幸田文のレビュー一覧

  • 木(新潮文庫)

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    「幸田文 木」この字面だけでもう、手に取らずにはいられませんでした。


    幸田文さんの名前は知っていても、著書を読んだことはありませんでした。ある時ふとこの本を見かけ、この潔いタイトルだけで引き込まれてしまったのです。
    「幸田文 木」。なんとも気持ちがいいこの字面。シンプルで強くはあるけれど、どこかあっけらかんとした軽妙さもある。これが「高橋和巳 石」とかだったらもう、たとえ文庫本でも函入のハードカバー本のような重厚さがあるでしょう(何を言っているんだ?)

    様々な木との触れ合いを書き、木のあるがままの尊さや、木のある暮らしへの感動を書いたエッセイです。著者の、木への人並みならない想いが伝わり

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    2026年09月05日
  • 男

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    ネタバレ

     北の国はあらゆることに強さを要求している。覚悟のないものには辛い土地。知床半島、羅臼町。胸もズボンもずぶ濡れ、海の男。すなどりびと。獲る業は荒くとも獲る心は優しい。鮭は4年で産卵に戻る。遡上する鮭の夫妻。その努力と産卵後の結末があまりにいじらしくて正視できないほど。すっかりみじめになり、最後の努力を尽くす。産卵する妻を見守る夫。精根尽きる。死を待つ鮭を「ほっちゃれ」と呼ぶ。幸田文「男」、2020.7発行、20編のエッセイ。1959年「婦人公論」等に連載。冒頭を飾るのが「濡れた男」。漁師の男と牡鮭の話。

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    2023年06月02日
  • 台所のおと 新装版

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    ネタバレ

    幸田文さんの本を読むと、小説家ってすごいんだなと心から思わされる。全話良くて、特に『台所のおと』は自分が間近で夫婦のやり取りを見ているかのようだった。文章としては『食欲』のこの部分が刺さった。

    ネタバレ



    ・光るなんてことは自分一人が光っても、肝腎の自分には明るさを見て楽しむこともできはしない、光は自分から外へ出て行ってるんだもの。みんながいっしょに光ってこそ、こっちから人の明るさを見ることができて楽しいだのに、光るべきはずの一緒にいた人がみんな光らなくされて自分ひとり光らされていれば、光の楽しさはなくて、光らされているだけに身動きもままならないつまらなさ、てれくささ。見当違いに褒められ

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    2023年04月26日
  • きもの(新潮文庫)

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    感傷的なところが全くなく、現実的な考えで成長していく主人公の感度の高さが勉強になる。

    きものは日本人に取ってただの服とは違うんだな、と思う。

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    2023年04月13日
  • 幸田文 老いの身じたく

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    幸田文...明治生まれの随筆家
    その孫が編纂している...本書

    『しつけ帖』でその文体に惹かれてまた手に取る。

    いい文体です。そしてやっぱり心のひだに入り込み琴線に触れます。
    書かれた当時は現代と違い「老い」を意識する年齢が今よりずっと早い(若い)のもそれぞれのエッセイ一編の最後に書かれた時の年齢が載せてあるのも興味深かった。

    なんていうのかなぁ〜
    心に秘めた、何かいい意味での塊がちゃんとあって、それを通して見聞きして感じたもの、自らの体験をこれまたしみる文章で書かれていて...なんだかとっても「人」なんだよなぁ〜と感じてしまう。
    もしかして、これてファンなのかなって...思ってしまう(

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    2022年09月01日
  • おとうと(新潮文庫)

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    ネタバレ

    読みおえたばかりで、もう悲しさにじわじわと打ちのめされてます。人は皆いつか死ぬもので、家族とも永遠に別れる日が来るなんてことは、頭では納得していても、実際に迎えるそれは果てしなくしんどいものだというのを強制擬似体験させられてしまったような気分です。文章の密度が尋常じゃないレベルです。幸田文おそるべし。

    『みそっかす』ではシモヤケとおねしょでベソをかいていた碧郎さん(一郎ちゃん)がこんなふうに青春を生きて、いっぱしの口を聞いて、ボートやビリヤードなんか嗜んだりして、若いまま最後を迎えたんだろうかと思うと、なおさらしみじみ悲しくなります。

    『みそっかす』には登場する長女も子供のうちに亡くなった

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    2022年07月30日
  • 台所のおと 新装版

