藤井光のレビュー一覧

  • ガザ・キッチン パレスチナ料理をめぐる旅

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    写真が美しい。料理とともに、それを教えてくれたひとりひとりの人たちの生活が紹介されている(この人たちは今も生きているのだろうか)。彼らは数字ではない。わたしたちと同じように、少しでも今日が楽しい日になるよう、おいしいごはんを作っている。

    それをずっと忘れないための料理本。

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    2025年11月27日
  • 絶縁

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    絶縁という言葉が胸に刺さる物語です。
    特に村田沙耶香の短編は、日常の中で人と人との距離がどんどん遠くなっていく様子を、まるで冷たい風が吹き込む部屋のように描いています。私たちの生活にも似た閉塞感が漂い、そこから逃れたいけれど抜け出せないジレンマがリアルに感じられました。
    特に「普通であること」の意味を改めて考えさせられ、登場人物の孤独や痛みがまるで身近な誰かのつぶやきのように響きます。社会との絶縁、それに伴う心の痛みや喪失感を繊細に表現し、自分の周りの人間関係を振り返るきっかけにもなる一冊です。
    すごく後味悪くて好きです。

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    2025年10月19日
  • 血を分けた子ども

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    読み始めて数行
    海外SFってこういう感じか…意味がわからんぞ…
    と挫折しそうになったけど、終盤には夢中で読んでいた。
    短編小説+エッセイなので、私のような初心者には最適だったと思う。

    しかも、有難いことに話のひとつひとつに作者あとがきがある!
    作者の尽きない興味とそこから物語を生み出す力に脱帽しながら読み進められるのもこの本の魅力。

    普段は短編苦手なんですが、
    この本は短編の良さが詰まっていると思う。

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    2025年10月14日
  • 絶縁

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    「絶縁」をテーマに、アジア各国の若手小説家の短編を集めた本。めちゃくちゃ面白かった。

    最初に柚木さんの短編でガツンとやられ、東京タワーに似た色合いの鉄塔を見ると少しゾッとしてしまうようになった。
    各国の性質がかなり色濃く出ていて…これからアジアの文学を読んでみたいと思った。

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    2025年09月07日
  • 物語ることの反撃 パレスチナ・ガザ作品集

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     2013年、ガザ・イスラーム大学の教員リフアト・アルアライールと彼の学生たちが、2008年12月~2009年1月にかけて行われたイスラエルの軍事侵攻「キャストレッド作戦」をガザの側から小説として記録した23篇の短篇とショートショートを収める。原著は2014年に米国で刊行、日本語訳は2024年刊行の新版にもとづく。編者のリフアト・アルアライールは2013年12月にイスラエルのミサイル攻撃で殺害され、新版の刊行時では本書の執筆者6名と連絡が取れていないという。
     
     原著の序文でアルアライールは、パレスチナの人々と物語の特別なつながりについて語っている。「物語は、人間その他すべての経験を超えて生

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    2025年09月05日
  • すべての見えない光

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    "絶望は長くはつづかない。マリー=ロールはまだ若く、父親はとても辛抱強い。彼は娘を安心させる。呪いなどない。悪運や幸運はあるかもしれない。それぞれの日が、いい日か悪い日かに、わずかに傾くことはあるかもしれない。だが呪いはない。" (p.40)

    "この世界は、なんと迷路に満ちていることか。木々の枝、線条細工のような根、結晶の基質、父親が模型で再現した町の通り、アクキガイの貝殻についた小さな結節にある迷路、カジカエデの樹皮にできた迷路、ワシの羽の空洞内部の迷路。なによりも複雑なのは人間の脳だよ、とエティエンヌはよく言っていた。存在するなかで、もっとも入り組んだものか

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    2025年03月27日
  • すべての見えない光

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    その光は波であり、海であり、ラジオだ
    すべての事物が反射する可視光線とは別の、見えない光
    それは命であったり、希望であったりする
    第二次世界大戦下のフランスとドイツ
    それぞれに生きる人々
    そこは混沌として、明日がみえず、望みは断ち切られ、人々の命は消えていった
    “見えない”ことは少女の盲目だけでなく、世界に溢れる不可視なものと同時に、その時代性も指している

