あらすじ
私は誰?円柱形のボディに特殊ラバーの腕。プログラミングされた高度な知識と技術で、難病の子供や末期癌患者たちを介護すべく活躍を始めた〈ミキ〉。生と死が隣り合わせの現場で激しく揺れる心、なぜか甦る奇妙な記憶。私は本当にロボットなの?「自分探し」をするミキが“人間とは何か”を問う、感涙の近未来小説誕生!
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豊かな小説
薄い書物だけど、その中身はとても「豊か」である。最初のページから、読むのに息苦しく感じ最後まで苦しい。「薄い本でよかった」と思えるほどお腹いっぱい。
少しずつわかってくる展開から「やっぱり、そうなのか」と予測させてくれる書き方。話しの終わった先はそれぞれの読者に任されている…看護知識を試験するシーンももとより、すべてに「ひきしまっている文章」再読必須です!
Posted by ブクログ
SF。
看護用ロボット、ミキ(三番目の機械)の自分探し。
外科・小児・ホスピスと、ミキは体験していくにつれて自分とは何かを気にし始める。ロボットゆえに差別され、ロボットゆえに頼りにされて、でも……、ロボットであることを諦めてしまう自分に気がついて、何を諦めるのか自問自答するのだ。
ラストで、不覚にも涙ぐんでしまった。
「裸眼で見たかったの お父さんとお母さんの顔」
そこから、思い出の部分で。
なんで哀しいのか、説明できませんが。
哀しいのです。
自分が猿だと忘れさせられて、ロボットだと思い込んだジミーの哀れさも。
自分がロボットだと思い込まされて、それでもホスピス(終身医療)という過酷な生命の現場で、女の子の得る哀しさも。
それにしても、この設定は凄い。
究極の医療介護。自己介護。ロボットを自分で操って、自分で介護する。
文句のつけようもない。だって、自分がやっているのだから。
こんな時代が来るのだろうか。
そうしたら、人は今より少し、寝たきりになるのが楽かもしれない。心情的にね。
Posted by ブクログ
良かった
平成13年の薄い本。2時間もあれば読みきれる。筋も、ものの 10分で読みきれる。ロボット・ナース。
雑だ。流れるような美しさはない。もっとていねいにこのテーマを扱ってほしいと思うほど。
アプローチは瀬名作品とは異なる。ロボットに人格はない。でも、でも、とても感動する。単にアバターがほしいわけではない。アバターを通じて命を学ぶ。ラストのキレは、マッドサイエンティストのそれ。自分が居なくなっても困らないように。そうか、だからナースなのか。素晴らしい。
心に閉じ込められた姑問題。安楽死。さらっと語る現実と、新生児は人間未満、老害は人間崩壊と言い切る愛。そして、ラストの親の愛。雑でも短くても、すばらしさは損なわれていない。いいなぁ。ここテーマ、もっと書いてほしい。
Posted by ブクログ
自分は何者であるのか。この、人類が存在する限り、決してなくなることのない究極の問い。人の一生はこの問いの答えを探す旅のようなものであるような気がする。その答えは一つではなく、正解もない。自分で見つけたものだけが、自分にとっての正解と為りうる。
介護ロボットのミキは目覚めた時から必要なことは全部知っていた。介護の知識も、病院の地図も、自分自身の構成図すら与えられていた。それでも、一番最初の彼女の質問は「私は、誰ですか。」という言葉だった。その問いの真の答えを求める思いは、病院の人々との触れ合いを通して、ますます大きくなっていく。
身体のほとんどを機械に助けられ、それでも生きていることを実感しようと必死で生きている男性。産まれた時からの難病で、生命の限界をみつめながら生きている子ども。ホスピスに入っても遠慮がちで介護を頼めないでいる老婦人。病院にはむき出しの命と向き合っている人々が暮らしている。
少しずつ明らかになるミキの謎。そのBGMのようにさりげなく描かれている命の記録。それらが優しい、そして少し哀しいSFの世界を作る。
謎は大がかりではなく、読み慣れた読者ならば想像の範囲内の結末だと思うが、それでもこの優しい世界に触れることに、きっと意味がある。そう思う。 (2002-04-10)
Posted by ブクログ
自身の内の自我に気づいた医療用介護ロボット<ミキ>が、「自分とは」「生きるとは」を問いかける。面白かったけど、できれば長編で読みたかったかな。
Posted by ブクログ
終末医療を行う総合病院にミキという看護ロボットが目覚めた。
看護、介護するなかで感情の揺れやなぜか存在する記憶を思い出し、私とははなんなのかを問うていく。
短い本なのですぐに読めるし、話もわかりやすいのでおすすめ。
この手の話は幸せな方向に自分探しが進むのがほとんどだけど、ミキのようにロボットとなるという救いがなかったらどうだったんだとは思わずにいられなかった。
結末としてはこれが良いに決まってるけど…
Posted by ブクログ
目が覚めると、目の前には江成一信院長と、江成瑞枝総看護士長がいた。ここは病院で、自分が介護をするためのロボットであることを知る。「ミキ」と名付けられ、病棟で様々な患者と接することになるが、次第にミキは自分の中の不思議な感覚が気になってくる。これは記憶?”私”は一体何だったのだろう?ただのロボットではないのだろうか?
オチはまぁ、それしかないだろうな~という感じだったので特に驚きもなく。ここまでの技術は今の世の中でも発展していないけれど、介護の世界にロボットが進出してくることは間違いないのではないのだろうか。ミキのように人間と同じく反応してくれる方がいいのか、もっとあえて機械的な方が介護を頼む側からしても気楽な面があったりするのではと思わなくもない。