道尾秀介のレビュー一覧
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「道尾秀介」の長篇ミステリ作品『貘の檻』を読みました。
『笑うハーレキン』に続き「道尾秀介」作品です。
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この悪夢から、抜け出せるか――。
「道尾秀介」史上最強&最驚の長編ミステリー!
1年前に離婚した「大槇(おおまき)辰男」は、息子「俊也(しゅんや)」との面会の帰り、かつて故郷のO村に住んでいた「曾木美禰子(そぎみねこ)」を駅で見かける。
32年前、父に殺されたはずの女が、なぜ――。
だが次の瞬間、彼女は電車に撥ねられ、命を落とす。
「辰男」は「俊也」を連れてO村を訪れることを決意。
しかしその夜、最初の悪夢が……。
薬物、写真、地下水路。
昏(くら)い迷宮を彷徨(さまよ)い辿り着く、驚愕のラスト。
道尾史上最驚の長編ミステリー!
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信州の寒村を舞台にした、昭和感漂う、「横溝正史」作品風のおどろおどろしい雰囲気のミステリでした… この懐かしい感じは好きですね。
■第一部
・第一章 盲蛾
・第二章 埋火
・第三章 夕霞
■第二部
・第四章 病葉
・第五章 幻獣
・終章 貘の檻
■解説 市川真人
昭和59年、主人公の「大槇辰男」は職を失い自殺未遂を起こしたうえ、心臓を患って医者にかかり、そこで不正に手に入れた薬プロプラノールに溺れかかっていた… 心身ともに疲弊した「辰男」は、離縁した妻「智代」と暮している息子「俊也」と月に1度の面会をした後、駅で「辰夫」を見つめる女性がホームから落ちて歴史するところを目撃、、、
女性は彼が少年時代を過ごした長野県O村で行方不明になった「曾木美禰子」であった… 32年前、O村の農業組合長「檜場宗悟」が殺され、「辰男」の父「石塚充蔵」に容疑がかけられ、その際に「美禰子」も行方不明になったのだが、やがて「充蔵」は村の水路で遺体となって発見され、一連の事件は未解決となる。
「辰男」は「美禰子」の死をきっかけに「俊也」ともどもO村を訪れ、O村の資産家の息子で医師の「三ツ森塔士」の協力を得ながら過去の真相を探ろうとする… 「辰男」と時を同じくして、謎めいた写真家・郷土史研究家の「彩根(あやね)」という男性もO村に現れ、「辰男」に接触し手助けをしようとする、、、
貧しい寒村だったO村に、私財を投げ打って山中の水源から水を引くため穴堰(あなぜき)というトンネルを掘り、水路を巡らせて稲作を根付かせた「三ツ森家」と、元名主で信州味噌の製造で財を成した「檜場家」を中心に成り立ってきた村の歴史… 32年前、O村の象徴ともいえる穴堰に潜み、溺死した「充蔵」と、殺された「檜場宗悟」、行方不明となった「美禰子」の関係が徐々に明らかになるに連れ、「俊也」や「辰男」の身に危険が迫る。
「美禰子」は32年間どのように生活し、どうして轢死したのか、なぜ「俊也」は誘拐され穴堰の息抜き穴に投げ込まれたのか、「辰男」の母「とき子」はなぜ自殺したのか、そして、32年前の事件の真相は… これらがひとつの環となって繋がり、物語はクライマックスを迎えます、、、
悪夢のシーンがおどろおどろしい雰囲気を高めているものの、やや冗長だったことと、方言での会話や歌がわかりにくいところが、読んでいて気になりましたね… でも、薬物、写真、昆虫、地下水路など多彩な道具立てを駆使したトリックも愉しめたし、謎もきっちり解明されるてミステリとしてもクオリティが高いし、ミステリ要素だけでなく、恐怖心理、親子の葛藤、男女の愛憎、そして弱者の救済等も織り込まれ、「道尾秀介」らしさの詰まった作品でしたね。 -
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「道尾秀介」の長篇作品『笑うハーレキン』を読みました。
「道尾秀介」作品は、昨年3月に読んだ『ノエル―a story of stories―』以来なので、約1年振りですね。
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あいつはいつも、ここにいる。
経営していた会社も家族も失った家具職人の「東口」。
川辺の空き地で仲間と暮らす彼の悩みは、アイツにつきまとわれていることだった。
そこへ転がり込んできた謎の女「奈々恵」。
川底に沈む遺体と、奇妙な家具の修理依頼。
迫りくる危険とアイツから、逃れることができるのか?
