あらすじ
平凡にひそやかに生きる女たちの心のさざ波……「明るく晴れている海だって始終さざ波はあるもの、それだから海はきらきらと光っている。」――手習いの師匠を営む母と年頃の娘、そのひっそりと平凡な女所帯の哀歓を、洗練された東京言葉の文体で、ユーモアをまじえて描きあげた小説集。明治の文豪・幸田露伴の娘として、父の最晩年の日常を綴った文章で世に出た著者が、一旦の断筆宣言ののち、父の思い出から離れて、初めて本格的に取り組んだ記念碑的作品。
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Posted by ブクログ
母と娘だが女と女。
刻々と変化するものの中にこそ幸せや憐み、美しさを見出すことができる。
幸田文とか、その作中の人って口数が少ないから好きだ。その分、奥の方で考えている量と質がすごい。表面にその中身がチョロッとしか出てこないから、一言一言がすごく効いてくる。
Posted by ブクログ
昨夜は、『さざなみの日記』を読みながら寝落ちした。まあ「落ちる」というよりは「ふんわり着地」したかのような寝つきだったのだけれど。あれが、幸田文の文章のなせる技なのだろう。急かされることのない文章で、それはそれでありがたい。文庫本も十数冊入手済みで、死ぬまで「寝落ち本」を任せられる量だと思う。著者である幸田文は既に鬼籍に入っている人であり、その人の文章に手を引かれて緩慢に死んで行くのだ。「行く」のだから後ろ向きな気持ちは全くなく、焦る道行きでもないので穏やかだ。