標野凪のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
喫茶店という静かな場所で紡がれる日常の描写や、料理を通して人がゆるやかにつながっていく雰囲気がとても心地よい作品だった。
一方で、読み進めるうちにナレーターの語り口が強く印象に残った。出来事や感情を丁寧に説明してくれる語りは優しさでもあるのだが、私には少し距離が近く感じられ、物語の中に静かに入り込む前に現実へ引き戻されてしまう瞬間があった。
私は登場人物の言葉や仕草から気持ちを想像する余白のある文章が好きなのだと、今回の読書で改めて気づかされた。
好きな世界観だからこそ語り手の存在が際立ってしまったが、その違和感も含めて、自分の読書の好みを知る一冊になったと思う。
-
Posted by ブクログ
死者の世界と現世を行き来し、想いを伝える「伝言猫」のふー太を主人公にした、ファンタジー要素のある物語です。本作を読んで強く心を揺さぶられたというよりも、「自分にとって会いたくても会えない人は誰だろう」と考えるきっかけになりました。
ここで描かれる「会えない」は、距離や心の問題ではなく、死によって物理的に会うことができなくなった存在のことだと感じます。会えなくなる前に会っておかなければならない人がいる、という当たり前のことを改めて意識しました。
私にとってそれは、小学生の頃に若くして亡くなった祖母です。当時は考えもしなかった人生の話や、庭に咲く花ことを、今ならもっと聞いてみたかったと思います。
-
Posted by ブクログ
喫茶店を訪れる人たちの悩みに対して、店主がカフェメニューを通して言葉を添えていく構成の物語です。シチューや保存食、サンドイッチといった料理は、心情を直接なぞるというよりも、会話のきっかけとなり、悩みを少し軽くしてくれる役割を担っているように感じました。読んでいると、カフェでほっと一息つきたくなります。
人まねじゃなくて、自分の価値基準を持つ。自分が快適なら、それが理想の暮らしになる。他人の基準に振り回されて自分を見失ってはもったいない。自分がいいと思えばいい。ただ、そのためには自分の研ぎ澄まされた志を持つことが大切なんです。
という言葉が印象に残りました。何かを急いで変えることを求めるのでは -
Posted by ブクログ
ネタバレ美味しいご飯が出てくるアンソロジー。タイトルと表紙に惹かれて手に取った。
あくまで私の個人的感想なので好きな人には許して欲しいのだけど、1話目のスクランブルエッグの話はかなりビミョーだった。
でも2話目の「ひめくり小鍋」がなかなか良くて、季節柄お鍋いいなー、しかも1人用のやつ!
主人公の行動や、合言葉が必要とか、まあツッコミどころはあるのだけど。
3話目の、背脂ラーメンの話がいちばん面白かった。途中まで、この人、殺人を犯したのでは?とドキドキしながら読んでいたら、違ってかなりホッとした。でも、自分のほんの小さな悪意が、ある人を事故死に追いやったのでは、と苦悩していた。その男性の友人もまた、 -
Posted by ブクログ
丘の上にある博物館は、少し変わったものが展示されている。
それは、役目を終えて必要とされないものや誰かの失われたものたちだが、その人にとっては大切な記憶の欠片である。
みんなから『別れの博物館』と呼ばれるこの博物館で働くカケスは、数字や計算が苦手でディスカリキュアの障害がある。
だが、この博物館に持ち込まれた「物」の声が聞こえる特殊な能力を持っている。
収蔵番号【一】 館長の〈数〉
収蔵番号【二】喫茶店に飾られていた〈額〉
収蔵番号【三】帽子作家の〈針〉
収蔵番号【四】手話ボランティアの〈耳〉
収蔵番号【五】数学教師の〈名〉
もうひとつの収蔵番号ー着られることのない〈服〉
帽子作家の