あらすじ
全米図書賞最終候補作にして、ニューヨーク・タイムズ・ベストセラー。『すべての見えない光』のピュリッツァー賞作家が、本と物語、そして図書館を愛するすべての読者に贈る最新長篇。
紀元一世紀に書かれたギリシャの散文物語『天空の都の物語』。そこには、ある羊飼いが空にある理想都市に旅をするも、やがて地球に帰還するというストーリーが描かれていた。『天空の都の物語』は訳され、欠けた部分を補われながら、時代と場所を越えて人々をつなぎ、彼らの心の灯となっていく。
15世紀、陥落を前にしたコンスタンティノープルで生きる少女。現代アイダホの図書館で、テロに巻き込まれる老人。未来で、人類が生存可能な新たな惑星を探す宇宙船に乗る少女──
危機が迫る中、『天空の都の物語』が彼らに伝えた「語り継ぐ意味」とは。
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Posted by ブクログ
700頁以上もある本だけれど、物語三分の一辺りから一気に読み通してしまった。しばらくぶりに、心から没頭した本だった。年始からこういう本に出会えて、幸せだなと思う。
年代も背景も違う3つの物語が、ひとつの物語を通じて繋がっていく壮大さと緻密さ。主人公の1人など宇宙船に乗っているというのに話運びに違和感がない。
過去を、過去を語るものを尊重し、興味をもち、理解しようと努めなければ見えてこないものがきっとある。未来を見据えることは、本当は同時に過去も見つめることなのだと、現在は、私でない誰かの積み重ねでできていて、誰かが作らねば生まれなかった、誰かが守らなければ残っていなかったものだ、と。そんな、当然でありながら今は忘れられがちなことを美しい物語で諭された気がした。
Posted by ブクログ
生きるということは、物語を紡ぎだすこと。
昨日があり、明日がある。
過去があり、未来がある。
そう僕らが素朴に信じられるのは、生きることに意味を与え、自分自身の物語を作り上げてゆく力があるから。
その場限りで消えゆく現在の集積に過ぎない生の中から、点と点を繋ぎあわせてストーリーを与えると、それは人生となり、より大きな歴史の一部になる。
それでも虚無に飲み込まれ、自分の物語を信じれなくなるときだってある。
本当はただ刻々と過ぎゆく“今”だけが生の本質に過ぎないのでは?
物語という虚飾を剥ぎ取れば、生には意味も目的もないのでは?
そんな暗い夜にも、僕らにはすがるべき多くの物語がある。ドーアの「天空の都の物語」でも、極限状態の人々を救い、照らしてくれるのは、古い古い物語だ。
それは英雄の勲でも、人類の叡智を集めた書でもない。
滑稽で、愚かさが故に厄介ごとを次々と引き寄せる羊飼いのお話。あきらめることをしない男のお話。決して希望を捨てないお話だ。
過去から未来へと、「ギリシャ語による古い物語」が失われてしまわないように繋いでゆくというドーアの「天空の都の物語」のプロットは、本を愛する者として、胸に響く。
古えから託されてきたものを次世代へ繋げること、未来へ伝えること。だが、より大切なことは、「自分のためだけの物語」をテクストに重ねてゆくことなのだろう。
一つの物語が無数の物語に育つ。
とても素敵だ。
“生きるためには他の人々が死なねばならない、と男たちはどうやって自分を納得させるのか。”
“生を享けた子どもの中で、あいつらを出し抜いて、あいつらより長く生きて、あいつらから逃げ切れるとしたら、それはあんただ。まだ人生が待っている。”