藤井光のレビュー一覧
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『闇に包まれた穴の底には、龍が横たわっているような気がした。(中略)年寄りたちの言うには、そうした穴は龍が冬眠をする穴ぐらだそうで、龍は夏になると穴からはいずり出てきて天空に飛び立ち、冬になると再び穴に舞い戻ってくるという。穴の付近の雪が解ける理由は、龍の吐く息が穴から噴き出してくるせいらしい。ぼくはその言い伝えを知っていたので、穴の底でひとりぼっちにさせられたとき、龍に食われてしまうんじゃないかと怖くてたまらなかった』―『ラシャムジャ/穴の中には雪蓮花が咲いている』
「絶縁」というテーマのアンソロジー。村田沙耶香が作品を寄せているというので読んでみたのだけれど、その他のアジア圏の作家の短篇 -
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ネタバレ真面目に怖すぎた。
現実と非現実の境って曖昧な作品って世の中にはたくさんあるけど、これは意図的に作為的に作られた場所にぐわっと連れていかれる。
怖くて読めないエペペみたい。
これは読んでしまったけど、それは漫画だったからだと思う。
どこに連れていかれるか分からへんなんて読んでても怖い。
しかもみんな、他の人になりきったりしてそれが普通になってて気味悪すぎた。
ロージーはどこへ行くのかも、最後めちゃめちゃ気になりました。
誰のことも本当かわからない訳じゃないですか。
おかしくなっても、当然すぎて寒気します。
異界みたいですよ、これ。
ヤバい。
ヤバいの読んでしまいました!!
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Posted by ブクログ
日本の作家と共作しませんかと問われた韓国の作家チョン・セラン氏が「アジアの若手世代の作家が同じテーマのもと短編を書くアンソロジーはどうか?」と編集部に逆提案。それで編まれたのが本書だとか。
今回のテーマは“絶縁”。人によって、国や地域によって、こんなにもいろんな“絶縁”があり、それぞれが自分だけの「生」に翻弄されながらそれでも生きていくしかないのだな…。誰かに代わってもらうわけにはいかないものね。
作品ごとに作者紹介に加えて訳者解説やあとがきがあるのがうれしい。世界が広がるような一冊でした。テーマを変えたり執筆者の顔ぶれを入れ替えたバージョンも読んでみたい! -
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Posted by ブクログ
憧れ、不安、不満、高揚、恐怖、恥、誇り、熱狂、狂乱……、南北戦争下の一兵士を通して描かれる、戦争下での兵士の心理の軌跡。
戦争と兵士たちを冷徹にそして距離を取って、まるで戦火の映像も、そして目には見えない兵士の心象すらも、ドキュメンタリーカメラで写すかのように、詳細に描き切っているように感じます。
戦場での英雄的活躍に憧れ、軍に入隊したヘンリー。母親から感動的な言葉をかけられるかと思いきや、戦闘になったら自分のことだけを考えるんだよ、と当ての外れた言葉をかけられ、イライラしてしまいます。
そんな彼ですが、家からの去り際に母が身体を震わせ涙を浮かべている姿を見て、自分の求めているものが恥ずかし -
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表題作「海の乙女の惜しみなさ」を筆頭に「アイダホのスターライト」、「首絞めボブ」、「墓に対する勝利」、「ドッペルゲンガー、ポルターガイスト」の五篇からなる短篇集。「私、俺、僕」と作品によって異なる人称に訳されてはいるが、英語ならすべて<I>。一人称視点による語りで全篇統一されている。もっとも、内一篇はアイダホにあるアルコール依存症更正センターに入所中の「俺」が外部にいる家族、知人にあてた手紙という形だ。
「私」の語りで語られる「海の乙女の惜しみなさ」は、掌編と言っていい短いスケッチのような章も含め、十の断章で構成されている。現代アメリカで広告代理店に勤める六十代の男が、自分の見てきたいろいろ -
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Posted by ブクログ
生きるということは、物語を紡ぎだすこと。
昨日があり、明日がある。
過去があり、未来がある。
そう僕らが素朴に信じられるのは、生きることに意味を与え、自分自身の物語を作り上げてゆく力があるから。
その場限りで消えゆく現在の集積に過ぎない生の中から、点と点を繋ぎあわせてストーリーを与えると、それは人生となり、より大きな歴史の一部になる。
それでも虚無に飲み込まれ、自分の物語を信じれなくなるときだってある。
本当はただ刻々と過ぎゆく“今”だけが生の本質に過ぎないのでは?
物語という虚飾を剥ぎ取れば、生には意味も目的もないのでは?
そんな暗い夜にも、僕らにはすがるべき多くの物語がある。ドーアの「