    そこにある綺麗なものと醜悪なもの
    それらは同時に並立し、簡単に反転する
    技術の軍事転用や宝石、人の心
    すべてが簡単に裏切っていく
    しかし戦争をある種の壮麗さと残酷さを同居させるように描きながら、物語には救済を用意しない
    それはアンソニー・

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    2025年03月08日
  • 血を分けた子ども

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    ネタバレ

    素晴らしい………
    短編集の構成がいい。作家の世界がよくわかるし、短編ごとにあとがきがついていて制作背景を教えてもらえるからいろんな視点から何度も味わえる。
    挟まれるエッセイもグッとくる。著者のように生きたい
    短編それぞれも最高〜〜〜。全ては語られないから、地球外生命体や病によって変容してしまった世界が少しずつ明らかになっていくところが緊張感ある。結果のハッピーバッドではなく、いつだって道半ばでプロセスのドラマを見せてくれる。

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    2025年02月09日
  • すべての見えない光

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    詩情豊かな描写、それに訳文の美しさに心が躍る。プロットの巧みさに唸る。ストーリーの行き着く先に固唾を呑む。ページを捲り続ける。読み終わった後にはそれらを合わせた以上の感動が残る。
    人はときに残虐で歴史は残酷だけれど、そこから掬い上げられた人々の物語は、やさしさをもって語られる、そこにもある、あったはずのやさしさが語られる。そこには光が差している。そして、その光のなかに希望がある、そう思いたかった。とても素晴らしい小説を読んだ。深くため息をつく。

    心身が草臥れているときは、あまり本がうまく読めないのだけれど、それでも本当に素晴らしい小説を読みはじめてみれば、「読書は我を忘れさせてくれる」。時代

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    2025年02月07日
  • すべての見えない光

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    今まで読んだ本の中でベスト5に入ると思う。3日くらい余韻に浸ってた。
    フランスで父親や周りの人に愛されて育つ盲目の少女、ドイツの養護施設で過ごす賢い少年、2人が否応なく戦争に巻き込まれていく。物語は静かに進む。美しいけれど残酷で、ときに人が心を失ってしまう世界。でも光はある。いつか、読み返したいと思う。

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    2025年02月05日
  • すべての見えない光

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    銃が勝った、いつものことだ!

    全身に響く本だった。泣きすぎて二重が消えた。
    美しいフランス、ドイツ、ロシアの情景を通じて盲目の少女と、小柄な少年、周りの優しい人達が描かれる。
    文章はとても平易でやさしい。
    そしてその優しい言葉で、戦争でその人達が何もかも失う過程を容赦なく見せられる。
    戦争は誰も勝たない。アメリカもイギリスも勝っていない。
    勝ったのは銃、大砲、手りゅう弾、原爆、暴力。
    負けたのは全ての人。鳥が好きなフレデリック、仕事を愛するまじめな錠前主任、そばかすだらけの空想好きな少女、科学と発明に夢中な少年、正義感あふれる女の子、たくさんの優しい大人たち。全て負けた。
    美しいフランスの海

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    2024年08月22日
  • すべての見えない光

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    憧れの小説。
    圧倒的No. 1。
    確か翻訳大賞を受賞されていたと思うけど、言葉が表現が文章がとても美しくて、内容と文章の美しさに感動して泣いた、そんな本は初めて。
    この小説は何にも似ていない。
    崇高で気品がある。
    読み返したいけど、それをするには覚悟がいる笑

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    2024年08月01日
  • すべての見えない光

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    時間軸や人物の視点が次々に入れ替わっていく、パズルのような構造の物語。第二次世界大戦を背景に、戦争が人々の人生を否が応でも変えていってしまう中盤まで、膨大な文章量も相まって読むのにエネルギーを使う。しかし、それまでの伏線を回収しながら全ての話が繋がっていくラストの約100ページは圧巻。

    長編小説ではあるが、ノンフィクションの要素も、ミステリーの要素も、詩の要素も、神話の要素も散りばめられている。作者の大胆かつ緻密な構成と、優しく丁寧な人物描写が素晴らしい作品。いつかまた読み返せたらと思う。

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    2024年03月23日
  • ニッケル・ボーイズ

