西尾維新のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ネタバレ理不尽と言える災難に見舞われて、それでも立ち上がろうとする親切守のことが気に入りました。不当な解雇に抵抗するためではなく、自分に落ち度はなかったか知るために今日子さんに依頼をする、その理由には真面目かと突っ込みたくなりました。アトリエの性質を今日子さんが異質と言った時、親切が理解できなかったことから、仕事に対するプロ意識みたいなものが強い方なのだと伺えます。
最後に今日子さんは親切を警備員として雇いましたが、いったい親切守のどこを評価したのか。自分は、やはり非常階段の件が決め手になったと思います。今日子さんとの約束通りに様子を見に来なければ階段から落ちる彼女を発見することはできなかったですし、その行動は今日子さんを守りたいという意思の証です。そもそもエレベーターを使わず階段を選んだのは、今日子さんをなぞらえての行動だったわけで、そこには彼女を見習う、もしくは尊敬の念があったと思われます。その辺りの内心を今日子さんは見透かしていたのかもしれません。
-
Posted by ブクログ
眠ると記憶がリセットされる「忘却探偵」こと掟上今日子(おきてがみきょうこ)が、数々の事件を原則1日で解決していく、というライトミステリー。
これまで西尾作品は読んだことはなく、本作もドラマで観ただけだったのだが、最近 AI(LLM)を使っていると、いつもこの「忘却探偵」のことが頭をよぎるので、原作も読んでみた。
最近の LLM を使ったツールやサービスは、過去の会話を記憶できるようになってきている。しかし、LLM 自体が新しい記憶(学習が終わった以降のユーザーとのやりとりの内容)を保持しているわけではない。ユーザーとのやりとりを記憶しているように見えるのは、ツールやサービスなどのアプリケーションが、それを「備忘録」として記録し、会話する度に LLM に送り込んでいるからである。
本作の今日子の場合、「備忘録」を自分の身体に油性ペンで書いている。そうしなければ、翌朝、自分が何をすべきかもわからないからだ(逆に、残さなければ完全に守秘義務が遂行される。それが彼女のビジネス上のウリになっているのだが)。
さらに言えば、LLM アプリケーションでは、ユーザーとの記憶の前に、「システムプロンプト」と呼ばれるアプリケーション開発者の意図が暗黙に埋め込まれる。それによって、AI が大枠としてどういう役割で動くのかが決まる(例えば、システム開発者なのか、英語学習の先生なのか)。
シリーズの1巻である本書では、今日子の過去はほとんど明かされおらず、「なぜ探偵をしているのか」という謎は残ったままである。その謎を解く鍵は、彼女に与えられるシステムプロンプトに隠されているものと思われる。
最後に、恋愛小説としての側面に触れると、語り部(ワトソン役)の隠館厄介(かくしだてやくすけ)は今日子に好意を抱いているのだが、次に彼女に合う時に毎回「初めまして」になってしまう、という設定が切ない味のスパイスとして効いている。
厄介と今日子の関係は、三上延著『ビブリア古書堂の事件手帖』シリーズの大輔と栞子の関係に近いものを感じた。『ビブリア~』が好きな方には本書もお薦めしたい。その逆も然りである。 -
Posted by ブクログ
巻き込まれ体質の主人公・隠館厄介と1日で記憶がリセットされ忘れてしまう忘却探偵・掟上今日子。
今日子さんには、今日しかない。
そんなキャッチコピーのミステリー。
正直に言おう、読まず嫌いだった。
表紙のイラストと過去にドラマ化しているという事実になんとなく忌避感があり、しばらく本棚で眠っていた作品。
読んでみたらさすが西尾維新、ページをめくる手が止まらない。
あっという間に第1話を読み切り、それ以降じっくりと時間をかけて最終話まで味わうことが出来た。
まず、キャラクターの設定が良い。
何故かいつも疑われる立場になってしまう厄介には自分の身を守るために探偵を呼ぶ必要がある。
気密性の高い仕事に就いていた場合、1日で全てを忘れてしまう今日子さんととても相性がいい。
そして何よりも事件の突拍子のなさ。
ファンには伝わるであろう圧倒的「西尾維新」らしさが全開で嬉しくなってしまった。
普段ミステリーを読まない層でもおそらく楽しめるライトな文体に、今日子さんという魅力的なキャラクター。
これは人気がでるはずだ。(実際続刊やドラマ化しているので当たり前なのだが…)
期待値を大きく上回ったこのシリーズ、ぜひ続刊も読んでみようと思う。