馳星周のレビュー一覧
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正義を押しつけて人の気持ちを踏みにじる俊郎が嫌い。夫が殺されたのにその友人にさっさと乗り換えて被害者づらする麗芬が嫌い。
善人に見えてもどいつもこいつも身勝手。悪人に見えるやつはさらに深い業を抱えていて救われない。
結局だれ一人、主人公の味方はいなかった。
だれもが主人公を騙し、利用しようと思って近づいてくる。
「しらを切れ、ごまかせ、丸め込め」「あいつを殺せ、黙らせろ」
いつの間にか主人公・加倉の声が聞こえてくるようになる。
加倉の激情に任せて書き殴ったようにみえて、緻密に構成された物語。
終盤の疾走感と、誰もいなくなった後の絶望と孤独。それでも逃げなきゃいけない焦燥。
こんなに主人公に -
Posted by ブクログ
スキだね。
すごいスキだと久々にさけびたいくらい。
舞台はバブル期なんだけれども、そこで繰り広げられる
土地をめぐる命とかお金とか女とかプライドとかすべてを
ひっくるめた感じで、時代の切迫感がたまらなく酔えた。
馳星周のお決まりのパターンでアンダーグラウンドな人間が
わんさかでてくるのかと思いきや、以外に(笑)一般感覚に近い
もしくは、以前は一般感覚だった人間が多かった。
昔、某ソフトウェア会社の代表が倒産後に語ったコメントで
『金があるとね、もっともっと欲しくなるんですよ』
というのがあるのだが、なんかものすごくわかる気がした。
ラストの美智雄のポジティブさには笑った。
でも、このぐ -
Posted by ブクログ
物語は、新興宗教〈真言の法〉を立ち上げた教祖・十文字、その教団運営を取り仕切る弁護士の幸田、18歳で十文字に傾倒し出家した青年・太田、そして左遷された公安刑事・児玉。
彼らそれぞれの視点を往復しながら、教団と社会が不可逆的に崩壊へ向かっていく過程を描いていく。
宗教組織としての基盤は、教祖の薬物中毒、選挙活動への介入、弁護士一家殺人事件など、すでに脆く揺らいでいる。
そこへ、教団を資金源として利用する警察官、その資金を上納させる政治家が絡み合い、権力者たちは自らの都合で教団をコントロールしようとする。
しかし、教祖の反社会的な意識は次第に狂気を帯び、物語はあのサリン事件へと突き進んでいく。
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Posted by ブクログ
カリスマ教祖"十文字源皇率いる、〈真言(マントラ)の法〉。弁護士・幸田は侍従長の高位にあり、外界との交渉を担っている。組織に罪を背負わされ失脚した児玉警部補は、この新興教団に目をつけた。ここは金のなる木だ、と。両者の間に奇怪な盟約が結ばれる。教祖が敵対する弁護士の殺害を命じたとき、黙示録の扉は静かに開かれた――。欲望と狂気に憑かれた男たちを描き切る、群像サスペンス。
この作品は長編すぎて、とてもレビューできそうもないので、まずは書籍の紹介をお借りします。
紹介文にあるように、本作は明らかにオウム真理教を思わせる設定で進む。もとはヨガ教室にすぎなかった新興宗教が、どのようにして信者 -
Posted by ブクログ
平安時代に最盛期を迎える藤原一族。彼らの成り上がりを描くシリーズ3作目の主人公は藤原仲麻呂。祖父・不比等譲りの才覚、他人を敵と味方にはっきりと区分する非情さ。徹底した合理主義を持ち、天皇も凌ぐ絶対的な権力を追い求める。
一方、仲麻呂と対照的に描かれるのが阿倍内親王。権力よりも、女としての平穏な人生を夢見る。が、母親の光明皇后と仲麻呂の重圧が彼女を苦しめる。人生をあきらめていた彼女だが、母の死と僧・道鏡との出会いをきっかけに自立し、仲麻呂に正面から立ち向かう存在へと成長する。
最高権力者になったはずの藤原仲麻呂だが、その没落も早く、その最期は実にあっけなく、あっという間だった。結局は人情のな