藤井光のレビュー一覧

  • ニッケル・ボーイズ

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    新たに大学で夢に向かって行こうとするエルウッドに差別という冤罪がおこる
    5セント(ニッケル)ぐらいの価値しかないと暴力により肯定され、人生を否定されてきたエルウッド
    キング牧師の言葉を胸に暴力でどん底な人生から自分を欺くのをやめてもう一度自分の人生を取り戻すために戦う
    エルウッドと共にニッケル校で親しくなったターナーと一緒に新たな人生に向かって生きていこうとするが…
    否定され続けた人がどうすれば人生を歩き直せるのかを知ることが出来る

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    2025年03月27日
  • 絶縁

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    「死」を「絶縁」としている作家さんが多く、たしかに「死」は究極の「絶縁」であるため、刺激的な作品がたくさんあった。

    直訳なのかわからないけど、すごく綺麗で新しい比喩が多く、読み物としてとても良かった。

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    2025年02月12日
  • サブリナ

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    不可逆的に、突然誰かを失うということのヒリヒリした寂しさが全ページに充満している
    紙で読む寂しい物語って大抵じっとり冷たい雰囲気なんだけど、これは独特の熱を帯びている

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    2025年01月20日
  • すべての見えない光

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    新潮クレストブックスで。

    なんとなく、自分の中で思っていた2024年の課題図書のうちの一冊。

    第二次世界大戦の最中のドイツ兵とフランスの盲目の少女。
    重なるはずのない二つの命は、危機迫る中、細い糸のような希望になる。

    なぜこんなに理不尽に何もかも奪われるのだろう。
    自由、親、家、興味の追究、食べるもの。
    戦争がすり減らすもののどんなに大きく容赦ないものか。

    息苦しさのなか、ほんのちょっとのピュアな部分。
    それだけが救い。
    善人でいるのが難しい時代。
    そんな時代は2度と来ないで。

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    2024年11月21日
  • 血を分けた子ども

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    一貫して語られるのは、愛と暴力の二律背反性だ。
    両立しえないように見えるその2つが奇妙に同居している状態にある。
    さらに多くの場合、あるひとつの関係が愛であり同時に暴力であるもの、人生に対する救済であると同時に著しく尊厳を踏みにじるものとして描かれる。
    そしてそれらは決して平衡状態に至らず、二項のあいだで振り子のように往復運動を続ける。

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    2024年09月26日
  • ニッケル・ボーイズ

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    いちど徹底的に尊厳を奪われた人間が自分の価値を取り戻すのがどれほど困難か。
    鞭の痛みがどれほどの苦痛を与えてその恐怖が思考に組み込まされるか、鞭打たれたことのない私達には絶対に想像できない。だがその想像を超えた痛みを植え付けられたニッケル・ボーイズを動かせたのは紛れもなくエルウッドの魂だった。蟹工船の森本がそうであったように。

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    2024年09月03日
  • すべての見えない光

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    違う時間、違う場所にいる登場人物たちの視点で語られる断片的な情景がひとつの物語に集約されていく描写に圧倒された。映画を観たというかもはや自分で撮ったように感じるくらい引き込まれた。

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    2024年04月18日
  • アクティング・クラス

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    大学生時代に演劇をやっていたので
    「演技をしたいと思う者は普通じゃない」というのがすごくわかる。わりと変な人間がやることだとわかっている。
    人生うまくいかないときに自分じゃない何かになりたいと思うのだろう。
    この作品で出てくる人物たちも一癖も二癖もある人間で、アクティングクラスにのめり込んでいく。
    現実との境界線も曖昧になっていく。
    少し人物の描き分けが日本と違うのでわかりにくかった……そのうちキャラクターがわかってくるけれど、難しかったように思う。

    それにしても……演劇をやっていたからわかる。こんなに一般人が急にエチュード(即興劇)をやって上手くいくわけがない……みんなプロの俳優さんですか

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    2024年03月13日
  • ニッケル・ボーイズ

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    著者の代表作『地下鉄道』は歴史改変小説という特殊なジャンルだった。そのためかなかなか世界観に馴染めず、先に実話を基にした本書から取り掛かることに。

