馳星周のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
東日本大地震。
物語はあの震災の瓦礫の中を彷徨うところから始まる。死屍累々としら光景を見て、かつての戦場と似通ったところから回想へ。
太平洋戦争末期の沖縄戦。
沖縄戦において、ひめゆり学徒隊は有名だが
鉄血勤皇隊というものがあった。
戦争に駆り出されるのは二十歳以上のものであったが、この鉄血勤皇隊は17歳未満の14〜17歳の子供達で編成された部隊だ。
2024年でこの鉄血勤皇隊の存命者はいなくなったとのこと。
戦時下における極限状態においての、理性と生存本能の間に苦悩する描写が胸を抉る。
徐々に戦争経験者がいなくなってゆくが、史実として語り継がれてゆかねばならないと心から思う。
巻末へ進むと、戦争と震災の対比がリンクしてゆくが
どちらも決して風化させてはならないと念を押された気がした。
-
Posted by ブクログ
我が家には、いつも生き物がいた。
金魚は年がら年中いたし、猫を拾ったこともある。
亀と文鳥がいて、一人暮らししてもハムスターとトカゲを飼っている。
犬も、もちろんいた。
10年、時間をともにした。
犬種は本作にも出てくるジャックラッセルテリア。
マスクという映画を見た母が、
犬を飼うならこの犬種じゃないと飼わないと、
ただ飼いたいだけでおねだりした私と姉への条件をつけて連れてきた犬だった。
愛らしい見た目に反して暴れん坊で、神経質。
一度嫌と思ったらその日は1日動かない。
ご飯も散歩もいかない。
手を焼いた、愛らしい子だった。
本作は、犬を飼ったことがある人なら
誰しも経験するようなエピソードが多い。
その中でも、この本のすごいところは、
犬種の特性に沿った話のところだ。
ジャックラッセルテリアは、
小さい身体に可愛い顔をしてかなりタフで暴君だ。
一度興奮したら止められない。
そんな特性を濃く描いている。
そして、出てくる人間たちがその特性をもった
犬たちに選ばれて、最良のソウルメイトになっていく。
読み終わって考える。
人生で一度の飼い犬だった彼女は、
私と、私の家族といて幸せだったのだろうか。
私たちの欲のままにしてきたつもりはないが、
彼女にとって、私たちとの出会いが最高だったのか。
ソウルメイトに、なれていたのだろうか。
もう会えない、でももう一度会いたい。
大切なソウルメイトに想いを馳せる。
そんな本だった。 -
Posted by ブクログ
新宿と犬と山の作家、馳星周。
後立山連峰は、北アルプス北部に連なる長大な山域で、麓は安曇野高原などの避暑地や数多くのスキー場を有する場所。
もちろん、山を歩く連中で夏は稜線もにぎわっている。が、冬山はとても厳しい。日本海からの寒気が湿気を帯びて雷とともにやってくる。
そんな冬景色の稜線を主人公達は北へ歩く。
この手のストーリーとしては目新しいものではないが、やっぱり“水戸黄門”的に見入ってしまった。
井上靖『氷雪の門』や漫画『岳』が読みたくなった。
夏に白馬岳へ登る最も一般的なルート“白馬大雪渓”……2年続けてクレバスの巨大化で立ち入り禁止となった(2023・24)。
温暖化の影響からか、年々雪渓も痩せ細って危険度が高くなっている。
また、どの山も一般登山道は踏み跡が抉れ、場所によって崩落が発生している一方で、人気の無くなった道は荒れて歩けなくなっている。
永遠と思っていた山は、現実に変わり始めている。