幸田文のレビュー一覧

  • 台所のおと 新装版

    Posted by ブクログ

    21.09.16~09.27
    やっぱり、日本語の使い方が美しい。
    こんなに素敵に日本語を使えたら、世界が変わるだろうな。

    心がすっとして、すがすがしくなる。しばらくの間は、きれいに言葉を使おうと思う。

    すぐに雑な表現になってしまうけど。

    0
    2021年10月01日
  • 月の塵

    購入済み

    想いは月にまで

    筆者の小説・エッセイでは、身近でありふれた題材を繊細で新鮮な視点で垣間見ることができるので楽しい。遠い宇宙空間でさえも筆者の世界に取り込まれてしまうのが、筆力のなせる技なのだと思う。

    0
    2021年08月21日
  • 父・こんなこと(新潮文庫)

    Posted by ブクログ

     幸田文さんの父、幸田露伴氏は戦中の大空襲以来、寝たきりになってしまわれた。寝たきりでもそれ以前の規則正しい生活は変わらず、毎朝同じ時間に目覚められて、すぐに文さんと娘の玉子さんが、洗面の用意をし、煙草、ほうじ茶、朝食、搾りたての牛乳、新聞を決まった順番に用意するなど、厳しいお父上の看護はなかなか大変だった。
     いよいよ重篤になられたのは、戦後二年目の昭和22年の夏だった。ある朝血を吐かれ、それを見て文さんは、いよいよお父様に死が迫ってきたと確信した。
     急いで親しい人や、医者に知らせなければとあたふたとする。今のように携帯どころか、固定電話もないので、電車に乗って呼びに行く。猛暑の夏でただで

    0
    2021年02月17日
  • 流れる(新潮文庫)

    Posted by ブクログ

    凋落していく置屋で、くろうとを眺めるしろうと主人公の視点が巧み。芸妓たちの時に激する直接的な台詞よりも、交わされる無言の視線が彼女たちの関係性、そして内面感情をはっきりと指し示している。間と目線を行間にありありと浮かび上がらせる幸田文の表現に敬服。

    0
    2020年08月08日
  • きもの(新潮文庫)

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    めっちゃ面白かった!!!!
    びっっくりした!

    昔の人ってこうだったんだ・・・
    手に取るようにわかる
    噂には聞いていたあの話、この話、
    細かい着物の描写は、どんな生地なのかとかわからなかったりするけど、
    だから運針を学校で習ったんだな、
    命からがらって関東大震災はこんなだったんだな、
    地域が助け合って暮らしていた頃ってこうだったんだな、
    日本の良さ、感じられました。感動!
    大事にしたい本。

    0
    2019年06月19日
  • 流れる(新潮文庫)

    Posted by ブクログ

    零落してゆく置屋の景色と時間を、女中 梨花の視点で華麗に切り取った小説。書かれたのは1956年だが、すでに古典と呼んでも違和感のない風雅さがあり(恥ずかしながら、幸田文はもっと前の時代の作家だと思い込んでいたこともあり…)、現代エンタメ小説が失なってしまった純朴な読書の時間を与えてくれる佳品。

    朧げな記憶に「おとうと」を読んだことがある気がするほかは、幸田文はほとんど読んだことがないので、ちくま日本文学ででも読んでみるかな。

    0
    2018年09月26日
  • 流れる(新潮文庫)

    Posted by ブクログ

    名作だった。名作ゆえに、読み終わった途端、もう一度じっくり読んでしまった。私の思う名作とは、味わいのある言葉遣いがあること、何度も読み返したくなること、人にすすめたくなること。美味しくて、足繁く通い、友達にも教えたくなる、名店と一緒だ。

    物語も、女中が見た没落しかかった芸者置き場という、下世話ながら惹かれる内容だ。そこには上流へ流れる者、下流へ流れる者、それぞれのストーリーがある。

    最後の著者の言葉、「水は流れるし、橋は通じるし、『流れる』とは題したけれど、橋手前のあの、ふとためらう心には強く惹かれている。」という文章に、この物語の全てが凝縮されているように感じた。ふとためらう繊細な心を細

    0
    2018年08月20日
  • 番茶菓子 現代日本のエッセイ

    Posted by ブクログ

    清少納言は、学生時代に古文で習った程度なのだけれど。
    読みながら、この人は、現代の清少納言みたいだな、と感じてしまった。
    凛としていて、才気あふれていて、孤高で、皮肉もビシバシ口にする、強気な人。
    日常のことを書いているのだけれど、どこかはっとさせられる。
    同じ時代に生まれていたら、気が合ったんじゃないか、と思うと、しんと面白い。
    できることなら、この人が生きている時に、読んでみたかった。