    読むだけの充実感がある反面、重い…。目に見えない重しがのしかかってきているようで、読み終えた瞬間に思わず息を吐き出した。
    史実(それもつい最近明るみになった)とフィクション・過去と現在が巧妙に入り混じり、特に第三部からのストーリーの進め方には度肝を抜かれる。恐らく読後、一部の章を読み直さずにはいられなくなるだろう。
    『地下鉄道』よりこちらの方が自分の肌に合っているかも。

    「侮辱されるたびに野垂れ死にしそうな気分になっていたら、日々を生きていくこ

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    2024年03月09日
  • すべての見えない光

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    第2次大戦のフランスの盲目の少女マリー=ロールとドイツの機械に強い少年兵ヴェルナーの邂逅の物語です。マリー=ロールの物語とヴェルナーの物語が交互に入れ替わる形で著され、物語の先が徐々に明らかになっていく技法は小説独特で、盲目の少女の感覚と重なるようなイメージを読者に与えているような気がします。マリー=ロールの持つ宝石の行方も気になる読者も多いと思います。物語の終わりは、世代の移り変わりによって、消えゆく者の定めを著しているように思えました。傑作だとは思うのですが、過去に読んだ名作と比べてののめり込み度合の部分で星4つにしました。

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    2024年01月25日
  • すべての見えない光

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    まだナチス・ドイツが台頭してくる前の時代。
    パリの国立自然史博物館の錠前主任を父に持つマリー=ロール・ルブランは幼い頃に目木見えなくなる。手先が器用でさまざまな難解な鍵を作る父は彼女の為に正確な街の模型を作り、マリー=ロールはその模型を手で辿る事で街の構造を覚え、盲目でも目的地まで街中を歩けるようになる。

    一方でドイツ、エッセン地方のツォルフェアアインという炭鉱の街では炭鉱夫だった父を落盤事故で亡くしたヴェルナー・ペニヒと妹のユッタ。二人は孤児の集まる施設で育つが、ヴェルナーは科学に興味があり、ラジオを自作して遠い異国から流れてくる電波を受信して妹と二人で夢中になる。

    ナチスが台頭してくる

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    2023年12月16日
  • 絶縁

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    東アジア~東南アジアの若手作家による『絶縁』という共通テーマのもとに書き下ろされたアンソロジー。

    かなり読みごたえがある。
    読み終えるのに結構な時間がかかった。
    同じ時代を生きているのに、その国の政治・社会状況によりこんなにも違った世界が広がっているとは、想像もしなかった。そう、同じテーマのもとに書かれているにも関わらず。
    作家の個人的な傾向もあるだろうが、それとてその国の社会情勢に影響されることは少なくないだろう。

    村田沙耶香、チョン・セランの作品は、読みながら(村田沙耶香のはディストピアのようだったが)その状況や心理が掴みやすかったのは、やはり似通った社会構造の国の作家だからだろうか。

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    2023年06月17日
  • 絶縁

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    正直、難解なものも多く(特に燃える)、途中で断念しそうだったが、「穴の中には雪蓮花が咲いている」が素晴らしくて、読んでよかった〜と思った。チベットが中国なことも知らなかかった無知な私だが、ラシャムジャさんの他の作品も読んでみたい

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    2023年06月02日
  • 絶縁

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    「絶縁」がテーマだからどの作品も薄暗い雰囲気だった。けどほのかに温かみも感じる作品が多かった。(特に、『穴の中には雪蓮花が咲いている』という話が最もそれ)
    全然読んだことないような国の作家さんたちの作品が読めてよかった。国が違うだけで雰囲気が全然変わる!

