幸田文のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
【本の内容】
山の崩れの愁いと淋しさ、川の荒れの哀しさは捨てようとして捨てられず、いとおしくさえ思いはじめて…老いて一つの種の芽吹いたままに、訊ね歩いた“崩れ”。
桜島、有珠山、常願寺川…瑞々しい感性が捉えた荒廃の山河は切なく胸に迫る。
自然の崩壊に己の老いを重ね、生あるものの哀しみを見つめた名編。
[ 目次 ]
[ POP ]
新緑の楓林を鑑賞するために安倍峠を訪れた幸田文さんの前に現れたのは、地元観光課のかたの心くばりにより案内された大谷崩れでした。
「あの山肌からきた愁いと淋しさは、忘れようとして忘れられず、あの石の河原に細く流れる流水のかなしさは、思い捨てようとして捨てきれず、しかもその日の帰途上ではすでに、山の崩れを川の荒れをいとおしくさえ思い始め」た幸田さんは日本にある「崩れ」を見て歩くことになったのです。
時には、人に背負ってもらってまでして「崩れ」を見に行く幸田さん。
すでに72歳になっていた幸田さんを動かすやむにやまれぬ思いはなんだったのでしょうか。
ただ私にわかるのは幸田さんの目を通してみる「崩れ」によって思い知らされる山々のもつ厳しさ、哀しさ、人々の健気さ、優しさは私たちが生きていくうえで決して忘れてはいけないことだということです。
この本を読んでから山歩きをすると今までまるで見えなかった風景が見えるでしょうか。
いいえ、きっと今の私には見えない。
幸田さんが生きてきた長い年月を私も経たとき、幸田さんのような眼をもつことができるように生きていけることを私は願っています。
[ おすすめ度 ]
☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)
[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ] -
Posted by ブクログ
「なくしもの」。
妻がふと夫に嫌悪を抱く。
すると、まるで心を見透かされたように夫から別居の打診をされる。家庭が一番落ち着くと言っていた夫なのに、と妻はいぶかしむ。
妻が生き生きと働きだした結果、夫の目には「静かさと安らかさ」をなくしてしまったように映る。
最初は妻の嫌悪から始まるのに、夫の言葉に私までガーンと衝撃を受けた。自身を貫く一言って、あると思う。
「ドッコイショ」では、「人のからだは天然資源でできています」という言い回しが面白い。
使えば減る。減るのは定めだが、荒廃させるのはむざんだと幸田文は結ぶ。
彼女の文章に触れると、身体論ではないのにも関わらず、身体というものを改めて見直したくなるときがある。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ最初は独特な文体に戸惑ったものの、すいすい読み進めることができ、すぐに読み終わった。ただ、ところどころに日本語の破綻がみられる上に、最後の締め方がやや強引だったので素直に素晴らしいとは言い難い。しかし文章はきれいだし、女性らしい細やかな感性が感じられてよかった。主人公のげんは作者と重ね合わせて描かれているようだが、自伝的小説というにはうまくいきすぎている部分が多い気がする。物語の大きな転換点は碧郎が童貞を喪失するところだが、そこからいきなり2年とんだのには驚いた。遊びがなくなって性欲が抑制できなくなったのだと思う。それについてはちょこっと本文で触れられていた。それからの2年間は書くにも値しないということだろうか。平凡な2年間が過ぎた後にいきなり碧郎が結核になっているのだから読者は驚いてしまう。また、父親(幸田露伴)の影の薄さも印象に残った。
だらだら書いたけれど、全体としてこの本は面白かったと思う。