「道尾秀介」が贈る、たくらみとエールに満ちた傑作長篇。
これはミステリーなの?サスペンスなの?
謎の組織まで現れ、アクション映画さながらのスリリングなカーチェイスまで。あー面白い!/「小泉今日子」
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40歳の「東口太一」は、東京・荒川沿いのスクラップ置き場で、都会の片隅に吹き寄せられたホームレス仲間の「ジジタキさん」、「モクさん」、「チュウさん」・「トキコさん」夫婦、犬の「サンタ」と暮らしている家具職人… 息子「笙太」を川の事故で喪い、不況の波に飲まれた取引会社の家具商社・イザワ商事の倒産により、経営していた家具製造会社・トウロ・ファーニチャーが連鎖倒産、その後、妻「智江」からは離婚を言い渡され、家具の修理道具一式とともにトラックの荷台で寝起きし、夜な夜な亡き息子を映したホームビデオを見返して生活している、、、
そのスクラップ置き場は持ち主の「橋本」が住む場所として提供してくれており、「東口」を始めとするホームレスの5人は、「橋本」が所有するアパートの一室を共同で使用させてもらい、そこを住民票の登録住所にして、トイレ、お風呂、物置用の場所として使わせてもらっていた。
そんな「東口」のもとに、弟子入り志願の若い女性「西木奈々恵」が押しかけてきてから、「東口」の周辺で不穏な出来事が続き、息子の事故死後から「東口」にだけ見えるようになった疫病神からは、不吉なことばかりを告げられる… そして、ある奇妙な修理依頼をきっかけに、「奈々恵」や仲間たちの秘密が明かされていく、、、
ドロップアウトした男が一歩を踏み出す姿を、ユーモアを交えて軽快に描き出す感動的な作品でしたね… どんどん先を読みたくなるような展開で、登場人物に感情移入して、一緒になって這い上がり、そして、エンディングでは自分自身も救われたような感覚を得られる作品でした。
誰だって、自分や家族や仲間を守るために、素顔を仮面で隠して生きているんですよね… 生きていくうえで必要なことだと思うけど、どうせならポジティブな仮面をかぶった方がイイなぁ と感じさせらましたね、、、
終盤、息子を撮影したビデオの秘密が明らかになるとともに、「東口」の過去が明らかになり、物語の味方が一変するところが印象的だったし、巧いなぁ と思いました… じーんとしちゃう作品でしたね。
ちなみに、タイトルにも使われているハーレキンとは、道化師のことだそうです、、、
顔に笑顔の化粧をして、人を笑わせるけど、濃い化粧の下の素顔は見えない… 苦痛に歪んでいても、涙を溜めていても、笑顔の仮面をかぶっているのがハーレキンなんですよね。 -
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「道尾秀介」の長篇作品『ノエル―a story of stories―』を読みました。
2月の始めに読んだ『鬼の跫音』以来、12冊連続で「道尾秀介」作品です、、、
書棚にあった「道尾秀介」作品の在庫も、本作品が最後の一冊… 寂しいですが、暫しの間はガマンですね。
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現実に立ち竦み、自分だけの〈物語〉を紡ぐ三人の男女。
極上の技が輝く長編ミステリー。
孤独と暴力に耐える日々のなか、級友の弥生から絵本作りに誘われた中学生の「圭介」。
妹の誕生に複雑な思いを抱きつつ、主人公と会話するように童話の続きを書き始める小学生の「莉子」。
