伊集院静のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
1.著者;伊集院氏は、小説家・作詞家。電通のCMディレクター。松任谷由実や松田聖子のツアー演出を手掛けた。『小説現代』に「皐月」を発表し作家デビュー。「乳房」で吉川英治文学新人賞、「受け月」で直木賞、「機関車先生」で柴田錬三郎賞、「ごろごろ」で吉川英治文学賞を受賞。また、伊達歩の名で作詞家としても活躍。「愚か者」で日本レコード大賞受賞。マルチな才能を発揮。2023年11月没(73歳)。
2.本書;大人の流儀第6弾。伊集院氏の数々の含蓄ある言葉。「誰しもが辛い時間と遭遇しているのが人生だ。幸せだけの人生などない。それでも懸命に生きて行けば、必ず光がさす。私は知っている。不運な人生などない」。四章37項の構成。第一章;不運な人生などない(9項)、第二章;切ない時間がすぎて、(9項)第三章;生きた証し(9項)、第四章;君が去った後で(10項)。
3.個別感想(印象に残った記述を3点に絞り感想を付記);
(1)『第一章第1項;哀しい理由』から、『【恩師の言葉】「(弟の葬儀後)君と同じ立場の人が世の中に何人もいて、その哀しみを乗り越えて生きている事を忘れないで欲しい」「人には苦しい、辛い時が必ずあります。そこから逃げずに歩き続けなさい。苦しい時、辛い時間はのちに君に何かをくれているものです」。・・・カントの話をする先生の横顔と愛嬌のある目が浮かんでくる』
●感想⇒人生を振返ると、私は楽しかった時よりも苦しく辛い時の方をよく覚えています。中でも、あるプロジェクトのリーダーとして働いていた時の事です。プロジェクトが大詰めを迎えた頃にメンバーの一人が倒れ、帰らぬ人になりました。妻子を残しての死。かける言葉がありませんでした。後から知ったのですが、持病があったとの事。そうは言っても、私の配慮不足は否めません。ご両親の言葉、『ある日、出勤後早々に帰宅したので、何かあったのと聞いたところ、リーダーが「昨日は遅かったので、今日は帰りなさい」と言われたそうです。「リーダーも最後まで一緒に仕事をしていたのに」と言っていました』。加えて、「生前中は大変お世話になりました」と言われ、涙腺に歯止めがかかりませんでした。プロジェクトは、関係者の了解を得られ成功でした。しかし、辛かったです。今でも、同僚の不遇の死を鮮明に記憶しており、事ある毎に思い出します。冥福を祈るのみ。蛇足です。カントは、❝近代哲学の祖❞と言われ、「純粋理性批判」等、3つの批判書が有名です。❝批判❞とは、否定的に語るという事ではなく、❝徹底的に考える❞事だそうです。物事を判断する際のキーワードであり、先生の人柄に納得です。
(2)『第一章第7項;そんな顔をするな』から、「東日本大震災での直後のニュースをまとめてビデオで見たが、大津波の事を、映画のワンシーンのような、と表現した若いアナウンサーがいた。他人事なのである。キャスター、アナウンサー、コメンテーターだけではない。地震学者も、災害の専門家も、皆他人事なのである。それは彼等の言葉、表情を見聞していればすぐにわかる。どれほど殊勝な顔をしていても、伝わって来る。それは逆に、そういう顔をすればするほど伝わってしまう。・・・これが地獄かというものか、とう実感を持つはずもない。・・・忌まわしい出来事をどういう言葉で、どう伝えていくか、同じ人間として考え直さねばならない」
●感想⇒「大津波の事を、映画のワンシーンのような、と表現した若いアナウンサーがいた」。この人は、仕事をしているだけで他人事なのでしょう。実際に震災にあわなければ、その状況や地獄絵図は実感できないのも止むを得ない部分もあると思います。しかし、「映画のワンシーンのような」という表現は良くないと思います。アナウンサーという鎧を取りはずし、素直なコメント、例えば「私は、皆さんのような事を経験した事がありませんが、映像で見る限り、かける言葉がありません。少しでもお役に立てるように出来る限り協力しますので、皆で頑張りましょう」とか。伊集院氏が言うように、「忌まわしい出来事をどういう言葉で、どう伝えていくか、同じ人間として考え直さねばならない」は難しいものの、人間学をもっと学び、経験を積んで、自分自身の言葉を見つけるしかないでしょう。
(3)『第四章第3項;悔やんだ時には』から、『社会にはルールがある。そのルールは学校の教科書には載っていない。親から子供へ、年配者から後輩へ伝える、男のルールと女のルール、子供のルールがある。・・・電車の中で化粧したり直したりしてはならないのは、女たちが娘へ教えるルールだ。「何故そうしちゃいけないの?」みっともないからだ。みっともないという行為は、その人の生きる姿勢にかかわる。・・・みっともない行為を平然とやっていれば、他のみっともない行為を平然とやる人間になってしまうという事だ。・・・親に恥をかかせる事はしてはいけない。これは基本中の基本である』