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    日本での婦人参政権が得られたのは戦後の1945年、GHQの指示のもとに叶えられた。
    戦後、夫人にも参政権が与えられたからといって、ガラリと社会状況が変わるでもなく、多くの女性は家庭内にとどまるのが常だった。
    今の時代、女性の社会進出は目覚ましいものがあるのだが、果たして女性の役割分担は昔に比して軽減されたのか、甚だ怪しい様相が伺える。
    反面的に子供側から考えると、私の幼少の頃の方が母親との接点は明らかに多かったように思えるのだ。
    この一冊を読むと、否応なく昭和の文化感、生活が想い出されてしまったのだ。

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    2022年07月07日
  • 流れる(新潮文庫)

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    めっちゃ面白い。
    それからすごく不思議。
    1955年に書かれた小説なのに、すごく今風っていうか、
    なんかね、すんごい面白いお姉さんのツイッター見てる感じ。
    何十年も昔の小説だなんて思えない。

    ……って考えてたら、高橋義孝先生の巻末の解説でちゃんとした文章で説明されてた笑
    「文字によって構成される文章というもののロジックではなしに、話される生きたことばのロジックに従って文章となったというのが幸田さんの文章である。」
    それそれ!!!

    多分ね、生のことばで書いてあるから、古い感じがしないの。
    すっごく新しいの。
    今も昔も、人間の思考回路なんてそう変わんないんだなって感じする。

    しろうとの主人公

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    2022年01月15日
  • きもの(新潮文庫)

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    ルツ子の気の強さや負けん気な子ども時代から姉の行動をみて繊細な心も持ち合わせている。
    近所の人からは不幸な子と思われていたみたいだが本人はそうとらえてはいないところからも負けん気があふれている。それを祖母はルツ子の性格から先回りして助言、手助けしてたしなみを教えていた。祖母の言葉は今の自分にも当てはめれて、重さを感じる。
    他の作家の暗さがない自伝でこの人のを集めればよかった。
    と思うのはまだ一冊しか読んでないからかも知れないが。。

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    2021年10月03日
  • 台所のおと 新装版

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    21.09.16~09.27
    やっぱり、日本語の使い方が美しい。
    こんなに素敵に日本語を使えたら、世界が変わるだろうな。

    心がすっとして、すがすがしくなる。しばらくの間は、きれいに言葉を使おうと思う。

    すぐに雑な表現になってしまうけど。

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    2021年10月01日
  • 月の塵

    購入済み

    想いは月にまで

    筆者の小説・エッセイでは、身近でありふれた題材を繊細で新鮮な視点で垣間見ることができるので楽しい。遠い宇宙空間でさえも筆者の世界に取り込まれてしまうのが、筆力のなせる技なのだと思う。

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    2021年08月21日
  • 父・こんなこと(新潮文庫)

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     幸田文さんの父、幸田露伴氏は戦中の大空襲以来、寝たきりになってしまわれた。寝たきりでもそれ以前の規則正しい生活は変わらず、毎朝同じ時間に目覚められて、すぐに文さんと娘の玉子さんが、洗面の用意をし、煙草、ほうじ茶、朝食、搾りたての牛乳、新聞を決まった順番に用意するなど、厳しいお父上の看護はなかなか大変だった。
     いよいよ重篤になられたのは、戦後二年目の昭和22年の夏だった。ある朝血を吐かれ、それを見て文さんは、いよいよお父様に死が迫ってきたと確信した。
     急いで親しい人や、医者に知らせなければとあたふたとする。今のように携帯どころか、固定電話もないので、電車に乗って呼びに行く。猛暑の夏でただで

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    2021年02月17日
  • 流れる(新潮文庫)

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    凋落していく置屋で、くろうとを眺めるしろうと主人公の視点が巧み。芸妓たちの時に激する直接的な台詞よりも、交わされる無言の視線が彼女たちの関係性、そして内面感情をはっきりと指し示している。間と目線を行間にありありと浮かび上がらせる幸田文の表現に敬服。

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    2020年08月08日
  • きもの(新潮文庫)

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    ネタバレ

    めっちゃ面白かった!!!!
    びっっくりした!