妻に先立たれ、生きる意味を見失いながらボランティアで読み聞かせをする元教師の「与沢」。
三人が紡いだ自分だけの〈物語〉は、哀しい現実を飛び越えてゆく――。
最高の技巧に驚嘆必至、傑作長編ミステリー。
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別々に思えた三つの作品が、実はつながりのある物語だったんだ… という構成のチェーン・ストーリーです。
■光の箱
■暗がりの子供
■物語の夕暮れ
■四つのエピローグ
■解説 谷原章介
『光の箱』は、童話作家の「圭介」とイラストレーターの「弥生」が、中学生時代に虐めから逃れるために自分たちだけの世界を築こうとするが、同級生の「夏美」の登場により二人の間に大きな溝ができてしまう物語、、、
でも、この作品… 「マサキ」と「正木」と「昌樹」や、同じクリスマスシーズンの雨の夜のホテルでの出来事等で、うまーくミスリードされる仕掛けがあって、頭の中で描いていた暗い結末とは、全く異なる明るい未来が感じられる展開が待っており、愉しく読めました。
『暗がりの子供』は、母親に子どもが宿り複雑な感情を抱いているときに、大好きな祖母が倒れて入院し、その際の父と母の祖母の扱いに関する会話にショックを感じてしまった小学生の「莉子」が、童話の続きを自ら綴り始め、母親への黒い思いを募らせる物語、、、
この作品は時間軸がわかりにくくなっていて、それでうまーくミスリードさせられました… 妹となるはずの命を殺めてしまったかと錯覚してしまうような展開でしたが、こちらも頭の中で描いていた暗い結末とは、全く異なる明るい未来が感じられる展開でしたね。
『物語の夕暮れ』は、最愛の妻を喪い自ら人生に終止符をうとうとする元教師「与沢」が、昔、暮らしていた家に童話作家が住んでいることを偶然、雑誌で知り、祭りの囃子を電話口で聞かせてほしいと依頼し、その音を聞きながら、死のうとする物語、、、
このエピソードの結果は、次の『四つのエピローグ』で明らかになります。
『四つのエピローグ』は、読者に隠されていた事実が明らかになり、三つの物語がひとつの環としてつながっていく物語、、、
「与沢」の自殺は、「莉子」の妹「真子」の機転により未遂に終わり、「与沢」が電話した家には、夫婦となった「圭介」と「弥生」が住んでおり、しかも、「与沢」は「圭介」が小学校時代の担任の先生… この4人は、今後も良い関係を築いていけたんじゃないかと思います。
それぞれの切ない人生を想いながら、じーんとしちゃう作品でしたね… 挿話として使われている童話もなかなかのもの、、、
それはそれで出版されてもイイんじゃないかと思いました… 現実を生きるために、物語って大切なんですね。 -
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「道尾秀介」の長編小説(連作短篇かな…)『光』を読みました。
今月の始めに読んだ『鬼の跫音』以来、10冊連続で「道尾秀介」作品です、、、
今月は「道尾秀介」特集月間ですね… でも、1作ごとに作風が異なり、作品が進化し続けているので飽きずに読めるんですよね。
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あのころ、わたしたちは包まれていた。
まぶしくて、涙が出る――。
都会から少し離れた山間の町。
小学四年生の「利一」は、仲間たちとともに、わくわくするような謎や、逃げ出したくなる恐怖、わすれがたい奇跡を体験する。
さらなる進境を示す、「道尾秀介」、充実の最新作!
