馳星周のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
いやあ、疲れましたねえ、この本は。
馳星周なる人物の作品を読むのはかなりしんどい作業になる。
なぜか?それは、彼の作品は、人間の黒い部分を抉り出すようなモノだからだ。
人は、必ずしも正義だけでは生きていない。人格者といわれる人物も、一つ後ろを振り返ると、悪い部分が必ず存在する。イヤ、人格者だからこそ、より暗い部分が必要になる。
彼の本の登場人物は、そういったバックボーンを背負っている。
マンゴーレイン これはタイに降る雨の事を言う。乾季に入る前に決まって降るスコールの事を言う。
この物語は、タイで人買いをし、生活をする一人の日本人男性が、ある女性を国外に脱出させてくれと頼まれたところから始まる。
この女性が持つ仏像にとある秘密が存在することにより、裏社会の人間や政財界の顔役などに追いかけられる。
なにが、存在するのか?秘密とは一体なんだ?これを解き明かしていく過程に、人間の内なる欲望などが表れては、混乱をきたす。
人は、一人で生きていくことが、可能なのか?
現状から抜け出そうとすれば、あらゆるしがらみを解きほぐし、新たな命綱をつかまなければならない。
時には裏切り、時には欺きしつつ、人間関係が築かれていく。
男は、タイ人女性と結婚したが、ギャンブルに狂い、借金のかたに女房をヤクザに取られる。結局、その妻はエイズで亡くなることになるが、男は自分を許せない。弱い自分と、向こう見ずな自分との葛藤に打ち震えながら、それでも現状からの脱出を考える。
オンナは、売られてきた。幼いころから、男に買われて来て、エイズに感染する。
自分の人生を変えるために、色々な知恵を絞り、抜け出そうともがく。
人間はとてもじゃないが綺麗ではない。化粧の裏には、化け物の顔がある。
馳星周は、こんな小説を書き続ける。
聖職者にも、政治家にも、警察にも必ず、裏の顔がある。汚い奴らだ。
そして、自分も薄汚れている。
わたしは、そこに魅了される。人間の本性を鋭くえぐる文章に、魂を揺さぶられる。
おためごかしのキレイごとなど、通用しないのである。
人間の本質はキレイごとだけではない。
それが現実であり、実際には政治家も権力を持てば人が変わる
それくらいの存在なのだから
わたしにはそこまで書ききる筆力がないのだが
さいごのところでビビるのだ
精神力のなさが哀しい
いつか、これくらいの作品をと思うんだが、無理だろうな -
Posted by ブクログ
正義を押しつけて人の気持ちを踏みにじる俊郎が嫌い。夫が殺されたのにその友人にさっさと乗り換えて被害者づらする麗芬が嫌い。
善人に見えてもどいつもこいつも身勝手。悪人に見えるやつはさらに深い業を抱えていて救われない。
結局だれ一人、主人公の味方はいなかった。
だれもが主人公を騙し、利用しようと思って近づいてくる。
「しらを切れ、ごまかせ、丸め込め」「あいつを殺せ、黙らせろ」
いつの間にか主人公・加倉の声が聞こえてくるようになる。
加倉の激情に任せて書き殴ったようにみえて、緻密に構成された物語。
終盤の疾走感と、誰もいなくなった後の絶望と孤独。それでも逃げなきゃいけない焦燥。
こんなに主人公に生きていてほしいと思ったことはない。
ラストはほんのり切なくて好きだ。
複雑に絡んだ人間関係に縛られて動けないかと思いきや、怒涛の展開。
厚みを感じない一冊。
ちなみに馳星周は初読だった。 -
Posted by ブクログ
スキだね。
すごいスキだと久々にさけびたいくらい。
舞台はバブル期なんだけれども、そこで繰り広げられる
土地をめぐる命とかお金とか女とかプライドとかすべてを
ひっくるめた感じで、時代の切迫感がたまらなく酔えた。
馳星周のお決まりのパターンでアンダーグラウンドな人間が
わんさかでてくるのかと思いきや、以外に(笑)一般感覚に近い
もしくは、以前は一般感覚だった人間が多かった。
昔、某ソフトウェア会社の代表が倒産後に語ったコメントで
『金があるとね、もっともっと欲しくなるんですよ』
というのがあるのだが、なんかものすごくわかる気がした。
ラストの美智雄のポジティブさには笑った。
でも、このぐらい何かにかけないと
人生はおもしろくならないかもしれない。