馳星周のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
実母に虐げられ続ける人生を送ってきた少年が、生きる意味を御嶽山の神に問いたいと、頂上を目指す。
自死を覚悟した置き手紙を見た母親は、旧知の強力に息子の捜索を依頼する。
そこからは、少年と強力とが交互に語られる、ほぼ全編雪山のシーン。
二つ玉低気圧が接近するという悪天候が彼らを待ち受ける。それぞれの目的を果たさんと必死に突き進むが、吹き荒れる雪と濃密なガスが彼らの行く手を阻む。
のんびりと部屋で読むのが憚れるような、壮絶な雪山行の描写は馳星周氏の独壇場。著者の筆致に翻弄され続ける。
果たして息子は神に出会えるのか、強力は息子を捜し当てるのか。劇的な結末が待っている。 -
Posted by ブクログ
細かい評価は3.6ってところで、四捨五入して4.0にしました。馳星周さんの作品を読むのは2020年に直木賞を受賞した「少年と犬」以来。「少年と犬」は自分の中では結構好きだったので、そういう意味では安心して読めました。
だけど「少年と犬」とは全く違った作品の雰囲気にびっくり。裏社会を舞台にしたかなりダークな作品に仕上がっていました…サッカー賭博での八百長なども全く知らない世界だったので、社会の深淵を覗き込んだような思いがしました。
特に魅力的だったのは、主人公「暗手」が巧みに大森に八百長をさせるように罠に嵌めていく場面。
馳さんは昔そっちの人だったの、、?と疑ってしまうほど迫力満点です。
ただ、 -
Posted by ブクログ
これが馳さんのデビュー作かあ。今頃になってようやく読みましたが、結論から言うと面白かったです。
一番気に入ったのは登場人物が作者の計算を超えたところで行動しているように読める点で、理屈で考えると変だし冷静に考えると割に合わないような行動をとっているのですが、案外そういう矛盾したところも人間の一面としてあるんじゃね?的な説得力を感じました。恐らくリアリティが無いって言われるのと紙一重だと思うのですが、うまいですね。
また夏美という女性をはじめ、登場人物の誰もがイヤな人間に描かれている点も好感を持ちました。結末も結構斬新で良かったと思います。物語はコンゲーム的な要素もあるのですが、その中で元相棒の -
Posted by ブクログ
犬を題材というか主人公にした短編小説集。ソウルメイトⅡという副題がつけられているように、同じく犬を主人公にした短編小説集「ソウルメイト」の続編。前作と同じく、馳星周の犬への強い愛情が感じられる短編小説集だ。
好き嫌いが分かれる本だと思う。愛犬家の方はおそらく好きな小説集だと思う。犬に興味のない方は、さほどの興味を持たない小説集かもしれない。私自身は、犬を飼っている訳ではないが、犬は好きなので楽しく読むことが出来た。
前作の感想でも書いたが、私自身は散歩をよくするが、散歩の途中で犬を連れた人に本当によく出会う。2018年の日本で飼育されている犬の数は890万頭らしいので、それもうなずける話だ。
-
Posted by ブクログ
同作者の『神奈備』という山岳小説を読み、本作へ高い期待を持ち読み始めた!
読んで正解の一冊となる!
山岳ガイドの得丸は、雪山で大学時代の山岳部で同期の池谷と再開する。
池谷はかつて徳丸と並ぶ程の山屋であったが久々の山登りに四苦八苦・・・
どうしても山を登りたい池谷は得丸をガイドとして雇うのだが・・・
山での出会い、池谷の焦燥、不穏な影と大自然の優雅さ、そして失われた学生時代の青春と亡くした友!?
色んなものが絡み合ってるけど何故かスッキリ?
湊かなえの山岳小説は山に登りたくなるが、馳星周の山岳小説は生半可な体力と気持ちで山に登ってはいけないと思わせる! -
Posted by ブクログ
日本史で真っ先に学ぶ時代だし、残された資料が乏しいこともあってか覚える事項も少ないから、比較的記憶に残りやすい天皇黎明期の物語。なるほど、タイトルは不比等由来って訳か。天皇制にとって都合よく捏造されたという日本書紀の解釈も、かなりの説得力あり。そういった常識をひっくり返される爽快感と、テンポの良い展開に、ついつい頁を繰る手が止まらなくなる。それは間違いないんだけど、でも何というか、登場人物たちの薄っぺらさはどうにかならんものか。主役たる不比等も含め、こんなにも裏表のない人たちばかりじゃ、予定調和の展開にしかなりゃしない。ちなみに腹黒さと裏表は別問題で、不比等の腹黒さとかなかなかのものなんだけど