「利一」が小学生だった頃、仲間といれば毎日が冒険だった。
真っ赤に染まった川の謎と、湖の人魚伝説。
偽化石づくりの大作戦と、洞窟に潜む殺意との対決。
心に芽生えた小さな恋は、誰にも言えなかった。
懐かしいあの頃の記憶は、心からあふれ出し、大切な人に受け渡される―。
子どもがもつ特別な時間と空間を描き出し、記憶と夢を揺さぶる、切なく眩い傑作長編小説。
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小学校の頃って、ホントに毎日が冒険だったなぁ… 本書に登場する「利一」とシンクロする部分が多く(誘拐事件は除く)、少年時代を思い出しながら読み進めましたね、、、
自転車で移動できる範囲が自分にとっての世界の果てだったことや、友達と手打ち野球を楽しんだこと、山林や雑木林が遊び場だったこと、野良犬との交流があったこと、亀を飼っていたこと、昔は化石を容易に見つけることができたことを教えてもらったこと、カセットテープを使って遊んだこと、河原でホタルを追ったこと、貧しい子やそれなりに裕福な子がいたこと… 等々、懐かしい日々が蘇えってくる作品でした。
■第一章 夏の光
■第二章 女恋湖の人魚
■第三章 ウィ・ワァ・アンモナイツ
■第四章 冬の光
■第五章 アンモナイツ・アゲイン
■第六章 夢の入口と監禁
■終章 夢の途中と脱出
■解説 大林宣彦
小学四年生の「利一」と、その仲間たちの夏休みから冬の終わりにかけての体験と、その経験を経て子どもたちが成長していく姿を描いた作品… 読後の印象は「スティーヴン・キング」の『スタンド・バイ・ミー』を読んだときに近かったですね、、、
真っ赤に染まった川の水の謎と、湖から魚がいなくなった本当の理由と人魚伝説、洞窟での恐怖体験、アンモナイトの偽化石づくり大作戦、大切な人にホタルを見せるためにホタルの幼虫を厳冬の川で捕獲、去って行く友人へ渡したかった贈り物を手に入れるためのデパートでの盗掘作戦、誰にも言っていなかった将来の夢を告白したテープ、胸の中に芽生えた小さな恋心、そして、狂言誘拐が誘拐事件に発展してしまった決死の対決… 等々、わくわくしたり、恐怖を感じたり、切なくなったり と、「利一」に感情移入しながら愉しく読めました。
「利一」の友人「清孝」の祖母「キュウリー夫人」は、最初、気難しい人だなぁ… と思っていましたが、「利一」等との交流の中で徐々に心を開いてくれて、終盤では大好きな登場人物となりました、、、
こんな大人との交流もあったなぁ… と思い出しましたね。
大人になってから、いつの間にか失ってしまった冒険心、見えなくなってしまった光… 少年の頃って、こんな生活が永遠に続くような、そんな錯覚があったような気がしますね、、、
「道尾秀介」って、少年の心情を描くのが巧いなぁ… と改めて感じた一冊でした。
冒頭(目次より前)に紹介される『時間(とき)の光』という「市里修太」という作家の文書の一部や、アポロ11号の月面着陸の際の、「ニール・アームストロング船長」等と管制センターの通信記録、各章の間に挿入される「わたし」の回想等、読んだ際には意味がわからない、ちょっとした謎が、読んでいるうちに徐々に解けていくのも愉しみのひとつですね、、、
「利一」→逆にすると→「一利」→「市里」
亀の「ダッシュ」→逆にすると→「シュダッ」→「修太」
なんて気付かないよなぁ… そんな遊び心もある作品でしたね。
先入観を持たずに、自然体で読み始めたのも良かったかな。 -
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「道尾秀介」の長篇作品『水の柩』を読みました。
『鬼の跫音』、『龍神の雨』、『球体の蛇』、『光媒の花』、『月の恋人―Moon Lovers』、『月と蟹』、『カササギたちの四季』に続き「道尾秀介」作品です。