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    『地下鉄道』でピューリッツァー賞フィクション部門含め様々な文学賞を総嘗めしたコルソン・ホワイトヘッドが、再びピューリッツァー賞フィクション部門を受賞した作品。
    『地下鉄道』が強烈な作品だったため、さすがに前作は超えられないんじゃ、と勝手に訝って発売から大分経ってから読んでしまったが、これも力強い傑作だった。
    黒人の差別の歴史はずっと続いているが、BLM運動が起きていた発売当時に読んでいたら、もっと印象深い読書体験になっただろうな、と少し後悔した。

    本書は実際に起きたドジアー校という更正施設での虐待事件をモチーフにしている。
    ニッケル校という少年の更生施設近くの土地から遺体が次々と発見される。

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    2024年02月20日
  • すべての見えない光

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    余韻の残る読後感、心がしばらくこの小説の中を漂いました。深く考えさせられる内容であり戦争のむごさに震えましたが戦後の主人公達の生きる姿にも触れられていて少しホッとしました、また人が生きる強さも感じました、

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    2024年01月16日
  • ハーレム・シャッフル

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    「親が悪党だからって、子も悪党になるわけじゃない。そうだろ?」
    ハーレムにある中古家具店で働くアフリカ系アメリカ人のレイ・カーニー。近頃、彼の店にはガラの悪い男たちが出入りしていた。
    数々の罪を犯した父親とはちがい、カーニーはまっとうな人生を築くために誠実に働いた。愛する妻と娘もいる。だが、食べていくのは容易じゃない。時には、従弟のフレディがもちこむ盗品も売るしかなかった。
    ある日、フレディたちの起こした強盗事件にカーニーは巻き込まれる。そうしてギャングと悪徳警官が、カーニーに目を留めたのだった。
    妻子と自分を守るため、カーニーはならず者との裏取引を重ねていく。 
    結局、自分も悪党なのだろうか

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    2024年01月14日
  • すべての見えない光

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    第二次世界大戦下。フランス・パリの博物館で働く父と暮らす盲目の少女。一方は、ドイツの炭鉱町にある孤児院に妹と暮らすラジオに興味を抱く少年。

    国も境遇も違う、戦争が無ければ決して巡り合わなかった二人の人生が、時間軸を前後しながら短い断章として交互に語られていきます。次第に戦争に巻き込まれて行く盲目の少女と少年の心情。そして、二人を中心とした他の人との交流が丁寧に描かれていて、美しい文章表現と相まって話しに引き込まれていきます。

    ただ、読み終えた直後は、期待した結末ではなかったので、しばし呆然という感じでした。しかし、少し時間をおいてみると、この結末だからこそ、二人の邂逅がより輝いて感じられる

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    2023年12月16日
  • その丘が黄金ならば

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    ネタバレ

    面白かった。
    家族の話、そして2人残された姉妹の物語。
    悲しい現実の中で、家族のために生きること。ルーシーは最後に何を願ったのだろう?サムはルーシーの嘘に気づいているのかな?それとも海の向こうでルーシーが来ることを信じているのか?そもそも無事に海を渡れたのか。
    サムとルーシーが船に乗るために2人で旅をするシーンが心に残った。

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    2023年10月06日
  • 血を分けた子ども

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    「血を分けた子ども」kawade.co.jp/sp/isbn/978430… 前情報ゼロで読んだら想定外のジャンルだった(何回目) 知ってたら手に取らなかったからうっかり読めて良かった!社会問題や実際の事件に想起した作品もあるそうだけどとにかく想像力が爆発してる。トーンはディストピアなのに不思議と愛や温かみも感じる

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    2023年05月14日
  • 絶縁

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    『闇に包まれた穴の底には、龍が横たわっているような気がした。(中略)年寄りたちの言うには、そうした穴は龍が冬眠をする穴ぐらだそうで、龍は夏になると穴からはいずり出てきて天空に飛び立ち、冬になると再び穴に舞い戻ってくるという。穴の付近の雪が解ける理由は、龍の吐く息が穴から噴き出してくるせいらしい。ぼくはその言い伝えを知っていたので、穴の底でひとりぼっちにさせられたとき、龍に食われてしまうんじゃないかと怖くてたまらなかった』―『ラシャムジャ/穴の中には雪蓮花が咲いている』

    「絶縁」というテーマのアンソロジー。村田沙耶香が作品を寄せているというので読んでみたのだけれど、その他のアジア圏の作家の短篇

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    2023年04月12日