馳星周のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
昔競馬のテレビゲームをやっていたこともあり、購入。
面白くて一気に読んでしまった。
気性が荒くなかなか本気を出さないエゴンウレア。
だけども、刑務所から出所した亮介、主人公の敬、そして「地元からG1馬を」と他の牧場や競馬場関係者達の熱い想いや努力によって、エゴンウレアが再び輝く姿は胸を打たれるものがあった。
敬はもともと騎手の夢があったが、装蹄師になり、亮介はトップジョッキーから、トレーニングセンターで調教師の調教をする際の馬乗りに。2人とも夢を諦めざるを得ない立場になって、第二の夢を見つけて、それを実現させる姿も、「自分も今後新しい目標ができて、それに向かって突き進んでいくことがあるか -
Posted by ブクログ
ネタバレ東日本大震災で飼い主と離れ離れになった1匹の犬(多聞)と編毎に登場する人物との物語をつづった短編集。
読み進めていくごとにどんな飼い主なんやろう、男性か女性か、年配か若者なのかと想像を掻き立てられていった。すると、飼い主は震災の被害に遭って亡くなっていることが判明した時は衝撃やった。そうやとしたら、多聞は何を目指してある一つの方向を眺めていたのか。震災前に戯れていた光に会いたい一心ということが最終章で明らかになったときも衝撃が走った。多聞と再開できた光が過去のトラウマから少しずつ話せるようになって、笑顔を取り戻せていったときは感動するとともに自然とこっちまで嬉しくなっていく感覚を覚えた。再び -
Posted by ブクログ
久々に、またしばらくして再読したいと思う、面白い小説に出会えた。
人間サイドからの身勝手な話ではあるが、競走馬は色んな人の思いや願いを乗せて走る。その罪深さについては、筆者も作中で何度も言及している。
その走りで人は喜んだり、胸を熱くしたり、明日への活力を得たり、また、人生を変えるきっかけを得ることもある。もちろん、逆もまた然り。
馬の走りに思いを乗せる人間の熱さ、ピュアさ、そうした、どうして競馬が面白いのか、どうしてファンたちが競馬に魅了されるのか、というひとつの答えのようなものが本書にはこれでもかと描かれており、たいへん面白い作品でした。
主人公に「主人公感」を与えるためにヤクザと -
Posted by ブクログ
ネタバレ【あらすじ】
犬と人間は言葉はかわせない。けれど巡り会うとかけがえのない“家族”になる。余命数ヶ月を宣告された愛犬と夫婦との最後の時間を描く、渾身の中編など、涙なしには読めない七つの物語。
『今この瞬間、日本中の、いや世界中のいたるところで辛い闘病生活を送っている犬が、人にむごい仕打ちをされている犬が、死にかけている犬が、愛する犬のために涙を流している人がいるのだ。』
『カータを迎えた時から、自分より先にカータが逝くことはわかっていたのだ。ならば、失うことを嘆き悲しむより、カータと一緒にいる1分1秒を大切に思うほうがいい。逝くその瞬間まで、カータが幸せを噛みしめていられるよう心を砕く方がい -
Posted by ブクログ
最後の北方先生の解説にもあるように、短篇小説であり、連続短篇小説でもある。巧みな二重構造を孕んだ美しく、壮大な物語でした。
私の大学の憧れの教授が「私は犬派猫派と聞かれたら、後者と答える。イヌは好き嫌いを超越した敬意の対象であるから。」と仰っていたのを思い出しました。まさにそれを体現したような内容で、永きに渡って築き上げてきた人と犬の安易には表現できない関係、"絆"。そして犬が持つ特殊な"力"を、過去類を見ないほど極限まで表現されていたと感じます。
一頭の犬の物語があり、そこに幾多の人々の人生が交差し、絡み合って、力強く解けてゆく。
そんな幻想的で、 -
Posted by ブクログ
久しぶりに馳さんの犬をモチーフとした作品を読んだ。改めて作者の犬に対する愛情を感じ感動した。
「ずっと一緒にいなければ、犬から教わることができない。 見返りなど求めずに家族を愛し、気持ちを汲み、辛い時や悲しい時には余計な言葉は口にせずにただ寄り添ってくれる。」
作品中の文章だが本当にそうだなぁと一人腑に落ちた。
親子関係に問題を抱えた少女が山の中に犬と暮らす伯父のもとに身を寄せることとなり、隣の別荘に住む少年と出会う。少年もまた、家族との間に葛藤を抱えている。その彼女、彼が山に癒され、犬に癒されて、成長していく姿に胸を熱くした。
最後の愛犬との別れの部分が切なくて、目頭が熱くなった。