    0
    2017年10月23日
  • おとうと(新潮文庫)

    Posted by ブクログ

    他の作品にも言えることだが、女主人公はいつも大人である。家庭の不和の中でも自分の役割を全うしようとするが、年幾ばくも無いため至らぬ点にしばし気づかされるものの、そこで拗ねたり開き直るのではなく、ただただかくあろうとする姿勢で困難に立ち向かっていく。病気を理由に家事をしない義母の代わりをし、自分が弟より重要視されていないと理解しながらも、父や弟に誠実に接しようとする姿は、現代に生きる自分自身の子供っぽさとは対極だった。拗ねて、怠けがちで、他人のせいについしてしまう自分。
    気が利きすぎる主人公は心休まる時は少なかったかもしれないが、人間の尊厳・美しさを見せてくれた。

    0
    2017年01月27日
  • 流れる(新潮文庫)

    Posted by ブクログ

    やっと手に取った幸田文。期待を裏切らない面白い作品だった。漢字変換されてない言葉が多々あるので慣れるまで少し読みにくかった。意地があって口が達者な女しかいない置屋の内情。主人公:梨花が素人で所謂普通の感覚を持っている人、という設定が読む側が素人であるだけにスッと話に入っていきやすかった。会話の箇所を読むと往年の女優が喋っているのが容易に想像できる。この頃の人はみんなこんな早口でスパッと話したもんなんだなぁ。裏の中華料理店と五目そばの受け渡しをするシーン、可笑しくて可笑しくて声たてて笑ってしまった。途中、同映画も観てみたが、そのシーンがちゃんと入っていてムフフとなる。映画も素晴らしかったけれど原

    0
    2015年11月22日
  • きもの(新潮文庫)

    Posted by ブクログ

    着心地重視の主人公に完全にシンクロしながら読みました。肌触りがいいとその日1日気持ちよく過ごせるのすごくわかる。
    おばあさんの生活の知恵、特に着物の含蓄にうなずきまくりました。木綿、毛織、銘仙、絹、いつどの素材を着るか何故その着物なのか全部理に適ってる。縮緬のお布団ってそんなに寝心地いいのかな、寝てみたい。

    少し昔の小説なので読んでてエーッてなるとこいっぱいあるし震災描写は悲しくなりましたけど、当時の文化や流行とか着物を生活品として作る人や着る人の考えることに触れられてよい読書時間になりました。自伝も入っててリアリティ色も強め。
    終わりが唐突なのは連載が止まったためだそうで、続き読んでみたか

    0
    2015年05月17日
  • おとうと(新潮文庫)

    Posted by ブクログ

    姉とおとうと、おとうとと義母、姉と娘、父と娘、ひとつひとつの関係性がとてももどかしい。
    この物語には器用な人間は登場しない。全ての人間が不器用で、意地悪で、悩んでいる。が、そこに僕はこの小説の愛嬌を感じる。
    読み進めながら途中、読むのを辞めたくなる。あまりにも日本文学的な、べったりとした描写、物語。半分くらい読んだところでそれらを全部ペリペリと剥がしたくなってしまうのだ。
    だがこの本を読み終えたとき、その煩わしかったもどかしい登場人物やうざったい物語を、抱きしめたくなる。
    あまりにも鮮やかで、読者にありありとした風景を想起させる描写は、この小説のあり方をも示しているのかもしれない。

    幸田文は

    0
    2015年04月22日
  • さざなみの日記

    Posted by ブクログ

    母と娘だが女と女。
    刻々と変化するものの中にこそ幸せや憐み、美しさを見出すことができる。

    幸田文とか、その作中の人って口数が少ないから好きだ。その分、奥の方で考えている量と質がすごい。表面にその中身がチョロッとしか出てこないから、一言一言がすごく効いてくる。

    0
    2014年07月03日
  • 父・こんなこと(新潮文庫)

    Posted by ブクログ

    この人の書く露伴は、気難しくて厳しくて、でもどこかユーモアがあって粋ですらある、ただ一人の、誰のでもないこの人の父親だ。
    「偉大な作家」で包み隠すのではなく、真にこの人が見てきた、感じてきた父・露伴を描いたこの作品は、誰が書くよりも(もしかすると露伴本人よりも)作家・露伴の魅力を伝えている気がする。
    こんなことを書いている私は、実のところ作家・露伴を知らない。
    作家・露伴に触れた時、どう感じるのか。
    今から楽しみでならない。