●感想⇒「みっともない」とは、ある調査によれば、「①公共の場で、自分を抑えられない ②「いい歳をして…」年齢に合った大人の振るまいができない ③人から見た自分と、自己認識にズレがある」・・・だそうです。私達は社会の一員なので、「公共ルールが守れない・道徳心が無い」行為が最も良くないと思います。老若男女が集う場で❝大声で騒ぐ❞行為、車に高齢者マークをつけているのに交通ルールを守らない行為(横断歩道で歩行者を優先しない・スピード違反等)・・・上げたらきりがありません。これはその人自身に問題があるかも知れませんが、学校というよりも家庭教育がきちんとされなかったのも一因と思います。❝三つ子の魂百まで❞というように、3歳までに人格の基礎が形成されると言います。伊集院氏が言うように、「社会にはルールがある。そのルールは学校の教科書には載っていない」。だからこそ、教える側も、人間・社会とは何かを、日々自分で追求しなければならないと思うのです。
4.まとめ;「大人の流儀」は、苦難や哀しみに心が折れそうになった時に、大人としてどう振舞えば良いかというヒントを与えてくれるシリーズ本です。2018年までに170万部超えのベストセラー。私は、気取らない軽妙な語りと事実を訴える、このシリーズが好きです。中でも本書(不運と思うな)は、一番のヒット作品と言われています。伊集院氏は、弟と妻の死や大震災等の言葉に表せられない辛い体験を経験したからこそ、言葉に説得力があり、心に響きます。「美しいものと酷いものが隣り合わせているのが私達の生命としたら、決して不運などとは考えずに今日から美しいものを信じて、自分の足で歩き続けよう」。人生の迷いを払拭する、力強い言葉です。逝去されて、1年過ぎました。残念です。(以上) -
Posted by ブクログ
以前から読みたいと思っていて、
ようやく読みはじめた「大人の流儀」シリーズ。共感するかしないかは別として、
伊集院さんが吐き捨てるようにおっしゃってる(書いてる)台詞が、いちいち面白くて、そしていちいち格好いい!
若い女の子に"KY"という言い方があることに対して-
「馬鹿言ってるな。なぜいい年して、女子供の吸ってる空気を読まにゃならんのだ」
後輩の墓参りに行きたかったのだが、かなわず、いつも胸の隅でくすぶっていたことに対して-
後輩の墓参りのひとつができなくて何が大人の男だ。たいした仕事をしているわけでもないのに・・・
出かける前に自分の服装を鏡で見て、大丈夫じゃないかもと不安なら?-
出かけなきゃいい。家でやんなきゃなんないことが一杯あるでしょう。
などなど。
ホントに面白い!
これからシリーズ制覇したいと思います。 -
Posted by ブクログ
昔から幅広い作家の本を分け隔てなく読んで来た自負があるが、中には確かに「この作家は特異だ」「コイツにだけは敵わない(まあ誰にも敵うはずもないのだが)」と、ある種「別格」の畏怖と云うか敬意を払う作家も居るには居る。
例えば椎名誠や中島らも、そして本書の著者・伊集院静が、その数少ない例となる。
敢えてその共通点を一言で云い表すなら;自分では真似の出来ない(真似したいとも思わない)想像を絶する原体験や実経験、もしくは超絶した感性や才能を有していると思われる人たちだ。
本書でも、読みながら随所にそれを痛感しながら、そしてその作者への畏怖・敬意を味わいながら、一気に面白く読み終えることが出来た。さすが伊集院静。
「先生」のモデルである色川武大/阿佐田哲也のことは風聞でのみ知るも、彼の著作は実はまだ一冊すら読んだことが無い。なのに、本書を読んで猛烈に興味が沸いた。同時に、彼もまた、伊集院静と同じく、ぼくにとっては畏怖・敬意を表すべきタイプの人物であるとの確信を得た。
「先生」と「ボク」の二人は、文字通り「同病相哀れむ」二人であり、突き抜けた才人同士にとっての「類は友を呼ぶ」関係であったことがしみじみ良くワカル。
その伊集院静も逝ってしまった。あの世でまた二人「旅打ち」していることだろう。
合掌。 -
Posted by ブクログ
2019年初版。昨年、著者が亡くなられたのをキッカケに大人の流儀を読んでいます。9作目です。連載エッセイをまとめていますので、当然重複する部分も多々あります。ただ、ブレることなく自身の思う事を忖度なく書かれています。私より少し年長の著者のその姿勢が羨ましく思っています。このシリーズの魅力はタイトルです。残りの人生が小説ならば最終章に入っているであろう私にとって、何となく心に引っかかるタイトルたちです。内容としては若くして亡くした弟・前妻に関しての後悔や愛、男らしいの一言では尽くせない父・愛情深い母・そして家人・犬たちのことが綴られています。先日の送る会の報道を見て著者の交友関係の深さを実感しました。