    昔の人ってこうだったんだ・・・
    手に取るようにわかる
    噂には聞いていたあの話、この話、
    細かい着物の描写は、どんな生地なのかとかわからなかったりするけど、
    だから運針を学校で習ったんだな、
    命からがらって関東大震災はこんなだったんだな、
    地域が助け合って暮らしていた頃ってこうだったんだな、
    日本の良さ、感じられました。感動!
    大事にしたい本。

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    2019年06月19日
  • 流れる(新潮文庫)

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    零落してゆく置屋の景色と時間を、女中 梨花の視点で華麗に切り取った小説。書かれたのは1956年だが、すでに古典と呼んでも違和感のない風雅さがあり(恥ずかしながら、幸田文はもっと前の時代の作家だと思い込んでいたこともあり…)、現代エンタメ小説が失なってしまった純朴な読書の時間を与えてくれる佳品。

    朧げな記憶に「おとうと」を読んだことがある気がするほかは、幸田文はほとんど読んだことがないので、ちくま日本文学ででも読んでみるかな。

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    2018年09月26日
  • 流れる(新潮文庫)

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    名作だった。名作ゆえに、読み終わった途端、もう一度じっくり読んでしまった。私の思う名作とは、味わいのある言葉遣いがあること、何度も読み返したくなること、人にすすめたくなること。美味しくて、足繁く通い、友達にも教えたくなる、名店と一緒だ。

    物語も、女中が見た没落しかかった芸者置き場という、下世話ながら惹かれる内容だ。そこには上流へ流れる者、下流へ流れる者、それぞれのストーリーがある。

    最後の著者の言葉、「水は流れるし、橋は通じるし、『流れる』とは題したけれど、橋手前のあの、ふとためらう心には強く惹かれている。」という文章に、この物語の全てが凝縮されているように感じた。ふとためらう繊細な心を細

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    2018年08月20日
  • 番茶菓子 現代日本のエッセイ

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    清少納言は、学生時代に古文で習った程度なのだけれど。
    読みながら、この人は、現代の清少納言みたいだな、と感じてしまった。
    凛としていて、才気あふれていて、孤高で、皮肉もビシバシ口にする、強気な人。
    日常のことを書いているのだけれど、どこかはっとさせられる。
    同じ時代に生まれていたら、気が合ったんじゃないか、と思うと、しんと面白い。
    できることなら、この人が生きている時に、読んでみたかった。

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    2017年10月23日
  • おとうと(新潮文庫)

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    他の作品にも言えることだが、女主人公はいつも大人である。家庭の不和の中でも自分の役割を全うしようとするが、年幾ばくも無いため至らぬ点にしばし気づかされるものの、そこで拗ねたり開き直るのではなく、ただただかくあろうとする姿勢で困難に立ち向かっていく。病気を理由に家事をしない義母の代わりをし、自分が弟より重要視されていないと理解しながらも、父や弟に誠実に接しようとする姿は、現代に生きる自分自身の子供っぽさとは対極だった。拗ねて、怠けがちで、他人のせいについしてしまう自分。
    気が利きすぎる主人公は心休まる時は少なかったかもしれないが、人間の尊厳・美しさを見せてくれた。

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    2017年01月27日
  • 流れる(新潮文庫)

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    やっと手に取った幸田文。期待を裏切らない面白い作品だった。漢字変換されてない言葉が多々あるので慣れるまで少し読みにくかった。意地があって口が達者な女しかいない置屋の内情。主人公:梨花が素人で所謂普通の感覚を持っている人、という設定が読む側が素人であるだけにスッと話に入っていきやすかった。会話の箇所を読むと往年の女優が喋っているのが容易に想像できる。この頃の人はみんなこんな早口でスパッと話したもんなんだなぁ。裏の中華料理店と五目そばの受け渡しをするシーン、可笑しくて可笑しくて声たてて笑ってしまった。途中、同映画も観てみたが、そのシーンがちゃんと入っていてムフフとなる。映画も素晴らしかったけれど原

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    2015年11月22日
  • きもの(新潮文庫)

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    着心地重視の主人公に完全にシンクロしながら読みました。肌触りがいいとその日1日気持ちよく過ごせるのすごくわかる。
    おばあさんの生活の知恵、特に着物の含蓄にうなずきまくりました。木綿、毛織、銘仙、絹、いつどの素材を着るか何故その着物なのか全部理に適ってる。縮緬のお布団ってそんなに寝心地いいのかな、寝てみたい。

    少し昔の小説なので読んでてエーッてなるとこいっぱいあるし震災描写は悲しくなりましたけど、当時の文化や流行とか着物を生活品として作る人や着る人の考えることに触れられてよい読書時間になりました。自伝も入っててリアリティ色も強め。
    終わりが唐突なのは連載が止まったためだそうで、続き読んでみたか

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    2015年05月17日