    0
    2014年05月29日
  • 父・こんなこと(新潮文庫)

    Posted by ブクログ

     父・幸田露伴の晩年と看取りをつづった「父―その死―」、父との日常の思い出をつづった「こんなこと」を収録した本。

     「父―その死―」では、父の看病で激しく揺れる筆者の思いがとても正直につづられている。時には憎しみを深く感じる一方で、別の時には心から憐れんで親身になる。その時々に移り変わる気分がつぶさに書かれて、嘘がないと感じた。頼られている、私がやらなければ誰がやるのかという気持ちと、肉体的な疲労や、もうやってられないという気持ち、さらに長年積み重なった父への愛憎がそこに加えられ掻き混ぜられた結果が、そうした感情のバリエーションとして表れるのだと思う。
     人が勧めることを試したいという父、氷

    0
    2013年11月08日
  • きもの(新潮文庫)

    Posted by ブクログ

     主人公の子供時代から結婚するまでの人生の歩みを、着るもの、身につけるもののエピソードをふんだんにちりばめて書かれた小説です。

     きかん気が強く、気に入らないことは絶対に受け付けない性質の主人公の子供時代から物語が始まります。姉たちにはからかわれ、親にも持て余されがちな主人公。そして、そんな主人公にじっと寄り添い、気を回す祖母が物語の中心です。
     
     登場人物が魅力的で、癇気の強い主人公、人間の良くできた祖母、どこか対照的な二人の姉、女学校でのふたりの友人、そして父の愛人など、皆それぞれの強さと考え方を持って生きていました。どの女性の半生でも物語が書けると思えるほどです。
     ただし、男性の登

    0
    2013年11月05日
  • 台所のおと みそっかす

    Posted by ブクログ

    随筆→小説→随筆
    の順で載っており、
    やはり随筆でないほうが
    好きだなと読み進めていたが
    最後の「終焉」でやられる。

    この作家の唯一読んでいた作品が
    「流れる」だったので、出てきたのが
    女性ばかりだったが、
    この作家の書く男性も、
    凄く魅力的だ。

    「みそっかす」も読み、
    この作家も、お父様も、お母様も
    素敵な方で胸打たれる。

    0
    2013年10月08日
  • きもの(新潮文庫)

    Posted by ブクログ

    登場人物の語り口調がぽんぽんと軽快で、するすると読めてしまう。東京の下町の口調はきっと実際耳にしても私にはついていけないだろう…。
    三姉妹(+兄)の末っ子の半生は、進路の悩みや性格の悩み、家族との葛藤など女性なら共感できる部分も多かった。
    祖母からいろいろなことを教えてもらい生活のなかの知恵を得ていくのだが、こうした世代を超えて受け継がれていく口伝、女の知恵というものが昔は当たり前に存在していたのだろう。

    0
    2013年02月15日
  • 包む 現代日本のエッセイ

    Posted by ブクログ

    一つ読んでは唸り、また一つ読んでは唸り…
    唸りつくした1冊。見事としか言いようがない。
    昨今の小説を読んでがっかりするくらいなら幸田文さんの作品を読んでいたい。間違いがないもの。

    ちょっと自分にはついていけない…というような、細やかで独自の感じ方をされる方です。
    その感性や鋭い観察力によって心がどんなふうに動いていったかを表現する文章がまたすごい。

    名文のオンパレードで、心の中で「まいりました!」と平伏したくなることが何度あったか。

    例えば、「道ばた」の出だし。

    「茶の間は往来からたった六尺ほどひっこんでいるだけなので、外の物音や声は随分よく聞えてしまう。あまり何でもよく聞えるから、と

    0
    2012年10月29日
  • 包む 現代日本のエッセイ

    Posted by ブクログ

    幸田文のエッセイ集は数々ありますが、最初に読むのなら「包む」をおすすめします。
    「何をお包みいたしましょう」で、思いがけないお土産を大量に包んでしまった話、幸田文の父が文が結婚するにあたって相手の親の気持ちになっていろいろ考える結婚雑談、晩年になって「この人私に似ている」と思う話、可愛がっていた猫をなくしてしまう話など読みどころが盛りだくさんです。

    0
    2012年02月22日