-----story-------------
いま最も眩しい作家が描く、成長と再生の物語。
タイムカプセルに託した未来と、水没した村が封印した過去。
時計の針を動かす、彼女の「嘘」。
平凡な毎日を憂う「逸夫」は文化祭をきっかけに同級生の「敦子」と言葉を交わすようになる。
タイムカプセルの手紙を取り替えたいという彼女の頼みには秘めた真意があった。
同じ頃、「逸夫」は祖母が五十年前にダムの底に沈めた「罪」の真実を知ってしまう。
それぞれの「嘘」が、祖母と「敦子」の過去と未来を繋いでいく。
「今」彼女が手紙を取り替えなくてはならない理由。
あの二つの出来事がもし、同じ時期に起こらなかったら--。
「暗闇」から射し込む「光」は、救いなのか、それとも。
「道尾秀介」しか描けない、絶望と、それを繋ぐ希望。
(解説)河瀬直美
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老舗旅館の長男で中学校二年生の「吉川逸夫」は、自分が“普通”で退屈なことを嘆いていた… 同級生の「木内敦子」は両親が離婚、級友からいじめを受け、誰より“普通”を欲していた、、、
文化祭をきっかけに、二人は言葉を交わすように…
「タイムカプセルの手紙、いっしょに取り替えない?」
「敦子」の頼みが、「逸夫」の世界を“普通”から抜け出すきっかけとなります。
「敦子」の秘めた決意とは… 「逸夫」の祖母「いく」が抱えるダム湖に50年前に沈めた罪とは… 大切な人たちの中で、「逸夫」には何ができるのか、、、
あの人たちに殺されるのが厭だったと呟いた「敦子」、本当のことが言えず50年間ずっと嘘を吐き続けていた「いく」、そして大切な人たちのために何かをしたい思う「逸夫」… そんな三人がダムの上から投げ捨てた物は、忌まわしい過去だったんですかね。
みんな、生きていくため、必死に「嘘」をついているんですよね… 少年と少女の成長と再生の物語でしたね、、、
「逸夫」に感情移入して、どうにかしたいけど、どうにもならない… というもどかしさを感じながら読み進めました。
ミステリではないのですが、現在と近い過去、遠い過去が交錯しながら物語が進む中で微妙に読者にはわかり辛い部分があり、そこで、うまーくミスリードさせられて、緊迫感が最初から最後まで継続する感じで、ずっと集中して読めました… どんどん先が読みたくなるような展開で愉しめたなぁ。
過去を乗り越えて、明るい未来が予感できる終盤の展開も良かったな。
読んでいると、普段は忘れている自分の少年時代とシンクロする部分… 学校が荒れていて虐めもあり、楽しいことばかりではなかった中学時代… 固く蓋をして思い出さないように心の奥に仕舞い込んでいた記憶が引っ張り出されたような感覚がありました、、、
それだけ心理描写が見事なんでしょうね… これが「道尾秀介」作品の魅力なのかもしれませんね。 -
Posted by ブクログ
「道尾秀介」の連作ミステリー作品『カササギたちの四季』を読みました。
『鬼の跫音』、『龍神の雨』、『球体の蛇』、『光媒の花』、『月の恋人―Moon Lovers』、『月と蟹』に続き「道尾秀介」作品です。
-----story-------------
開店して2年。
店員は2人。
「リサイクルショップ・カササギ」は、赤字経営を2年継続中の、ちいさな店だ。
店長の「華沙々木」は、謎めいた事件があると、商売そっちのけで首を突っ込みたがるし、副店長の「日暮」は、売り物にならないようなガラクタを高く買い取らされてばかり。
でも、しょっちゅう入り浸っている中学生の「菜美」は、居心地がいいのか、なかなか帰ろうとしない―。
でも、この店には、少しの秘密があるのだ――。
