あらすじ
沖縄独立へ向け、平良は古謝の立てたクーデター計画実現に必要な同志を集め、すでに軍事訓練を始めていた。一方、大城は犯罪性をますます強めた手法で、現地警察官、政治家やその愛人、平良の恋人すら懐柔し、内偵を進めていた。しかし、返還の裏に巨大利権が蠢いているのを察知し、自らの使命への疑問を強め……。果たして彼らの、そして沖縄の行く末とは。幻のノワール巨編。
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Posted by ブクログ
著者が沖縄を舞台にこんなノワール小説を書いていたとは知らなかった。「復帰」直前の沖縄で現状と将来に鬱屈を募らせていた若者と、「復帰」後の沖縄を骨までしゃぶってみせようと金儲けを目論む本土の政治家たちのコマとして使われていることを潔しとしなかった考案警察官の生が交錯していく、というストーリー。最終シーンでこの二人の「対決」が描かれるが、二人はまったく言葉を交わさないままで終わっていく。つまり、この二人の生が決して交わらないと設定されている。
個人的には、せめて本土の政治家や官僚や資本家たちに一泡吹かせてやろうと動き始めた大城がどんどん法を破り、人の道に外れた行動を重ねるようになるところが重要と思った。つまり作者は、彼を決して悲劇の主人公として英雄化するつもりは毛頭なかったということだ。
Posted by ブクログ
馳星周『パーフェクトワールド 下』集英社文庫。
下巻。結末は少し呆気なかったものの、ストーリー、登場人物の造形は非常に面白い。登場人物の誰もが心に闇を抱え、一人としてまともな人物が居ないのだ。最初から『パーフェクトワールド』など実現出来ないことは解り切っているのだが…
いつの時代も政治家は民意を無視し、国民からむしり取った税金を浪費し、さらには良からぬ方法でその富と権力を増大させるという構図は全く変わらない。アメリカに長らく統治された沖縄は、返還ではなく、日本政府によるアメリカからの買取りという無惨な事実、沖縄のリゾート開発に群がる輩…沖縄に派遣された公安警察官の大城は一度道を踏み外したことをきっかけに、どこまでも堕ちていく。
Posted by ブクログ
救いがなく、人が死にすぎる。のに、キャラクターたちのどうしようもない思いと弱さの絡まり合いが、読んでいて面白かった。
信念と、現実の暮らしを回していくための行動と、欲望と、弱さと葛藤が、とても丁寧に描かれた作品だった。それにしてもたくさん死んだ!
Posted by ブクログ
登場する公安警察官の大城くんが、ヤバい。
上巻でも凄かったけど、
下巻に入ったらますます危険な人物に。
殺しも、クスリ漬けも、なんでもあり。
大城くんと関わる人物、
大城くん自身も、
どんどん闇に墜ちていく。
大城くんと対極にいるのは、
自らの信念のために死を厭わない熱い男・平良くん。
最後のシーンが強烈。
後戻りできない世界にとうとう踏み出してしまった。
理想だけでは生きていけないのが人間。
ついつい欲が出てしまったり、
現実と折合いをつけなくてはいけなかったりする中で、
理想とどんどんかけ離れていく。
パーフェクトワールドは、どこにも、ない。
小説の世界とはいえど、
沖縄が抱える矛盾や苦しみって、実際に今も続いてるんだろうな。
と想いを馳せました。
Posted by ブクログ
予想通り全員が地獄に落ちてしまった。それにしても大城の狂いっぷりが凄まじい。ここまで人を陥れることに躊躇いを感じさせないとは。上巻冒頭の警視監の前でガチガチに緊張していたのが信じられないくらいの変貌ぶりが怖すぎる。本人は変わってしまったことを周りのせいにしていたが、間違いなく本質的にそういう要素を備えていたのだろう。大城があんなにあっさり殺されたのは残念だった。大城や平良たちにもっと呪詛をぶちまけるシーンが欲しかった。やまとーんちゅに恨みを持ってるうちなーんちゅは現実にどれくらいいるのだろう。
Posted by ブクログ
沖縄の暑さや緊張感のなさが良く描写されてて、故に疾走感がなくズルズルと泥沼にハマっていく公安のスパイたちの陰鬱な感じがよく出てた
最後ちょっと尻切れトンボだったかなあ……誰も高笑いしてないENDはちょっと物足りなかった