名称未設定さんのレビュー一覧
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言葉を知らないからこそ
「アイ」ではなく「愛」という言葉を知ってしまえば、その概念に当てはめて理解する事で大人になってしまう。知らないからこそ本質に迫り、息苦しく輝く物語が広がって行く。「ぶっ飛んだ内容」に展開して行けば行くほど読者の感性につながり「くらくら」させられてしまう。凄い作品だと感じる。
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ここではない街へ…
私が、(旧版の)文庫カバー写真(車のライトの先に橋があり遠くに街の灯りも見えている)に魅力を感じたのは、常日頃「この橋を渡った先に、別世界があるのではないか」と考えるクセがあるからです。写真の橋の先に見える街の灯…それは本書の主人公(作家52歳)が若い頃過ごした街なのかも知れない…色々あった出来事も「この歳でふりかえったなら…新しい発見や答えを出せるのではないのか」と試みてはみるのだけれど、簡単にあしらえるモノもあれば、謎が深まったり…人生経験を積んでも100%の解答は得られない事がわかる…コースに戻るのはままならない…というふうに私は読みました。
「日本を代表する巨匠」への入門書!
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こういう小説を読みたかった!
ドアをたたく音の描写から始まる文章を読んで「すでに名作」であることを感じた。無駄のない的確な表現とゆきとどいた構成なので、繰り返し読んでも飽きない作品になっている。何よりも、言葉のない行間から著者の人生観や矜持(きょうじ)が伝わってくるのが魅力である。著者と行間で対話ができて「読書の醍醐味」を感じた。とても良い読書時間を過ごす事ができた。
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作者は、絵筆を持った文学者!
1985年の発刊から輝き続ける短編集。人物の「ここぞという表情」もムダのない線で表現されているので繰り返し見ても、はっとさせられる。心をみつめた経験のある人には一生の宝物!
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さすが手塚賞受賞作品!
選考委員会の方たちの「炯眼の士」ぶりにも頭が下がります!これからも、みなもと太郎氏のこころざしの残る手塚賞であって欲しいと思っています。本作は「いっぺんに読んでしまうのがもったいない」ほどの名作です!
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豊かな小説
薄い書物だけど、その中身はとても「豊か」である。最初のページから、読むのに息苦しく感じ最後まで苦しい。「薄い本でよかった」と思えるほどお腹いっぱい。
少しずつわかってくる展開から「やっぱり、そうなのか」と予測させてくれる書き方。話しの終わった先はそれぞれの読者に任されている…看護知識を試験するシーンももとより、すべてに「ひきしまっている文章」再読必須です! -
小説を書きたい人に
読者にも、先が予測できるような書き方をしているのに、最後まで読ませてしまうのは作者の文章が上手いからです。ありそうな話しでも文章次第なのだというお手本なので「自分も書いてみたい」と思っている人にはとてもいい参考書になります。