あなたが素直に笑えるよう、真実をつくりかえてみせよう。
再注目の俊英による忘れ得ぬ物語。
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「リサイクルショップ・カササギ」の店長「華沙々木(かささぎ)丈助」と、その高校時代の友人で副店長の「日暮(ひぐらし)正生」、「リサイクルショップ・カササギ」に入り浸っている中学生の「南見菜美」の三人が、周囲で巻き起こる謎めいた事件を解決する、ほのぼのとした温かな雰囲気のミステリ作品… 「道尾秀介」作品にしては珍しく軽い感じの内容で、心地良く読み進められましたね、、、
好奇心旺盛な「華沙々木」が自ら探偵役を買って出て事件に首を突っ込み、的外れな推理で誤った謎解きをするのですが… 「華沙々木」のことを慕っている「菜美」を悲しませないために、「日暮」は事前に事件の真相と「華沙々木」の誤った真相を推理して、「華沙々木」の推理が正しいものだと思えるように細工をしてフォローをするという展開が面白いですねぇ。
「日暮」の涙ぐましい努力に同情しながら、それを愉しみながら読みました。
■春 鵲(かささぎ)の橋
■夏 蜩(ひぐらし)の川
■秋 南の絆
■冬 橘の寺
■解説 米澤穂信
『春 鵲の橋』は、「リサイクルショップ・カササギ」の店内で発生した「ブロンズ像放火未遂事件」を解決する物語、、、
狙われたのは、売約済みの札を貼ったブロンズ像… 容疑者は、事件の二日後に店内にハンカチを落としたという小学三年生くらいの少年と、価値があるとは思えないブロンズ像を買いに来た怪しげな男性客。
実はブロンズ像には隠された仕掛けが… 少年の母を思う気持ちにほろりとさせられる作品でした。
『夏 蜩の川』は、「リサイクルショップ・カササギ」の取引先の木工所で発生した「神木損壊事件」を解決する物語、、、
老舗の木工所から、新しい従業員の部屋の為の家財道具一式を揃えて欲しいという大口の依頼に応えるために、顧客の元を訪れた三人は、神社の御神木が何者かに傷付けられた事件に首を突っ込む… 容疑者は、この木工所で働く若い弟子の「宇佐見」と、新たに弟子として正式採用された「早知子」。
「華沙々木」の推理と同じく、先輩格の「宇佐見」が怪しく感じられる展開でしたが… 実は全然違う動機を持った、もう一人の容疑者の犯行でしたね、、、
木工職人に憧れた女性の夢と現実のギャップ… ですかね、でも、ちょっと身勝手な動機に感じられましたね。
『秋 南の絆』は、一年前の秋に「リサイクルショップ・カササギ」の取引先の豪邸で発生した「マルちゃんヤケ食い事件」を解決する物語、、、
高級な家財道具を格安で引き取って欲しいというVIPな依頼があり、早速、依頼主の元を訪れると、引き取る家財道具はすべて、離婚した元亭主の持ち物で、依頼主はその妻だった… そして、その家には小学6年生の一人娘「菜美」がおり、彼女は、父親の家財道具が運びだされる様を悲しい目で見つめていた。
「華沙々木」と「日暮」が「菜美」と出会うエピソード… ある日、彼女の家に泥棒が入り、盗まれたのは、彼女の母親が可愛がっていた猫の「ナーちゃん」で犯行時刻と思われる深夜には、この家に侵入しようとする不審な人物の姿が目撃されていた、、、
泥棒の正体には驚かされましたが、その動機を知ると、切ない気持ちでいっぱいになりましたね… 犯人と「日暮」の約束は、早く果たされるといいですね。
それを見届けるまで、三人の不思議な関係は続くんだろうなぁ。
『冬 橘の寺』は、これまでの三話で毎回「日暮」にロクでもないものを高値で売りつけていた黄豊寺の住職が大切にしていた亡き妻との思い出の貯金箱が割れれるという事件を解決する物語、、、
