あらすじ
〈失われた10年後、あの男たちが帰ってきた! そのとき裏切られた女は……〉
80年代後半、土地と株の高騰に沸いた東京。
バブルの絶頂期の都会を舞台に、若き「持たざるもの」の青春の暴走と破滅を描いた名作『生誕祭』。
ボリュームを感じさせない疾走感と、入り乱れる男女の愛憎、最後まで敵味方のわからないコンゲームは、北方謙三氏からは「バブルという、現実に社会や人を狂わせた時代を、象徴的に描ききっている。時代の狂気を背景にすることによって、ノワールとも呼ぶべき新しいジャンルを主張」と評された。
そして10年後、再び主人公の彰洋と彼の敬愛する美千隆が動き出した。
バブルが崩壊して10年、彼らが運命を狂わした女たち――麻美と早紀がすべてを失ってから10年の歳月を経て、どん底だった日本の経済は一部の産業の復活の兆しがみえている。
インターネットという実態のないものに金が集まる、いわゆる“ITバブル”時代が到来したのだ。
「失われた10年」の雌伏後も彼らの夢は変わらない。
マンハッタンにでかいビルを建ててやる――そのために選んだのが、IT産業だ。
関連企業を立ち上げて目指すのは株式公開、その株の価値を上げて売買を行うだけで、実態を伴わない億単位の金が動く。
バブル時代と同じように、彰洋と美千隆は新会社メディアビジョンを興すと休息もないままに動き回り、上昇は成功していくかに見える。
しかし二人がかつて裏切り、現在はしがないクラブの雇われママの麻美はそれを許すはずがない。
自分のパトロンであり詐欺師の桜田、そして彰洋の恋人だった早紀にも誘いをかけ、ふたりの儲けを掠め取る計画を開始する。
IT時代の寵児たちをも連想させる重要人物と、複雑な心情をお互いに抱く男女たち。
いずれ土地バブルと同じようにはじける運命の時代の中で、勝ち抜くのはいったい誰か?
馳星周王道の裏切りと哀しみが躍動する、一級のエンタテイメント作品。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
3部作の完結編として考えると期待を裏切らない内容であった。状況が目まぐるしく変化していく中で、生誕祭の「誰がババを引くか」が復活祭では「誰がいち抜けするか」へと変貌を遂げ、ページを捲る手が止まらない。今作に於いても結果誰ひとりとして欠けることなくエンディングを迎えた為、続編もありか⁈と期待してしまう。
Posted by ブクログ
2017年6月に文庫化されたからか、突然書店で目について買ってしまった。
馳星周は1年に1回ぐらい無性に読みたくなる作家。めんど臭いことは忘れて、とりあえず小説のスピード感に身をゆだねたくなる時だ。
本書は前編(生誕祭)があるが、こちらは読んでいなかった。ITと金融という組み合わせで前作はバブルで本作はITバブル。
思った通り展開が早くどんどんと進展する。主人公達が罠にはまりながら苦悩して打開策を考え、また潰される。
最後に誰が勝ったのかわからないぐらい完膚無きまで打ちのめされる。
これぞ馳星周。
Posted by ブクログ
馳星周『復活祭』文藝春秋。
『生誕祭』の10年後を描いた続編。ひたすら大金を追い求めることに執着する男女を描いたクライム・ノヴェルである。続編であるのだが、馳星周の描いた小説だけに、最初から泡沫のような黄金の夢は儚く消え行く運命にあろうことは大体予測がつく。
バブル崩壊で全てを失った堤彰洋と齋藤美千隆と共に再起を賭け、IT産業に参入する。IT関連企業を起こした彰洋と美千隆は株価を吊り上げるために優良企業のM&Aを目論むが…狂ったマネー・ゲームの勝者は誰なのか。
続編というよりは『誕生祭』の返歌とも言うべき作品だった。勝者への賛辞は贈れず、虚無感だけが残るラストだった。
Posted by ブクログ
生誕祭、
という作品の続編と知らずに読んだからか十分に楽しめなかった。10年前の恨みを晴らすため雇われママの麻美、OLとして働く早紀が男達を騙すため動き出す。
Posted by ブクログ
むかしから好きな馳星周作品。生誕祭は15年ぐらいまえに、先輩からもらって読んだ。彼の作品にしてはわりとエグくない展開で、かつ現実味があってよかった記憶。その続編ということで読んだ。バブル期をインターネットバブル期に移してのストーリー。前作ほどの熱はなかったかな、ネット企業の表現もやや薄め。おもしろかったけど、さすがに続編を描くのはしんどいだろうなーと感じました。読んでおいて損はなかったけど