伊集院静のレビュー一覧
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購入済み
コロナのこの時期だからこそ
コロナのこの時期だからこそ、考えさせられるものがある。作者のように力強く生きることは、人それぞれだと思うが、周りの人々との距離感、付き合い方、そもそもの自分自身の生き方を改めて考える良いきっかけになった。
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鳥井信治郎が初めて起こした自身の店は<鳥井商店>で、事業が拡大して出資者も現れるような中で新たな店名を考えて<壽屋洋酒店>とし、戦後にウィスキーの商標にも使っていた<サントリー>という会社名にしたというのが経過である。一代で大きな企業を創り出した鳥井信治郎御本人を知る人達も非常に多い筈で、色々な挿話が伝わっていることと思われる。本作のような「一代記」という物語も、そうした伝わっている挿話、本当に在った出来事に大きく依拠しているのは間違いない。しかし…自身の夢を実現しようと奔走する「本作の鳥井信治郎」は、正に「小説の主人公」だ。「そこで、そういう具合にしてしまう?やってしまった??」というのが連発して痛快である。
旺盛な好奇心で知識や技芸の習得も早いような少年が、父や母、初めて奉公した店の主人の薫陶を受けた伝統的な価値観を大切にしながらも、「思い込んだら只管に!」と熱く物事に挑み、豪胆に事業を切り拓き、様々な危機も乗り切って行く男となって行く…そんな物語はとにかく面白い!
「そこで、そういう具合にしてしまう?やってしまった??」という青年事業家として奮闘している辺りの挿話は是非とも本作を紐解いて御愉しみ頂きたいが…作中で出て来る「鳥井信治郎」の様子で、敢えて取り上げてみたい事柄が在る。
鳥井信治郎をモデルにしたという劇中人物が登場したテレビドラマでも、劇中で「やってみなはれ!」を連呼していたようだが…本作の中でもそうなっている。自身で夢中になって事案に向き合う他方で、周りを鼓舞し続ける、そうやって先頭に立つという姿勢が、何やら酷く惹かれる。
そして作中に「母の教え」という“陰徳”という考え方が出て来て、作中の鳥井信治郎は、そういう考え方を説いた母に手を引かれて歩く小さな子どもであった頃から、少し知られた大きな会社の経営者という大きな社会的立場を有する人物になるまで、その“陰徳”というモノを重んじる姿勢は変わらない。“陰徳”というのは、困窮して物乞いをしているような人に小銭を与えるような施しであろうと、苦学生に奨学金を支給するようなことであろうと、「密かに黙って他者のために喜捨する徳」が大切であって、「敢えて礼を受けるまでもない」とする考え方だ。更にこういう考え方の派生したモノのように思うが、災害や戦禍で困っている懇意にしている人達や近在の人達を支援しようというような場面で「恩着せがましいこと」は断じて口にしないのだ。こういうような潔さに酷く惹かれた…
作中には、少しばかり歩き廻ってみたことも在る大阪の「往時の様子」が描かれていて些か面白いという一面まで在る。そして妻に先立たれ、後継者として恃みにしていた長男に先立たれるという不運、不幸にも見舞われるのだが、身近な家族と情の「深い部分」で強く結び付いているというような感じなのも好かった。
何れにしても、本作は「大きく社会や暮らしが変容し、様々な出来事が人々に色々な影響を与え続けていた」という時代を生き、懸命に成功を掴み取り、後継者達に更なる夢を託したという男に会わせてくれる作品だ。「何処となく漂って、拭い悪い“閉塞感”のようなモノ?」が感じられないでもない“今”だからこそ、「やってみなはれ!」を連呼して周囲の先頭に立って事案を強力に進めようとする主人公に出会えるというのは快いのだと思う… -
Posted by ブクログ
伊集院 静氏の書に何故 僕は引き込まれるのだろう。それは、優しさ、男らしさ、生き抜く厳しさを与えてくれるからであろう。
本書でも、至る所でそれを感じさせてくれる。
・勘違いとほうまん傲慢は、その人の成長をたちまち止まらせる。
・近しい人の死の意味は、残った人が幸せに生きる以外何もない。
・不安を解消するために(中略)一番イケナイのは、やろうとしていることを放り出すことである。
・生きる実践とは、生きているという真剣な現場である。
・・・これだけで、僕には相当なパワーを与えてくれるのである。
先月1月に病に倒れ 闘病中と思われる著者がまた強く戻ってくることを祈るばかりだ。 -
Posted by ブクログ
伊集院さんの作品はこちらが初めてです。
故 夏目雅子さんとの別れ
愛犬との別れなどは、
涙を流しながら
読み進めました。
自分にも近い将来必ず悲しい別れが訪れます。
普段、その事を考えるだけで
涙が溢れて来ます。
別れはどの人にとっても辛く悲しいもの。