    そもそも村田沙耶香さん目当てだったからだけれども、やっぱ村田沙耶香さんは圧倒的だ〜…
    読者をピシャリと閉め出す感覚がくせになるよね

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    2023年04月29日
  • 絶縁

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    アジアの作家の豪華ラインナップ。村田は相変わらずで、たまに読むとそのヘンさが心地よい。ハオ・ジンファンの作品は、彼女らしい寓話だがやや月並み。チョン・セランはさすが。こういう、ストレートに苦いテイストの作品も書くんだと思った。あとよいと思ったのは、ベトナムのグエン・ゴック・トゥと台湾のリエン・ミンウェイの作品。こうしてみると結局、日本と距離的に近い国々の作家に共感しやすいのかもしれない。

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    2023年03月03日
  • サブリナ

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    ・面白かった。ぺージをめくる手が止まらなかった。(そういうタイプの漫画では無いと思うけど)
    ・コマ割り均一になっていて、それが映画のフレームを思わせた。
    ・キャラクターがイラストチックである種記号的?な書き方をされていたので、逆に想像の余地が多くなった気ごした。
    ・そう、(面白い)映画を見ている気持ちだった。
    ・やりきれない…何ともおぉ…という余韻の作品だった。
    ・ラストシーンが良い
    ・前情報をあまり入れていなかったので、こんな話だと思わなかった。

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    2022年12月20日
  • デカメロン・プロジェクト パンデミックから生まれた29の物語

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    短編小説になると、自分の場合各話の背景を探るのにいちいち時間を要してしまう。
    しかし本書に関しては、その心配をする必要はない。どの話の背景もパンデミック中の出来事だから。

    1348年ペストから逃れるため、フィレンツェ郊外に逃亡した男女による創作話をまとめた『デカメロン』に倣い、21世紀を生きる計29の作家が本書のために29の物語を提供した。アメリカをはじめ、英語圏でも評価を得ている他言語の作家も参加しており、なかなかに国際色豊かだった。いつものように、心に引っかかった何篇かを引っ張り出したい。

    思えば2020年の惨めな生活を振り返らないまま、今日まで来てしまった。当時の自分のみならず、似た

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    2022年11月01日
  • 血を分けた子ども

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    全体としてとても面白かったけど、どれかピックアップして読むなら『血を分けた子ども』と『恩赦』がスリリング。

    以下はいくつか作品のまとめと感想。

    ●血を分けた子ども
    テラン(人間?)が、トリクというでっかい虫みたいな生き物に、奴隷的に囲われながら暮らしいている世界の話。過去は一方的な支配だったらしいが、今は共存の道を探る一派がトリクの政権で力を持ってるらしい。とはいえ、トリクはテランの体に卵を産みつけて幼虫を孵化させないと繁殖できず、そのためにテランの体が解剖同然の大きな傷を負うことは避けられない。テランの少年がその事実を目の当たりにし、大好きなトリクの子を自分の身に宿してあげるかどうか悩む

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    2022年09月29日
  • 血を分けた子ども

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    短編集5編、エッセイ2編、新作短編2編
    表題作のゾッとするような生理的に無理と感じる宇宙人との共存、生殖。そしてそこに生じる理解と絆のようなもの。人間に似た宇宙人ではなく全く思いがけない形で現れるバトラーの宇宙生命体に驚き、そのコンタクト相互理解の不毛と少しの希望が絶望感を救ってくれた。
    SFとしてはもちろん哲学倫理として面白い。エッセイもバトラーの書くことへの決意表明のようで力強い。

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    2022年09月08日
  • 血を分けた子ども

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    ネタバレ

    過去の短編とエッセイ、新作短編をまとめた本。
    表題作はネビュラ賞、サイエンス・フィクション・クロニクル賞、ローカス賞、ヒューゴー賞を受賞した、バトラーの短編の代表作。

    エッセイ二篇はどちらも「書くこと」について書かれていて、特に『書くという激情』はプリントして持ち歩きたいぐらい沁みる。大事なのは「粘ること。」

    短編の方では新作短編のどちらも好きだけど、特に『マーサ記』がよかった。神に選ばれたマーサが、人間にひとつだけ変化を与えて「いまほど破壊的でなく、より平和で持続する生き方」をするよう、神と対話しながら考える。到達するのが「眠るたびに見る夢に現実味を持たせ、個人の希望や興味を叶える夢を見

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    2022年09月05日