馳星周のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
馳星周『黄金旅程』集英社文庫。
馬の装蹄師を主人公にした競馬小説。ミステリー・サスペンス要素もあり、ディック・フランシスの競馬ミステリーのような趣きもある。しかし、あくまでもミステリー・サスペンスの要素は味付け程度で、気性が荒いが故に勝ちに恵まれない超一流の資質を持つサラブレッドをGIレースで勝たせようとする人びとの夢を描いた物語なのである。
感動の結末。まさか競馬小説で感涙するとは予想もしなかった。
かつて騎手を目指しながら挫折し、装蹄師の道に進んだ平野敬は北海道の浦河で養老牧場を営んでいた。その牧場は幼馴染の和泉亮介の両親が所有していたが、浦河出身の天才騎手だった亮介が覚醒剤所持で -
Posted by ブクログ
昔競馬のテレビゲームをやっていたこともあり、購入。
面白くて一気に読んでしまった。
気性が荒くなかなか本気を出さないエゴンウレア。
だけども、刑務所から出所した亮介、主人公の敬、そして「地元からG1馬を」と他の牧場や競馬場関係者達の熱い想いや努力によって、エゴンウレアが再び輝く姿は胸を打たれるものがあった。
敬はもともと騎手の夢があったが、装蹄師になり、亮介はトップジョッキーから、トレーニングセンターで調教師の調教をする際の馬乗りに。2人とも夢を諦めざるを得ない立場になって、第二の夢を見つけて、それを実現させる姿も、「自分も今後新しい目標ができて、それに向かって突き進んでいくことがあるか -
Posted by ブクログ
久々に、またしばらくして再読したいと思う、面白い小説に出会えた。
人間サイドからの身勝手な話ではあるが、競走馬は色んな人の思いや願いを乗せて走る。その罪深さについては、筆者も作中で何度も言及している。
その走りで人は喜んだり、胸を熱くしたり、明日への活力を得たり、また、人生を変えるきっかけを得ることもある。もちろん、逆もまた然り。
馬の走りに思いを乗せる人間の熱さ、ピュアさ、そうした、どうして競馬が面白いのか、どうしてファンたちが競馬に魅了されるのか、というひとつの答えのようなものが本書には描かれており、たいへん面白い作品でした。
主人公に「主人公感」を与えるためにヤクザとの絡みがあっ -
Posted by ブクログ
ネタバレ【あらすじ】
犬と人間は言葉はかわせない。けれど巡り会うとかけがえのない“家族”になる。余命数ヶ月を宣告された愛犬と夫婦との最後の時間を描く、渾身の中編など、涙なしには読めない七つの物語。
『今この瞬間、日本中の、いや世界中のいたるところで辛い闘病生活を送っている犬が、人にむごい仕打ちをされている犬が、死にかけている犬が、愛する犬のために涙を流している人がいるのだ。』
『カータを迎えた時から、自分より先にカータが逝くことはわかっていたのだ。ならば、失うことを嘆き悲しむより、カータと一緒にいる1分1秒を大切に思うほうがいい。逝くその瞬間まで、カータが幸せを噛みしめていられるよう心を砕く方がい -
Posted by ブクログ
久しぶりに馳さんの犬をモチーフとした作品を読んだ。改めて作者の犬に対する愛情を感じ感動した。
「ずっと一緒にいなければ、犬から教わることができない。 見返りなど求めずに家族を愛し、気持ちを汲み、辛い時や悲しい時には余計な言葉は口にせずにただ寄り添ってくれる。」
作品中の文章だが本当にそうだなぁと一人腑に落ちた。
親子関係に問題を抱えた少女が山の中に犬と暮らす伯父のもとに身を寄せることとなり、隣の別荘に住む少年と出会う。少年もまた、家族との間に葛藤を抱えている。その彼女、彼が山に癒され、犬に癒されて、成長していく姿に胸を熱くした。
最後の愛犬との別れの部分が切なくて、目頭が熱くなった。