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幼なじみ・サヨの死の秘密を抱えた17歳の私は、ある女性に夢中だった。白い服に身を包み自転車に乗った彼女は、どこかサヨに似ていた。想いを抑えきれなくなった私は、彼女が過ごす家の床下に夜な夜な潜り込むという悪癖を繰り返すようになったが、ある夜、運命を決定的に変える事件が起こってしまう――。幼い嘘と過ちの連鎖が、それぞれの人生を思いもよらない方向へ駆り立ててゆく。最後の一行が深い余韻を残す、傑作長編。
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Posted by ブクログ
さすが道尾先生というか、このもどかしさとやりきれなさから更にずぷりと沈め込まれるような痛み、心グサグサやられてしまう。毎回しんどさのメーター振り切れるんじゃないかってくらいなんだけど、これがクセになるんだっ。やめられない重痛の魅力。 主人公の床下の行動は乱歩作品みたいな変質っぷりだなぁと引いてしまい...続きを読むましたが(笑) タイトルへの繋がりが出てくるたびにいつも成程、と息が漏れます。こんな自分が嫌なのに、嫌だから更に上塗りしてまた嫌だなと嘆く。誤魔化しながら、言い訳しながら、欲に手を伸ばして。主人公のみならず、自分までグサグサ刺される。 重なる嘘は、どれがどこから何が嘘で真実だったのか。その明確な答えはないまま、曇天の心にずっと小さな痛みの塊を感じながらの終幕は重い余韻。 妊婦からゾウ、蛇、球体と表す流れが好き。主人公が球体の内部に感じたものに、ずっと包まれていたいか否か。やはりはっきりと答え難い。
「あのころ世界には、大人と子供しかいなかった。男と女なんてなかった。両親や乙太郎さんや逸子さんは単に大人で、自分たちは単に子供だった。」
若さ故の過ちと言えど決して取り返すことのできない過ちを犯したと後悔する友彦、そして痛みを抱えたまま人生を過ごす人達。 人であるが故の悲しさの様な物がひしひしと伝わって来て乙太郎の死には泣かされました。 サヨ、智子も怖さを潜んでいたけれどもしかして本当に怖いのは始終、優しさを携えていたナオだった...続きを読むのかもしれない…。 それがたとえ他人を想う為の嘘だったとしても。 「女って、1つじゃないのね」 智子がつぶやいていた言葉が全てを表わしていたのかもしれません。
切ない。 ナオが結婚して、一応幸せ??になったんかな。 ナオが幸せになって欲しかった。ぜったいナオはお母さん似。
大どんでん返しがあるのかなと思ってたけど、普通に良い話だった。 星の王子さまの、うわばみが象をこなしているシーンの引用や、のみすけと話しているシーンの引用が妙に心に残る。 乙太郎さんの不器用な優しさとあるシーンでの醜さが同居した感じがリアルだと思う。
皆嘘を内に抱えながら生きている。保身のための嘘もあれば救おうとしてついた嘘もある。嘘で作られたドームの中で、いつの日かやってくる救いを待っている。物語の終わりは雪で、まだ救いが来ていないことを示しているってことなのかな。。
「道尾秀介」の長篇作品『球体の蛇』を読みました。 『鬼の跫音』、『龍神の雨』に続き「道尾秀介」作品です。 -----story------------- あの頃、幼なじみの死の秘密を抱えた17歳の私は、ある女性に夢中だった……。 狡い嘘、幼い偽善、決して取り返すことのできないあやまち。 矛盾と葛...続きを読む藤を抱えて生きる人間の悔恨と痛みを描く、人生の真実の物語。 1992年秋。 17歳だった私「友彦」は両親の離婚により、隣の「橋塚家」に居候していた。 主人の「乙太郎さん」と娘の「ナオ」。 奥さんと姉娘「サヨ」は7年前、キャンプ場の火事が原因で亡くなっていた。 どこか冷たくて強い「サヨ」に私は小さい頃から憧れていた。 そして、彼女が死んだ本当の理由も、誰にも言えずに胸に仕舞い込んだままでいる。 「乙太郎さん」の手伝いとして白蟻駆除に行った屋敷で、私は死んだ「サヨ」によく似た女性に出会う。 彼女に強く惹かれた私は、夜ごとその屋敷の床下に潜り込み、老主人と彼女の情事を盗み聞きするようになるのだが…。 呑み込んだ嘘は、一生吐き出すことは出来ない―。 青春のきらめきと痛み、そして人生の光と陰をも浮き彫りにした、極上の物語。 ----------------------- 「道尾秀介」が、初めて「ミステリーではない」ことを意識して執筆された作品らしく… ちょっと物足りなさを感じましたが、『龍神の雨』と同様に、うまーくミスリードさせられ、物語が二転三転する展開だったので、序盤から終盤まで緊張感が途切れず、愉しく読めました。 