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Posted by ブクログ
『地下鉄道』でピューリッツァー賞フィクション部門含め様々な文学賞を総嘗めしたコルソン・ホワイトヘッドが、再びピューリッツァー賞フィクション部門を受賞した作品。
『地下鉄道』が強烈な作品だったため、さすがに前作は超えられないんじゃ、と勝手に訝って発売から大分経ってから読んでしまったが、これも力強い傑作だった。
黒人の差別の歴史はずっと続いているが、BLM運動が起きていた発売当時に読んでいたら、もっと印象深い読書体験になっただろうな、と少し後悔した。
本書は実際に起きたドジアー校という更正施設での虐待事件をモチーフにしている。
ニッケル校という少年の更生施設近くの土地から遺体が次々と発見される。
かつてニッケル校に在籍したことのある主人公のエルウッドがニッケル校に送られるまで、送られてからの生活、そこから出るまでが描かれていく。のだが、後半のある部分で仕掛けが施されてる。その仕掛けがあまりにも辛くなるものだった。
文学的に、こういう仕掛けは決して新しいものではないのだが、これが黒人の差別、その差別には黒人が自由になった時期よりも長い奴隷としての歴史、迫害、差別の歴史があるのだとわかっていると、この仕掛けにどういう意図があったのかが見えてくる。
自分は、これは決して忘れないというバトンであるという気がした。
Posted by ブクログ
著者の代表作『地下鉄道』は歴史改変小説という特殊なジャンルだった。そのためかなかなか世界観に馴染めず、先に実話を基にした本書から取り掛かることに。
読むだけの充実感がある反面、重い…。目に見えない重しがのしかかってきているようで、読み終えた瞬間に思わず息を吐き出した。
史実(それもつい最近明るみになった)とフィクション・過去と現在が巧妙に入り混じり、特に第三部からのストーリーの進め方には度肝を抜かれる。恐らく読後、一部の章を読み直さずにはいられなくなるだろう。
『地下鉄道』よりこちらの方が自分の肌に合っているかも。
「侮辱されるたびに野垂れ死にしそうな気分になっていたら、日々を生きていくことはできない」
舞台は1960年代前半のフロリダ州。アフリカ系アメリカ人の聡明な学生エルウッドは祖母との2人暮らし。ある時大学進学に向けてのチャンスに恵まれるがそれも束の間、無実の罪でニッケル少年院に送られてしまう。
少年院を出るには院内にて善行を積み、ポイントを稼いでいかねばならない。加えて、院内で横行する暴力や虐待に耐えてゆかねばならない。地獄のような日々の中、エルウッドはターナーという少年と出会い次第に友情が芽生えていくが…。
「少年たちは、あの学校に潰されさえしなければ、いろいろな未来に進むことができた。[中略]彼らには平凡であるという単純な喜びすら与えられなかった」
第一印象としては『ショーシャンクの空に』の少年院ver.っぽいと思ったが、精神が未成熟であるが故に彼らの恐怖がより身に染みて伝わってきた。(男同士の固い絆と収監された場所が「名ばかり更生施設」であることは共通していると思う) 用務員による壮絶な虐待により最悪の場合命を落とすことも少なくなかった。
これは何と近年閉鎖したアメリカの男子学校がモデルで、本書に登場する独房や拷問部屋も実在していたという。
本書では日常の一コマであるかのように描写されており、憤りよりもまず不気味さを覚えた。
「みんなが目を背けているということは、みんなグルだということだ」
学校の閉鎖に伴いようやく暴力・虐待の告発がされたというが、近年のヘイト事件を見る限りこうした問題は解決の兆しすら見えていない。差別意識はアメリカ国民の中にDNAとして刻まれている。更に差別された側には恐怖も刻まれる。
エルウッドは元々公民権運動に関心のある学生で、序盤では黒人デモにも参加していた。しかしニッケルでの体験を経て、後半では白人に助けを求めるようになる。「究極の良識」が人々の心に刻まれていると信じ、望みを賭けたのだ。
今思えば「外に味方がいるエルウッドだから踏み出せた」とも言える。
でも人種を問わず世間の誰かが「おかしい」と共感してくれるだけで、その人の「究極の良識」を信じてみようと思えるのかもしれない。「自分には味方がいる」と思えれば、行動する勇気が湧いてくるのかもしれない。
つまりは、まだまだ綺麗事を諦める時ではない。
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