悲しむ時間の長さは人それぞれだけれど、
時が経てば悲しみは癒される。
別れた人はいなくなってしまったのではなく
ずっと自分の中で生き続け
いつも優しく見守っていてくれる
その事が生きる力となり
また前を向いて歩いていける。
伊集院さんの経験から生まれた言葉が
強く優しく、背中を押してくれるように感じました。
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Posted by ブクログ
ネタバレ2018/11/21Mリクエスト
近しい人の死は、生き残った人のためにある。
過ぎてしまえば笑う時間も訪れる。それが人間の生き死にてある。死んでしまいたい、と思わなかった人はいない。そうでない人は、よほど天の恵みを受けたのである。
人は誰でも自分のことが可愛いと書いた。それでいいのである。それでも生き続ければ、それだけで誰かを救っているのかもしれない。
誰かを幸せにするために。
もしあの笑顔がなかったら、209日という日々はどんなに切ない時間になっていただろう。
あの日々、彼女は私を笑って見返した。どんな時でも笑っていた。あの笑顔は、彼女が楽しくて、そうしていたのではないはずだ。
彼女は私の気持ちを動揺させたり、落ち込ませまいと病室で決心をしていたに違いない。
あの笑顔はすべて私のためだったのだ。
彼女は自分が生きている間は、このダメな男を哀しませまいと決心していたに違いない。
人間は誰かを幸せにするために懸命に生きるのだ。
泣けてたまらない。
いい文章でした。
近しい人を亡くしたことのある人は、きっと救われるような、穏やかな気持ちになると思う。私がそうです。
購入して手もとにおいておきたい。 -
Posted by ブクログ
「別れる」という意味を早合点していた。様々な「別れ」があって、それぞれに意味があり、大人の男としての対処があるということなのだ。すっかり離婚のことだと勘違いをしていた。悩めるオイラはこの本で頼りになる伊集院の兄貴から教えを乞うことができると張り切っていた。が、浮気というものが理解できないとあり、離婚などというものが肯定的に語られる訳がない。さすがである。
この人をつくった父親、母親は素晴らしい。父親は父親らしく、母親は母親らしい。実にシンプル。正しいのかどうかはわからない。でも、確かに迷いがなくて言い切る力強さがある。なにが正義かなんて立場によって変わってくるものだから、せめて自分自身にとって何が正しいのかくらいは胸を張って言えるようでありたい。 -
Posted by ブクログ
ネタバレP129
不幸のどん底にいる者と、幸福の絶頂にいる者が隣り合わせになることがある。
だから、大人ははしゃぐなというのだ。
P188
人はさまざまな事情をかかえて、それでも平然と生きている。
許せないのなら許さなくていい。新たに許せないものに出逢ったら、これは私には許せないな、とつぶやきポケットに入れてしまえばいい。
許せないものをいちいちひっぱり出して凝視しないこと。
すばらしく男らしい、考え方だと思う。
ところどころ、いまどき?と思うところもあるが、いつも同じスタンスで語るので、特に不自然にも感じない。私はこんな人、好きだな。
シリーズすべて、一貫した主張があり、心に染み入る。
いいお母さんなのでしょうね。 -
Posted by ブクログ
ネタバレこのシリーズ読むたびに、男の中の男だと思う。今の時代には、流行らないけど、私は好き。
かっこいい。
厳しいこと書いてあるけど、事実そうだと思う。
そして優しい文章。
P20
不運と考えた瞬間から生きる力が停滞する。もっと辛い人は世の中にゴマンといる。今その苦しい時間が必ず君を成長させる。世間、社会、他人を見る目が広く深くなる。
P121
不幸の最中にはいかなる声をかけても哀しみを救える適切な言葉はない。
時間だけがそれをやわらげる。子を失った親の哀しみは生涯続く。親子とはそういうものだ。しかし哀しみに寄り添うことはできる。たとえ哀しみの淵にいても誰かに手を差し伸べてもらえたことは、その人たちをささやかではあるが、救っていることは事実だ。 -
Posted by ブクログ
ネタバレメディアなし リクエスト
なぜ彼、彼女がこんな目にと思った。
その動揺は、なぜ自分だけが? という感情になった。
ところがそういうものと向き合っていると、
やがて別離を経験した人にしか見えないものが見えて来る。
それは彼等が生きていた時間へのいつくしみであり、
生き抜くしかないという自分への叱咤かもしれない。
前書きどおり。
悲しむだけでなく、悲しさから見えてくるものがある。納得のいく文章でした。
身近な人を失った経験があるので、そのときに読めたら、あんなに苦しまず、荷物をおろせたかもしれないと感じた。この文章は、その経験をした人ならではだと感じ、嬉しかった。
いい本です。読み終えて、すぐもう一度、二回目を読んだ。