父親が家族に全く感心のないことが原因で両親が離婚… 父親と暮していた「友彦」は、父親が東京へ転勤した際、一緒に東京へ行くことを拒み、幼い頃から親しくしていた隣家の「橋塚家」に居候して高校生活を送っていた、、、 「橋塚家」の家族は、白蟻駆除の仕事をしている父親「乙太郎」と娘の「ナオ」の二人… 7年前、キャンプ場でテントが火事になった事件で「乙太郎」の妻「逸子」は亡くなり、顔に大火傷を負った「ナオ」の姉「サヨ」は、事件後に自殺していた。 「友彦」は、小さい頃から「サヨ」に憧れていたが、火傷を負った「サヨ」に対し、憐れみや同情の気持ちが強くなり、その気持ちを「サヨ」に話した直後に「サヨ」が自殺したことから、自分のせいで「サヨ」は自殺に追い込まれたと思い、そのことは誰にも言えず、自分の中で抱え込んでいた、、、 土日に「乙太郎」の仕事を手伝い、白蟻駆除や点検で家々を訪ねるうち、「友彦」は「サヨ」に似た女性「智子」と出会い、彼女に強い魅力を感じた「友彦」は、夜な夜なその屋敷の床下に忍び込み、「智子」と屋敷の老主人「綿貫」との情事を盗み聞きするようになる。 そんなある夜、「友彦」が、いつものように床下に忍び込んでいたところ、屋敷が火事になり「綿貫」は焼死… 床下に「友彦」が忍び込んでいたことを知っていた「智子」は、自分を「綿貫」から救うために「友彦」が放火したのだと思い込み、二人の関係は急速に親密になっていく。 「智子」の勘違い… そして、それを否定せず、「智子」に近付きたいがために、自分がやったように仄めかす「友彦」、、、 これが悲劇の始まりになるんですよねぇ… この後は、暗く哀しい展開が続きます。 「智子」は、「友彦」を守るために「乙太郎」を持ってしまい、「友彦」は、その現場を目撃、、、 さらに「智子」は、7年前のキャンプ場の火事は自分の煙草の不始末が原因と当時の教師「綿貫」に信じ込まされ、身体の関係を強要されていたことを告白… 「友彦」は、「智子」のせいで「逸子」が亡くなり、「サヨ」が自殺したことを知り、「智子」を罵倒して、彼女の部屋を後にする。 思いやりの嘘や狡猾な嘘、同情に満ちた言葉、怒りの感情を抑えきれない言葉、そして胸に秘めた隠された事実… これらの言葉が相互に作用して、複雑に交錯、、、 「智子」は自ら命を絶ち… と、負の連鎖を生み出すんですよねぇ。 終盤では、「ナオ」の証言から、キャンプ場の火事は、「智子」のせいではなく、「サヨ」がテント内で花火に火を点けたことや、「サヨ」の自殺は「友彦」の同情とは関係なかった… ということが明らかになり、「友彦」は「ナオ」と結婚・妊娠と、二人の幸せな生活を予感させるエンディングでしたが、、、 これも、「友彦」のことを自分のものにしたい「ナオ」の嘘だったのかもしれない… という、微かな不安を含んでおり、読み手によって、色んな解釈の仕方のある物語だったと思います。 複雑な余韻の残る作品でしたね、、、 この作品には、嘘を抱えた人間がたくさん出てくるのですが、良かれと思った嘘のせいでお互いを思いやる気持ちにズレが生じて、すれ違ってしまう… 本心でぶつかることを恐れたことにより誤解が生じているんですよね。 これって、事の大小はあるけど、現実世界では日常茶飯事として起こっていることなので… 身近な自分の行動に置き換えて、一つひとつの言葉の大切さや、影響の大きさについて、考えさせられました、、、 摩擦を恐れて誤魔化すばかりじゃなく、本音で、本心でぶつかることも必要なんだと改めて感じました。 本作品、ミステリ的な要素を残した、青春小説、恋愛小説として巧く仕上がっていると思います… 「道尾秀介」の新しい境地かな、、、 でも、個人的には、もっともっとミステリ色の強い作品を描いてほしいと思います。
幼なじみの死の秘密を抱えた17歳の「私」はある女性に出会い惹かれる。その時言えなかった些細な真実が誰かを傷つけるなんて考えもせずに…。 狭い世界でのたうち回る蛇のように、互いの嘘で傷つき傷つけあってしまう。最後の展開が救いだったのかはちょっと考えてしまうな。 終始釈然としない主人公に苛立ちながら、妙...続きを読むに人間臭さも感じてしまった。
読後、球体の蛇というタイトルに納得した。 主人公が見聞きしたものが嘘なのか、主人公が考えたことが嘘なのか、何もかもが信じられない。 曖昧なものが思いの繰り返しによって本当のようになっていく。 想像や思いの中で物語が動いていくので(回想ってことじゃない)、まさに球体に閉じ込められたようだった。 静か...続きを読むに進む出来事を不思議に眺めている、そんな気持ちで読み進めた。 その感覚もまた、球体を見つめているようだ。 最後の一行がとても印象的。 そもそも終盤も印象的。 奇妙な作品だったと思った。
95%読み終えるまでは割と平坦な展開だと思っていたけど、残り5%くらいのところでそういう裏があったのか、そういう嘘もあるのか、としびれさせて頂きました。タイトルの意味も最後の最後で理解し、味わい深いと感じました。
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