藤井光のレビュー一覧

  • サブリナ

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    ネタバレ


    陰謀論とパラノイアと誹謗中傷。
    グラフィックノベルにあまり親しみがないので新鮮。文字数は多く、ショッキングな場面は見せず、サブリナの遺体も見せず、真相というか匂わせやほのめかしが散見されており、ドア越しに包丁を持った緊迫する場面ですらコマ割りは小さい。遠景を撮るため、カメラの位置が少し遠くなったときに舞台の全面が垣間見える程度で、基本的には同じようなトーンの絵が続く。
    暗闇と夢の際の効果というか、描き方が秀逸。最後の部分のその効果の使い方も恐ろしく、また小気味良い。
    まだ読みきれていない部分もありますが、悲劇に投げ出された登場人物の喪失と再生を描いた、優れたグラフィックノベルでした。

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    2022年08月07日
  • サブリナ

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    これは色んな意味でヤラれる。後の時代に最もこの時代がビビッドに刻み込まれた作品として振り返られるのでは無いか。

    陰鬱な物語が時間の経過によって、少しずつ良くなっていくような希望を持つようにも読めるし、結局のところ真実を見つけることはできないと民衆を嘲笑っているようにも読めるし、それこそがサブリナにとってはハッピーエンドのようにも読めたり。シンプルなフレームと線で幾重にも読みを誘発する恐ろしい作品。

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    2022年07月29日
  • デカメロン・プロジェクト パンデミックから生まれた29の物語

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    短編集なので、読み飽きなくて◎
    コロナに直接的に関係する話から、そうでないものまで意外にもバリエーションがある

    疲れや緊張を和らげてくれる
    癒しのある話が多いのは、よかった

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    2022年07月08日
  • ターミナルから荒れ地へ 「アメリカ」なき時代のアメリカ文学

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     軽妙洒脱にアメリカ文学を語り、紹介していく。僕は、まるでラジオDJを聞いているような感覚を覚えた。

     奇想、大陸横断、戦争文学における父性の不在や英語を母語としない者による英語による創作。テーマごとに比較や比喩を織り交ぜ、本屋の書棚から抜き取り、手にもってみたくなるように読み解かれていく。

     僕が今まで読んだ本のうち、最も良かったと思う一冊『すべての見えない光』を翻訳されたのが、本書の著者でいらっしゃる。原作の持つ面白さはもちろんだが、翻訳者の藤井光さんの翻訳があってこその感動だったんだなと、強く思った。

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    2022年05月21日
  • デカメロン・プロジェクト パンデミックから生まれた29の物語

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    ネタバレ

    面白かった。

    ニューヨーク・タイムズマガジンが、現代のデカメロンを作ったらどうかと、作家たちに声をかけ、
    7月には特集号になったというから、驚きのスピードだ。
    ケイトリン・ローバーによる序文にこうある。
    _人生でも指折りに恐ろしい経験のさらに深く放り込まれてはきても、作家たちが芸術作品を作っているのだと分かった。略
    最良の文学作品とは読み手を遠くに連れていくだけでなく、自分たちがどこにいるのかをはっきりと理解させてくれるものなのだ_


    合わない作者ももちろんいたけれど、
    どれもこれも本当にあの2020年の春の事を書いていて、リアルだった。
    不安と、現実逃避と、希望とが入り交じって。
    短い作

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    2022年02月07日
  • サブリナ

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    エイドリアントミネからもっとキャラクターをキャラ以前の同質性に還元したフラットな絵柄。でも内面を抱えているから、複雑な感情を持った人物が棒人間の中に閉じ込められてしまった、みたいな感覚になる。そのグロさが心地いい。話はめちゃくちゃ陰謀論。ラスト1ページ目がわからない。自動販売機の「諦めないで」を信じるかどうかで話が180度変わってしまう。それっぽい感想ブログはどれもつまらなく、この作品の陰謀論を信じている側の人のブログはあり得ないぐらいスリリングで面白い。たびたび挿入される間違い探しが、そうした読みそのものを批評している。

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    2021年12月06日
  • サブリナ

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    グラフィックノベル。独特な絵のタッチと、終始静かなトーンで進む物語に(良い意味で)違和感を感じ続けた。陰謀論か…冗談みたいなことが本当に起きているのかも…まさか…と心がグラグラする終わり。好きです。

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    2025年03月31日
  • ニッケル・ボーイズ

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    繰り返し、世界の発信されてきて、今なお光が見いだせていない黒人差別。「地下鉄道」と同じ筆者?と感じる程に抑制された文体の謎が巻末説明で納得できた。圧倒されるのは、その抑えた空気故に地下で炸裂して迸るエネルギー。リアルという事実に勝るものはない。

    ホワイトヘッド50歳半ば、藤井氏40歳半ば、何れもアブラギッシュの人物が取り上げて世に問うているものはあった!

    アフリカにれてきて、今なお光が見いだせていない黒人差別。「地下鉄道」と同じ筆者?と感じる程に抑制された文体の謎が巻末説明で納得できた。圧倒されるのは、その抑えた空気故に地下で炸裂して迸るエネルギー。リアルという事実に勝るものはない。

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    2021年07月09日
  • ニッケル・ボーイズ

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    今でも解決できない人権問題の歴史
    カラー、経済力、権力、人間の根源
    にある欲望や、醜い部分、人類の歴史
    が始まって以来、繰り返している。
    なんとも悲しい。

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    2021年03月23日
  • ニッケル・ボーイズ