黄豊寺の住職から、蜜柑狩りに誘われた三人は、中学2年生になる住職の一人息子「宗珍」とも仲良くなり、寺で楽しい時間を過ごすが、外では突然雪が降り出し、道路にも積もってしまい、黄豊寺で一夜を明かすことになる… その明け方に寺に泥棒が侵入し、住職が大事にしていた亡くなった妻との思い出の貯金箱が割られ、「華沙々木」は「宗珍」の犯行ではないかと推理する。
「華沙々木」から推理を聞かされた「宗珍」は、「菜美」の反抗と疑っていたことから、「菜美」を護ろうと思い、自分の犯行だと認めるが、違和感を感じた「日暮」は別な推理を… 最終的には真犯人が囚われるのですが、その際は、大学でラグビー部の主将だった住職が大活躍、、、
その後、住職が蜜柑の接ぎ木(紀州蜜柑/温州蜜柑)を例えに「宗珍」を諭すシーンはじーんとしましたね… これまで「華沙々木」の推理を信じ込んでいると思っていた「菜美」が、実は影の立役者「日暮」の才能に気付いているということを示唆させる幕引きも良かったですね。
ちょっとライトな感じを漂わせつつ、ちょっとコミカルで、優しく心にじんわりと沁み込むような作品でした… 久しぶりに誰も死なないミステリを読んだかな、、、
心温まる連作集… 続篇が描かれることを期待しています。 -
Posted by ブクログ
「道尾秀介」の長篇作品『球体の蛇』を読みました。
『鬼の跫音』、『龍神の雨』に続き「道尾秀介」作品です。
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あの頃、幼なじみの死の秘密を抱えた17歳の私は、ある女性に夢中だった……。
狡い嘘、幼い偽善、決して取り返すことのできないあやまち。
矛盾と葛藤を抱えて生きる人間の悔恨と痛みを描く、人生の真実の物語。
1992年秋。
17歳だった私「友彦」は両親の離婚により、隣の「橋塚家」に居候していた。
主人の「乙太郎さん」と娘の「ナオ」。
奥さんと姉娘「サヨ」は7年前、キャンプ場の火事が原因で亡くなっていた。
どこか冷たくて強い「サヨ」に私は小さい頃から憧れていた。
そして、彼女が死んだ本当の理由も、誰にも言えずに胸に仕舞い込んだままでいる。
「乙太郎さん」の手伝いとして白蟻駆除に行った屋敷で、私は死んだ「サヨ」によく似た女性に出会う。
彼女に強く惹かれた私は、夜ごとその屋敷の床下に潜り込み、老主人と彼女の情事を盗み聞きするようになるのだが…。
呑み込んだ嘘は、一生吐き出すことは出来ない―。
青春のきらめきと痛み、そして人生の光と陰をも浮き彫りにした、極上の物語。
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「道尾秀介」が、初めて「ミステリーではない」ことを意識して執筆された作品らしく… ちょっと物足りなさを感じましたが、『龍神の雨』と同様に、うまーくミスリードさせられ、物語が二転三転する展開だったので、序盤から終盤まで緊張感が途切れず、愉しく読めました。
父親が家族に全く感心のないことが原因で両親が離婚… 父親と暮していた「友彦」は、父親が東京へ転勤した際、一緒に東京へ行くことを拒み、幼い頃から親しくしていた隣家の「橋塚家」に居候して高校生活を送っていた、、、
「橋塚家」の家族は、白蟻駆除の仕事をしている父親「乙太郎」と娘の「ナオ」の二人… 7年前、キャンプ場でテントが火事になった事件で「乙太郎」の妻「逸子」は亡くなり、顔に大火傷を負った「ナオ」の姉「サヨ」は、事件後に自殺していた。
「友彦」は、小さい頃から「サヨ」に憧れていたが、火傷を負った「サヨ」に対し、憐れみや同情の気持ちが強くなり、その気持ちを「サヨ」に話した直後に「サヨ」が自殺したことから、自分のせいで「サヨ」は自殺に追い込まれたと思い、そのことは誰にも言えず、自分の中で抱え込んでいた、、、
