藤井光のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
短編小説になると、自分の場合各話の背景を探るのにいちいち時間を要してしまう。
しかし本書に関しては、その心配をする必要はない。どの話の背景もパンデミック中の出来事だから。
1348年ペストから逃れるため、フィレンツェ郊外に逃亡した男女による創作話をまとめた『デカメロン』に倣い、21世紀を生きる計29の作家が本書のために29の物語を提供した。アメリカをはじめ、英語圏でも評価を得ている他言語の作家も参加しており、なかなかに国際色豊かだった。いつものように、心に引っかかった何篇かを引っ張り出したい。
思えば2020年の惨めな生活を振り返らないまま、今日まで来てしまった。当時の自分のみならず、似た -
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全体としてとても面白かったけど、どれかピックアップして読むなら『血を分けた子ども』と『恩赦』がスリリング。
以下はいくつか作品のまとめと感想。
●血を分けた子ども
テラン(人間?)が、トリクというでっかい虫みたいな生き物に、奴隷的に囲われながら暮らしいている世界の話。過去は一方的な支配だったらしいが、今は共存の道を探る一派がトリクの政権で力を持ってるらしい。とはいえ、トリクはテランの体に卵を産みつけて幼虫を孵化させないと繁殖できず、そのためにテランの体が解剖同然の大きな傷を負うことは避けられない。テランの少年がその事実を目の当たりにし、大好きなトリクの子を自分の身に宿してあげるかどうか悩む -
Posted by ブクログ
ネタバレ過去の短編とエッセイ、新作短編をまとめた本。
表題作はネビュラ賞、サイエンス・フィクション・クロニクル賞、ローカス賞、ヒューゴー賞を受賞した、バトラーの短編の代表作。
エッセイ二篇はどちらも「書くこと」について書かれていて、特に『書くという激情』はプリントして持ち歩きたいぐらい沁みる。大事なのは「粘ること。」
短編の方では新作短編のどちらも好きだけど、特に『マーサ記』がよかった。神に選ばれたマーサが、人間にひとつだけ変化を与えて「いまほど破壊的でなく、より平和で持続する生き方」をするよう、神と対話しながら考える。到達するのが「眠るたびに見る夢に現実味を持たせ、個人の希望や興味を叶える夢を見 -
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ネタバレ面白かった。
ニューヨーク・タイムズマガジンが、現代のデカメロンを作ったらどうかと、作家たちに声をかけ、
7月には特集号になったというから、驚きのスピードだ。
ケイトリン・ローバーによる序文にこうある。
_人生でも指折りに恐ろしい経験のさらに深く放り込まれてはきても、作家たちが芸術作品を作っているのだと分かった。略
最良の文学作品とは読み手を遠くに連れていくだけでなく、自分たちがどこにいるのかをはっきりと理解させてくれるものなのだ_
合わない作者ももちろんいたけれど、
どれもこれも本当にあの2020年の春の事を書いていて、リアルだった。
不安と、現実逃避と、希望とが入り交じって。
短い作 -
Posted by ブクログ
アフリカ系アメリカ人のエルウッドは、ホテルの下働きをしている祖母に育てられた。従業員たちに可愛がられ、勉強もでき、先生から黒人が無償で学ぶことのできる大学への進学を勧められる。大学へ行くためにヒッチハイクした車は盗難車だった事から、共犯者として少年院に送られてしまう。そこはニッケルスクールという名前だったが、スクールとは名ばかり、虐待のまかり通る過酷な少年院だった。
後年、閉校になったスクールから傷だらけの白骨が掘り出された事から、当時の院生に話題が集まる。
スクールでの悲惨な日常と、不正を外部に知らせようとするエルウッドと、大人になった院生とが交互に描かれる。はたしてエルウッドはどうなった -
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1960年代前半、公民権運動が徐々に活性化しつつあったアメリカを舞台に、優秀な学力を持つ黒人の高校生は無実の罪で少年院に送られる。そこは管理者である白人たちが物資の横流しで儲け、少しでも反抗する黒人少年を撲殺して無かったこととする地獄であった。
この恐ろしい筋書きは空想のものではない。フロリダに存在し、100名以上の行方不明者を出したドジャー少年院がモデルになっている。施設が老朽化のために閉鎖され、暴力の痕跡も歴史に埋もれようとしていた中、ハリケーン後の敷地清掃で27名もの正体不明の遺骨が発見されたことによって、この少年院での恐ろしい暴力の実態が明るみに出ることとなった。
本作『ニッケル・ -
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Posted by ブクログ
村上春樹/ルイス・キャロル/大島弓子/谷崎潤一郎/コナン・ドイル/J・R・R・トールキン/伊坂幸太郎/太宰治
どれかの名前にピンときたら読んでみてもいいかもしれない。
書評家、作家、翻訳家が10人。
ブコウスキーの訳者として知られる都甲幸治さんをホスト役にして1作家3人ずつの鼎談方式のブックガイド。
ブックガイド好きな上に本について語り合ってる人たちも好きな自分には楽しかった。
各テーマも興味深く、例えばキャロルは「あえて男三人で『不思議の国のアリス』を語る」とか太宰は「ダメ人間を描く小説の作者はダメ人間か」とか。
なるほど~と膝を打ちたくなるような考察もあって面白かった。いやあ、自分 -
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Posted by ブクログ
芥川賞や直木賞なんて世界の文学賞のうちに入るのだろうか?日本の作家が書いた日本語の小説しか対象になっていないのに。なんてことを思ったけれども、読んでみました。今年も話題になっているのは、もちろんノーベル文学賞。村上春樹さんがとるかどうか、メディアで騒がれました。この本を読むとわかるのですが、その根拠になっているのがカフカ賞。この賞をとった人が二人、ノーベル文学賞をダブル受賞しているんだそうで、まだ受賞してないのが村上春樹なんだそうです。カフカ賞はチェコ語の翻訳が一冊は出ていないと受賞できないそうで、村上春樹がとった2006年は『海辺のカフカ』が翻訳された年。タイトルがよかった?
そのノーベル -
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「アメリカ」が変化していること、がわかった。ヒスパニックやメキシカン、カリビアン(だったかな、カリビアンっていうのをわたしはドラマ「オレンジ・イズ・ザ・ニュー・ブラック」で知った)など移民が増えて、「白人」が少数になってきている、っていうのはきいていたけれども、そういう流れで「アメリカ文学」も変わってきているという。(ざっくりしすぎで、ちょっと違うかもしれないわたしなりのまとめですみません。)
そういう新しいアメリカ文学の紹介。
クラシックな流れをくむいわゆる普通の小説ではなくて、現代小説っていうのか、変わってる、奇想、とか、実験的なものが多い。
わたしはそういうのが苦手で、ほとんど読んでいな -