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    小説だけれど、事実を基にしている。2011年まで運営されていた少年院が舞台。主人公は何の罪も犯していない。ただ運が悪かっただけ。世界は変わると信じている。彼が、アフリカ系アメリカ人が、理不尽のただ中で生きていくことの苦さで、胃の腑が捻り上げられるよう。それでも、言葉の力が本を閉じさせない。
    物語の仕掛けが明かされたとき、それまで主人公エルウッドに絞られていた焦点が、一気に、理不尽に傷つき生きてきた人たち皆に合っていくような気持ちになる。
    人間はいつでも醜悪になれる。忘れてはいけない。

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    2021年01月31日
  • ニッケル・ボーイズ

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    アフリカ系アメリカ人のエルウッドは、ホテルの下働きをしている祖母に育てられた。従業員たちに可愛がられ、勉強もでき、先生から黒人が無償で学ぶことのできる大学への進学を勧められる。大学へ行くためにヒッチハイクした車は盗難車だった事から、共犯者として少年院に送られてしまう。そこはニッケルスクールという名前だったが、スクールとは名ばかり、虐待のまかり通る過酷な少年院だった。

    後年、閉校になったスクールから傷だらけの白骨が掘り出された事から、当時の院生に話題が集まる。
    スクールでの悲惨な日常と、不正を外部に知らせようとするエルウッドと、大人になった院生とが交互に描かれる。はたしてエルウッドはどうなった

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    2021年01月10日
  • ニッケル・ボーイズ

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    1960年代前半、公民権運動が徐々に活性化しつつあったアメリカを舞台に、優秀な学力を持つ黒人の高校生は無実の罪で少年院に送られる。そこは管理者である白人たちが物資の横流しで儲け、少しでも反抗する黒人少年を撲殺して無かったこととする地獄であった。

    この恐ろしい筋書きは空想のものではない。フロリダに存在し、100名以上の行方不明者を出したドジャー少年院がモデルになっている。施設が老朽化のために閉鎖され、暴力の痕跡も歴史に埋もれようとしていた中、ハリケーン後の敷地清掃で27名もの正体不明の遺骨が発見されたことによって、この少年院での恐ろしい暴力の実態が明るみに出ることとなった。

    本作『ニッケル・

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    2020年12月12日
  • サブリナ

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    一回読んだだけではまだよくわからないというのが正直な感想。アメリカ郊外と今の情報社会を描いた作品でまるで米国のサスペンスドラマといった趣き。

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    2020年06月05日
  • サブリナ

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    グラフィックだからこそ、無表情で信じがたいジョークを言ったり、人間同士のお互いを探り合っているちょっとした間がものすごく絶妙でゾクゾクした。私はこの本を、たまに眺めるヒーリング系素敵図鑑くらいに思って買っちゃったんだけど、そういうんじゃない。snsで繋がる、繋がる、繋がりこそこの世の平和!という空気、終わるかもな。また繋がらない世界が戻ってくるのかも。流行はまわるっていうし。そしたらそれでもいいなあsnsってその人のこと多面的に見えないから怖い、いいところだけ見せたり悪いとこだけ見えたり勘ぐったり。まるまるっと人を観察したいなあ。

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    2020年05月24日
  • サブリナ

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    ネタバレ

    マンガ、ではなくグラフィックノベルというらしい。確かに「小説をマンガ化」だったら、小説を読むよりわかりやすくなるのが普通だが、これは、そういうマンガ的なわかりやすさを徹底的に拒否している。
    まずキャラクターの描き分けも積極的にはしないし(だから慣れるまでは描かれているのがが誰だか分からない。特にカルヴィンが勤める空軍基地のメンバーを見分けるのに苦労する)、表情というマンガでは極めて大事なところも省略。顔立ちは皆同じ。ラジオの放送内容やメールの文章などが延々と文字だけ続くコマもあるし、努力しないと読めないマンガというのはめずらしい。これは、小説で書いた方が余程わかりやすかったのではないかと思われ

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    2020年02月22日
  • サブリナ

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    絵やコマが読みとれず、けっきょく人のレビューを見てそういうことか、と納得した感じ。情けなや。キャラが非常に見分けにくいのはわざとなのかな。たぶんそうなんだろうな。
    不穏な空気や閉塞感はたしかに伝わってきたけど。

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    2020年02月16日
  • サブリナ

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    ネタバレ

    グラフィックノベルとしては初めてブッカー賞にノミネートされたという話題の本。
    平凡な暮らしを送っていた女性 サブリナ が突然行方不明になる。
    彼女の恋人テディはそれがきっかけで引きこもりのような鬱状態になり、幼なじみのカルヴィンの家に身を寄せる。
    やがて、サブリナが殺されるところが撮影されたビデオテープが複数のメディア等に送られて失踪事件は急転直下誘拐殺人事件となり、犯人はサブリナの家の近くに住む面識もない青年で、彼も自殺して発見される。
    ビデオテープはネットに流出してしまい、それをみて根も葉もない解釈、荒唐無稽な陰謀説を唱える者まで現れはじめる。


    恋人の死に直面し、それを受け止めきれない

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    2020年02月02日
  • サブリナ

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    これ、世界のことが描いてあるよ、この今の世界のこと。
    殺人、フェイクニュース、SNSでの個人情報拡散、その他もろもろ。
    他人とは決してわかりあえないって強く強く確信した。

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    2019年12月26日
  • サブリナ

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    SNSのタイムラインをコマにしたり、軍のストレスチェック票で心理状態を共有したり、でも事件の核心は見せてくれない。読者は試される、見えているものだけで無責任な解釈を拡散する人なのか、全体をみていないことを認識する人なのか。

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    2019年11月12日
  • きっとあなたは、あの本が好き。 連想でつながる読書ガイド

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    作家別に紹介した読書ガイド。とても良心的だと思う。自分としては「コナンドイル」の章でピンチョンの新訳が出ているのを知ったのがよかった。希望としては、取り上げた作家が限らているのが残念なので、シリーズ化してくれるとうれしい。

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    2019年05月01日