藤井光のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
WW2の時代。盲目の少女マリーとドイツの若い兵士・ヴェルナーのラジオを通した物語。
「空気は生きたすべての生命、発せられたすべての文章の書庫にして記録であり、送信されたすべての言葉が、その内側でこだましつづけているのだとしたら。」
印象に残った場面は、戦争が激化していく中でドイツ国内でフランス語を使うことをためらうエレナ先生。戦争終結後ユッタ(ドイツ人)がフランスへ行くとき、拙いフランス語を使うことでドイツ人とばれるのを恐れる描写の対比。
また、ユッタがフランスのサン・マロで見た銘板(あれは実在だそうです)。そこにドイツ人兵士の名前はない。立場が変われば見えてくるものも違う。
ただ、1つ1つの話が3,4ページで変わっていくので、ストーリーに入り込むことがうまくできなかった。炎の海というダイアモンドの話も浅い部分で終わった気がする。マリーの父は主要人物かと思いきやそうでもなく、ヴェルナーの妹・ユッタもそう。ちょっと物足りなさを感じた。 -
Posted by ブクログ
理想的で立派な「アメリカ文学」を追い求める時代は終わり、移民作家の台頭によって変化しつつあるアメリカの小説たち。〈ターミナル化〉と〈荒れ地化〉をキーワードに、翻訳者が新しい時代の小説の地図を描く文学ガイド。
グローバル化によって「テクノロジーと移動が生み出す世界、かたやそれと同時に進行していく不毛化という両極」に身を置きながら書かれた世界文学(アメリカに限らない)の特徴を、著者は〈ターミナル化〉+〈荒れ地化〉と呼んでいる。ターミナルが多様性のポジティヴな面を指しているとすれば(その分ビジネスライクでもある)、荒れ地はポストアポカリプスSFが現実化したかのような混沌であり、従来の価値観では育たなかった新しい芽が生えてくる自由さの象徴にもなっている。グローバル化をこのように言い換えるのは文学以外にも有効だと思い、三品輝起『雑貨の終わり』の感想にも援用させてもらった。
第Ⅲ部の「伯父さんと戦争」にまとめられているように、〈マッチョなアメリカとの別れ〉というテーマが全体に通底しており、2016年当時の空気が思いだされる。女性作家も取り上げられているけれど、フェミニズムやクィアな小説としてまっすぐ語ることはなく、多様化によってメインストリームに浮上してきたカウンターというくらいの扱い。〈荒れ地化〉した文学界でむしろ生き生きと芽を伸ばしている人たち、とは見なされているか。
そして藤井さんに限った話ではないのだが、個人的にユージェニデスの『ヘビトンボの季節に自殺した五人姉妹』について話すとき、語り手「ぼくら」の有害さに触れない評者が気になって仕方がない。全てが「ぼくら」の妄想かもしれない、とすることで彼らの暴力性に言及しているつもりなのかもしれないけれど、その妄想こそが現実の「姉妹たち」を傷つけ、犯したということを描いた小説だと私は思っている。あの小説に書かれたことをある時代特有の「切なさ」に還元されるなんて堪ったもんじゃない。 -
Posted by ブクログ
絶縁がテーマの短編集。
期待していた村田沙耶香さんの短編も良かったが、意外に他の作家さんの短編が気に入った。
幼なじみの少女と結構良い仲だったのに、結局その少女とは結ばれることなく、小さい頃の少女との会話を思い出す主人公の話(「穴の中には雪蓮花が咲いている」)は、自分の思う通りには世の中は進まないということ、あともう一歩踏み出せていたらという後悔などの主人公の気持ちが押し寄せてくる。ただただ切ない。
「絶縁」では、仲の良かった先輩夫婦と主人公が、ある出来事をきっかけに疎遠になるという話。そんなことで人は袂を分けてしまうものなんだな…と思うが、譲れない思想は皆それぞれ持っている。それがたまたま主人公は「遊び人ユンチャンを許すまじ」だったんだろうな。私はどちらかというと先輩夫婦の考え方に近い。芸能人の不倫等のスキャンダルって誰が面白がっているのだろうと思う。まあ、女性に恨まれるような人とはあまり近づきたくないけれど。