共感して、お節介という言葉が適切かはわからないけれど、その境地まで達する。その温かく何事にも突っ込んでいく作者の様子に温かさを感じ、ほっとさせらた。
解説は、佐伯一麦さん。とても読み応えがあった。
解説の中で、サマセット・モームの『要約すると』が引用されていた。
「良い文章と言うものは、育ちの良い人の座 -
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関東大震災(1923年9月1日)前後の東京を舞台に姉と弟の日常が描かれています。女流作家・幸田文はその時代の空気を丁寧にすくい上げています。
昭和のはじまりを知ることができる名著として、また産業革命と共に広まった結核の猛威を垣間見れる作品としてもオススメ。
初出は1956年1月から九ヶ月間に連載された「おとうと」。私が手にした文集は1959年の活字印刷。旧仮名使いが続出するのでGoogle検索を多用しました。それでも読みやすく、さすがの文学家系でした。
印象に残るのは、主人公の姉は結核を患う弟と喫茶店でアイスクリームを注文する場面です。その直後に写真館で肖像を残そうと姉に提案する罹患者の -
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幸田露伴の次女、幸田文による新聞連載をまとめた一冊。
連載が掲載された1959年から早65年超を経ての新装版。
新聞のコラム連載であり、一編の長さは、文庫本のページ数にして約1ページ半と読みやすい。
「幸田家とその周辺で使われていた言葉」に昔の日本語の響きが合わさり、少々手こずる部分もあったが、現代のインスタントなやりとりが中心の世の中より昔の、言葉をより丁寧に紡いでいた時代の女性の筆に、日本語の美しさと奥深さを感じた。
今としたら時代錯誤な言葉もあるが、かつての日本の日常にふらりと触れられるような、ぺらりとめくるとふわりとタイムスリップできるようなエッセイだった。 -
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帯ではなくカバー自体に「アカデミー賞国際長編映画賞部門ノミネート『PERFECT DAYS』で話題の一冊!」と印刷されていた。実際、それだけでこの2年間に6刷もしているので効果あるのだろう。もちろん、わたしもそれで買った。映画の方は、このままいけば今年のマイNo. 1になる。本書は、未だ物語が動き出す前に映画の主人公が寝る前に少しづつ読んでいた本である。つまり、主人公平山さんの信条そのものを現していた本でもあったというべきだろう。
そういう風に読んでみると、幸田文の木々に対する思い出や、態度は、まさにPERFECT DAYSそのものだったような気がする。
いっとき、わたしは野の花に凝ったこ -
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某所読書会課題図書:碧郎を姉のげんが見守る物語だが、少しやんちゃな弟を病気で活動があまりできない母の代わりをしている感じだ.いろいろな事件が起こるが、男の子がよくやるかっぱらいを契機に不良仲間と付き合う碧郎.げん自身が疑われた万引き事件での彼女の警官に対する態度は素晴らしいと感じた.碧郎がキリスト教系の学校を退学処分になり仏教系の学校に入り、大人らしくなりつつある弟を冷静に見つめるげん.ほどなく弟が結核にかかっていることが分かり、母に代わって看病をするげん.当時満足な治療方法が無かった病気だったので、医師も時間を引き延ばして、何とか生かしておくことしかできず、次第に衰弱していく碧郎.げんの看病
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花や滝、もっと大きな単位の自然を見に行こうと思ったことはあっても、「木」を見に行こう!と思ったことはないかもしれない。身近な存在なのに。
この本を読むきっかけは映画ですが、読んだことで相乗効果がうまれた気がする。
作者が「木は生き物」という思いが強いというか当たり前のことと思っている。印象的だったのは、台風で薙ぎ倒された木たちを、「集団死傷」と表現していること。
もう殺人事件並み。
そして、「死んだ木」と「木の死んだの」の違いなんて考えたこともなかったけど、木の死んだのは「無垢無苦の天然死」という表現は感覚的にも分かりやすい。
まずは生きている木、屋久杉を見に行きたくなりました。 -
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ネタバレ主人公げんの責任感の強さと愛情深さ、人それぞれがおかれた立場を汲み取る理解力に感心させられる。小説執筆に没頭し、常日頃家族を親身に顧みない父、形ばかりで母親らしい愛情を注げない継母、そして自分の居場所を探し、自由奔放に振る舞うおとうと。げんは、若さゆえになぜ自分を二の次におかねばならぬのか、不満に思いながらも、父、継母、おとうとのおかれた立場や性格を思い、自分しかいないと奮起し、家事や継母の使い、おとうとの面倒を見続ける。読んでいるこちらが焦ったくなるほどの責任感だ。なかでもときに本音を唯一ぶつけられる3つ違いのおとうと・碧郎の不安定さを危惧し、目をかける。碧郎の危なっかしさに、冒頭から不穏な