馳星周のレビュー一覧
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やはり馳星周はノワールが良い。元々「不夜城」で驚異の新人ノワール作家として鮮烈なデビューを果たし、その続編「鎮魂歌」でイメージが定着した。なので「少年と犬」のような作品で直木賞を受賞した時は大いに驚き、またそれを読んで内容の素晴らしさにまた驚いたが、何度も直木賞候補に挙がっている実力の持ち主だと考えれば当然かとも思う。
本作は「夜光虫」から十数年ぶりの続編らしいが残念ながら「夜光虫」はまだ読んでいない。それでも主人公のキャラクターや背景は十分理解できたし、後半の圧倒的なバイオレンスにはページを繰る手が止まらなかった。
才能ある作家には色々なジャンルで挑戦してもらいたいが、それでも馳星周には全作 -
Posted by ブクログ
会社の課題図書だのなんだので、全然好きな本を読めず久々に読めた。
久々だったので好きな競馬モチーフの話にした。馳星周さんといえば『黄金旅程』でもそのステゴ一族愛を存分に見せつけてくれたし、面白いだろうと思った。
実際にめちゃくちゃ面白かった。
厩務員、調教師、調教助手、馬主、生産牧場。それぞれの事情と思いがドラマのカットのように短いテンポで切り替わっていく。凱旋門賞を勝ってくれという大きな夢をみんなで見ている。
競馬ファンにとっての凱旋門賞制覇は本当に夢で、あの武豊騎手ですらいまだ達成し得ない悲願だ。悲願だからこそこうやって小説になる(秋から始まるドラマもそうらしい)
読者として大きな夢を -
Posted by ブクログ
多聞の生き様に心打たれた。この世で会いたいたった一人の相手のために、ここまでできる存在っているのかと思うほど、波乱万丈のストーリーだった。
岩手から物語は始まり、道中様々な境遇の人に出会いながら、それぞれに一瞬の幸せを届けていた多聞。多聞に出会った人はみんな、結末は不幸に見舞われるから、感動系とは違うんじゃないかと勘ぐってた。でも読み終えた今なら何となく分かる気がする。多聞は、光に会うまでにお世話になった人に、自分という存在をもってして、最大限のお礼をしていたんじゃないかな?どうしても会いたい人がいるからずっとは一緒にいれないけれど、縁でつながった以上、相手を幸せな気持ちにした上で、次の道へと -
Posted by ブクログ
ネタバレある一匹の迷い犬が、さまざまな人間たちのもとを転々としながら、本当の飼い主のもとを目指す旅の記録です。
そしてその過程で、人間たちが抱える心の闇に、静かに光を灯していく。
犬は言葉を話せないけれど、その存在自体がまるで「救い」のようだった。
問題を抱えた人々が、犬とふれあううちに少しずつ心を開き、過去の罪や悲しみに向き合い、前向きに生きようとする姿がとても感動的だった。
だが、最初の3話ではその仮の飼い主たちが皆、最後には命を落とす。感動とともに残酷な結末が続き、「これはもしかしてブラックユーモアの小説なのか?」と疑ってしまうほどだった。
犬は、ただ癒しを与える存在ではなく、どこか遠く南西