道尾秀介のレビュー一覧
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「光の箱」は, ストーリー・セラーで読んでいたので再読。
むしろ, ストーリー・セラーでこの作家にハマり, この本を手に取ったわけで。
どのストーリーもすごく心をぎゅっと締め付けられるのだけど, 昔どこかで感じた人に触れた温もりとか, 家族という存在自体の温かみを再認識できるお話で好き。
そして, 最後の最後には, 独立した3つのストーリーが1つの物語を紡ぎ出す。
この流れもまた素敵。
個人的には, 真子ちゃんと莉子ちゃんのお話が心にぐっきた。
私には兄弟も姉妹もいないから, 莉子ちゃんの気持ちは残念ながら分からないのだけど, これから家族を守っていく身として, 上の子はこういうことにも -
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道尾秀介作品らしい、もの悲しい雰囲気が漂いつつも最後には心温まる物語だった。
なんのために生きるのか、生きている間になにを遺せるのかという問いは、誰しも一度は考えたことがあるだろう。しかし、なにかを遺したと自覚できるほど、誰かに影響を与えるということは難しい。例え影響を与えていたとしても、与えられた側から伝えられなければそのことに気づけないからだ。
そんな中で、本作では絵本を中心に描かれている。物語を作ることを勧める人、絵本を作る人、絵本を読む人、それぞれが影響を与え、与えられている。映画でも小説でも漫画でも、例え作者が意図していなかったとしても、物語とはただ面白いだけのものではなく、人生を大 -
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真備&道尾シリーズ初の短編集ですが、ホラー色は影を潜め一遍ごとに違った色が楽しめる五編が収められています。
〈流れ星の作り方〉
旅先の夜、散歩に出た凜は一人の少年と出会います。少年は二年前に起きたという、彼の友達の両親が殺された未解決事件について語り、「犯人がどうやって逃げたかわかる?」と尋ねるのですが…
唐突に訪れる幕切れと息詰まるような余韻が印象的で、夏目漱石の「夢十夜」の一遍を彷彿とさせるものがありました。
〈モルグ街の奇術〉
とある小さなバーのカウンターでくつろぐ真備と道尾に、かの奇術王ハリー・フーディーニの曾孫と名乗る男が突然話しかけてきます。
右の手首から先がないその男 -
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不可能犯罪ばかり起きる架空の街
「蝦蟇倉市」を舞台に、
五人の人気作家が書き下ろした短編集。
SFやファンタジーでは時々見受けられる
「シェアードワールド」というものらしい。
街のどこに何があって、市長はどんな人で、
という設定は作家陣がアイディアを持ち寄ったとか。
そのため作者が違っても、街の描写などは共通点があって
何というか「安心して読める」(^ ^
でもやはり作者によって切り取るポイントや目線、
事件の展開や「謎解き」のプロセスは違い、
何より文章の温度・湿度・テンポ感など
文体の違いも楽しめる(^ ^
しみじみとした余韻が残るもの、
「んなアホな」とツッコミたくなるもの、
ふわ -
Posted by ブクログ
本格探偵物語と云う括りが余りにも狭義に陥っていまいかと危惧する。
この作品も然り、本格推理なのだが探偵と謎解きに力点が置かれていないからだろう!
探偵にこだわり続ければ本格は旧態依然で小説の末期を見るだろう!
現実の事件の方が動機のない殺人や衝動殺人が多い。人間性がかけ離れた事件の多さは目に余る!!
道尾の作品では取材力と共に、登場人物が良く描かれている。
本来、本格は人間の心理や行動に多大の力点を置いている。ホームズもエラリーもアガサの探偵達も大学教授並みの知識と洞察力を武器としている。だからこそ本格小説と言える。
最近の作家は読み応えのある文体で推理小説を書く。謎解きストーリー展開では、物