馳星周のレビュー一覧
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1600ページというのはなかなか。オウム事件をベースにした長編。事実をベースにして作家が物語に仕立てる。事実そのままではない。本当ではないほんとう。報道や記事で知っていることは断片的なものだ。それが物語になって表れる。視点が複数ありどことなく読んでいて、聖書の成り立ちはこのようなものなのかもしれないと思った。もちろん、これは悪魔の聖書ということになるけれど。大まかな流れは元ネタの事件をトレースしている。しかし、報道では窺い知れない当事者の内側が描かれていてそれにリアリティがある。もちろんフィクションだろうが、そこにはリアリティがある。あながち嘘ではないような気がする。オウムの事件としではなくマ
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性描写が生々しいので家でこっそり読むか、カバーをかけて読むのをお勧めします。
馳星周の作品は二作目になりますが、未だ彼のノワールと呼ばれる作品を読んだことがありません。次はど真ん中のノワールを読んでみたいと思います。
さて、本作品は何処にでも居そうな人達がちょっとした事で転落していきます。
眩暈の主人公は過度な妄想狂で義理の妹との関係が近くなった事と、妻が赤ちゃんの世話で相手にしてくれない事で義理の妹への妄想がエスカレートしていきます。
見てられないけど見たくなる!!!
人形の主人公は憧れの人と久し振りにあったが為に堕ちていく・・・
作品中、一番理解できない主人公です。
声の主 -
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ネタバレ冒頭から、主人公・加倉の転落の描写の歯切れのよいこと。これで物語にスムーズに入っていくが…。
”主人公”であっても良心の人でも正義の人でもなく、一般的な基準で言えば、どうしようもない悪党。そんな言葉が生易しくなるほどの犯罪者となっていく、その軌跡をつづった物語と言っていい。
しかもバイオレンスも性描写も短いながら、フラッシュのように情景を切り取り、映し出し、嫌悪感すら覚える。
それでいて読み続けるのは、加倉の想いや本能にどこか共感を覚えずにはいられないからだろう。デフォルメされ普通の人だったら抑制される臨界点を軽々と超えて行くところだけが違うのであって、金・欲に対する欲望自体は変わらないのだ -
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加倉昭彦は日本のプロ野球で活躍したが,故障が続き台湾のプロ野球に転ずる.台湾では八百長が横行しており,放水と呼ぶ.通訳の王東谷は戦前の日本統治下で山村輝夫という名を持っていたことなどから,昭彦に良くしてくれた.同僚の台湾人・張俊郎と懇意になるが,真面目な俊郎が放水を警察に密告することから話が展開する.昭彦は王國彦や袁,陳らの取り調べに対して放水はやっていないと供述するが,黒幕が順次登場する.徐栄一からは様々な飴や鞭を受ける.昭彦は経営しているバーの女 リエ(温晶晶)を良い仲だ.徐から高級時計をもらったところを俊郎に見られ,彼を殺してしまう.リエにアリバイ工作を依頼し警察の追及を逃れるが,俊郎の
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馳星周『復活祭』文藝春秋。
『生誕祭』の10年後を描いた続編。ひたすら大金を追い求めることに執着する男女を描いたクライム・ノヴェルである。続編であるのだが、馳星周の描いた小説だけに、最初から泡沫のような黄金の夢は儚く消え行く運命にあろうことは大体予測がつく。
バブル崩壊で全てを失った堤彰洋と齋藤美千隆と共に再起を賭け、IT産業に参入する。IT関連企業を起こした彰洋と美千隆は株価を吊り上げるために優良企業のM&Aを目論むが…狂ったマネー・ゲームの勝者は誰なのか。
続編というよりは『誕生祭』の返歌とも言うべき作品だった。勝者への賛辞は贈れず、虚無感だけが残るラストだった。 -
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だめだー
会社の昼休みに読むものではない。
号泣してしまった
犬を通じてさまざまな人間の日常を描き出すオムニバス。
読んでいて、初めは犬好きが喜ぶファンタジーのように思えた。
どの短編にも犬と、犬を愛し理解する人々が登場する。そして彼らは(往々にして人間関係にはどこか問題を抱えているが)犬との深い絆がある。
普通そんなに犬のこと理解して対応できる人いないよ、というのがひとつ。
それから登場する皆さんがあまりにわかりやすく人間関係には問題を抱えているので、そういう人がそこまで犬と完璧な関係を築けるかね?というのがもうひとつ。
そんなわけで、これは著者の犬好きが高じて書いたある意味ファンタジ