【感想・ネタバレ】ブリス・モンタージュのレビュー

あらすじ

全米批評家協会賞受賞作品

本書は、中国出身の米国作家リン・マーの長篇『断絶』に続く第一短篇集。前作は、移民の女性が米国のミレニアル世代の一員として根無し草的な生活を送るなか、パンデミックとゾンビという物語形式を借りて、グローバル資本主義の制度に組み込まれた人生の虚無感、今世紀の米国社会の空気を巧みに切り取ってみせた。
同様に若い女性を主人公とする本書においても、移民にとっての「ホーム」はどこなのかという問いや、醒めた距離感を保つ一人称の語り口など、マーの作風は前作から連続している。ただし本書では、人間関係における暴力や、存在の孤独という、マーの中核的主題がより前景化され、人と時代に対する鋭い観察眼と、物語を組み立てていく手腕の凄みが際立っている。
本書の評価は非常に高く、〈全米批評家協会賞〉と〈ストーリー・プライズ〉を受賞、『ニューヨーク・タイムズ・ブックレビュー』では、「予測不可能な展開を見せ、読了後も心に残る」と評され、短篇の名手としてもマーの才能を確かなものとしている。「ロサンゼルス」「オフィスアワー」「明日」ほか、不可思議な語り口と冷徹な観察眼が冴える8編を収録。

[目次]
ロサンゼルス
オレンジ
G
イエティの愛の交わし方
戻ること
オフィスアワー
北京ダック
明日
謝辞
訳者あとがき

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感情タグBEST3

Posted by ブクログ

⭐️4.0
久しぶりに面白い作品に巡り会ったなあ。
アメリカに住むアジア人の目線で、人種、ジェンダーなど織り込みながら、鋭い観察眼と軽妙な文体(これは翻訳者の力もあるが)に魅了された。
中短編で、作品によってSFチックなのもまたよい。さまざまなタッチの作品が楽しめて、一粒一粒味わう高級チョコのように、ゆっくり楽しみました。

0
2025年11月08日

Posted by ブクログ

短編集8篇
ひとつの情景から人生が顔を出す。心理描写が巧みでSFタッチの作品も違和感なく流れていく。
移民、暴力キャリアや成功などてんこ盛りで息苦しさも感じた。異世界と繋がる「オフィスアワー」、赤ちゃんの手が出ている(これ怖いんですけど)「明日」
が面白かった。

0
2025年05月08日

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