馳星周のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ネタバレ和犬とシェパードの雑種犬・多聞を巡る7作の短編集。
表題作の少年と犬の舞台となる熊本まで、様々な人と出会いながら仙台から旅をする。その過程で、人々の孤独を癒やしていく多聞。旅路の果てで、多聞を待つ者とは…。直木賞受賞作。
これは良い本だ。
読み始めてすぐにそう思った。賢く、慎み深い多聞をすぐに気に入ったし、誰と出会っても西の方をじっと見つめるという謎がちょうどよく興味を引いて、先へ先へと読み進めたくなった。表題作「少年と犬」に辿り着く頃、私はどこに連れて行かれるのだろうとわくわくした。そして、それが幸せな結末であることを祈りながら読んだ。
「老人と犬」で、片野弥一が多聞は孤独と死の匂いを嗅ぎ取ると評している。
確かに、それまでの短編では孤独を感じる者たちの前に多聞は転がり出てきた。飢えと疲労でぼろぼろの犬を拾ってくれそうな人間を効率良く嗅ぎ分けているつもりなのだろうか。運命的な綺麗な物語にしようとするには少々邪魔になる発想だが、多聞が生に執着する上では、これ以上に合理的な基準はないだろう。餌と仮宿の代わりに孤独を埋めてやるのだ。
動物は、孤独を埋めるのに結構都合の良い存在だ。ほどよく人間味がありつつ、実はどう思っているのかは分からない。飼い主が想像するしかなく、それは多分に自分に都合の良い想像になる。泣いている時に涙を舐められれば、慰めてくれていると思ってしまうが、その実しょっぱい液体が美味しくて舐めているだけなのかもしれないのだ。しかし、慰められたと錯覚した飼い主は、勝手に癒やされて勝手に立ち直る。嫌なことも言ってこないし、うーん、非常にコスパの良いコミュニケーションが取れるのだ。
結末は、どう評価しよう。
光と再会し、身を賭して守ったわけだが、もっと多聞を幸せにしてあげたかった。あんなに長く旅をしてきたんだから、光が大きくなるまでべったり一緒にいて、幸せな余生を送ってほしかったな。物語的には文句のない展開だが、やりきれない。多聞にはもっと満たされた顔をさせてやりたかった。 -
Posted by ブクログ
オウム真理教をモデルにした長編。
カルトに狂っていく人の怖さと、それに取り巻いて甘い汁を吸おうとする警察や国会議員達がみんな愚かでなかなかの大作だった。
乱暴にも感じる文章がより物語を荒々しく感じさせて、映画を見ているような感覚に…
高学歴で賢いはずの人々が、なぜ教祖を慕い狂っていくのか。以前森達也監督のオウム真理教のドキュメンタリー「A」「A2」を見たけど、松本サリン事件で容疑者とされた方へオウム幹部が会いにいく場面で、ぐだぐだとして謝罪もできずその方を苛々させるところを思い出した。上手く立ち回ることができない詰めの甘い行動が多く、社会で生き辛いから余計宗教にのめり込んでいったんじゃないかと勝手に思った。