土日に「乙太郎」の仕事を手伝い、白蟻駆除や点検で家々を訪ねるうち、「友彦」は「サヨ」に似た女性「智子」と出会い、彼女に強い魅力を感じた「友彦」は、夜な夜なその屋敷の床下に忍び込み、「智子」と屋敷の老主人「綿貫」との情事を盗み聞きするようになる。
そんなある夜、「友彦」が、いつものように床下に忍び込んでいたところ、屋敷が火事になり「綿貫」は焼死… 床下に「友彦」が忍び込んでいたことを知っていた「智子」は、自分を「綿貫」から救うために「友彦」が放火したのだと思い込み、二人の関係は急速に親密になっていく。
「智子」の勘違い… そして、それを否定せず、「智子」に近付きたいがために、自分がやったように仄めかす「友彦」、、、
これが悲劇の始まりになるんですよねぇ… この後は、暗く哀しい展開が続きます。
「智子」は、「友彦」を守るために「乙太郎」を持ってしまい、「友彦」は、その現場を目撃、、、
さらに「智子」は、7年前のキャンプ場の火事は自分の煙草の不始末が原因と当時の教師「綿貫」に信じ込まされ、身体の関係を強要されていたことを告白… 「友彦」は、「智子」のせいで「逸子」が亡くなり、「サヨ」が自殺したことを知り、「智子」を罵倒して、彼女の部屋を後にする。
思いやりの嘘や狡猾な嘘、同情に満ちた言葉、怒りの感情を抑えきれない言葉、そして胸に秘めた隠された事実… これらの言葉が相互に作用して、複雑に交錯、、、
「智子」は自ら命を絶ち… と、負の連鎖を生み出すんですよねぇ。
終盤では、「ナオ」の証言から、キャンプ場の火事は、「智子」のせいではなく、「サヨ」がテント内で花火に火を点けたことや、「サヨ」の自殺は「友彦」の同情とは関係なかった… ということが明らかになり、「友彦」は「ナオ」と結婚・妊娠と、二人の幸せな生活を予感させるエンディングでしたが、、、
これも、「友彦」のことを自分のものにしたい「ナオ」の嘘だったのかもしれない… という、微かな不安を含んでおり、読み手によって、色んな解釈の仕方のある物語だったと思います。
複雑な余韻の残る作品でしたね、、、
この作品には、嘘を抱えた人間がたくさん出てくるのですが、良かれと思った嘘のせいでお互いを思いやる気持ちにズレが生じて、すれ違ってしまう… 本心でぶつかることを恐れたことにより誤解が生じているんですよね。
これって、事の大小はあるけど、現実世界では日常茶飯事として起こっていることなので… 身近な自分の行動に置き換えて、一つひとつの言葉の大切さや、影響の大きさについて、考えさせられました、、、
摩擦を恐れて誤魔化すばかりじゃなく、本音で、本心でぶつかることも必要なんだと改めて感じました。
本作品、ミステリ的な要素を残した、青春小説、恋愛小説として巧く仕上がっていると思います… 「道尾秀介」の新しい境地かな、、、
でも、個人的には、もっともっとミステリ色の強い作品を描いてほしいと思います。 -
Posted by ブクログ
いろんなシチュエーションの推理小説なので、それぞれ楽しめる。
決して殺人事件の犯人捜しだけじゃないんだ。
特に面白かったのが浅倉秋成さんの「糸の人を探して」。
冴えない、モテない大学生の河瀬倫義が、友だちに誘われて5×5の合コンに行く(その友だちは用事があり来れない)。しかも自分に好意をもっている女性がいると聞かされており、気合いが入っての参加だ。
行ってみると、この世の人かと思うような素晴らしい女性ばかり。それどころか、皆河瀬に好意的に話をかけてくる。
しかし後にあとの4人は、お付き合いを避けた方がよい人たちだとわかる。
名前を聞いておらず、いろいろな情報から赤い糸で結ばれるべき女性を推理していくのだが。
特に河瀬の思いを綴った表現や、女性とのテンポ良い会話が、笑いを誘う。
浅倉さんは「六人の嘘つきな大学生」の作家で、真逆の性格を描いていることも面白い。