めちゃくちゃ厚くて重い本。ジャンルは「ハードボイルド」としたが、本当は「ノワール」という、「犯罪者小説」というジャンルだそうな。ハードボイルド小説っていうのは、アイテムの描写にこだわりがあったり、主人公のこだわりが強いことで、キャラクターが立ってくるところが有るのだが、本作にはない。自分の知っている言葉で表すのなら「ヤクザ小説」。
本作は、台湾に渡った日本人野球選手が、ヤクザがらみで八百長をして云々というストーリーであり、検索するとそれなりに物議をかもしたようだ。
そしてこの作品、登場人物が全て嫌なやつ、いや、人間のクズと言っても良いのしか出てこない。前半は特に「もう読むの止めようかな」というくらい嫌になるような話が続く。そしてちょうど半分くらいに来たところで小休止し、そこからは描かれているシーンとは裏腹に、かなりスムーズに読めた。慣れというよりも描写が軽くなったからではないかと思う。
そう、全体を総じて、文章は軽い。メリケンサックで頭を割られたり銃で撃たれたりする割に軽い。そういう意味で、厚さの割に読みやすいと感じる。かと言って、繰り返し表現が鼻についたりすることもないので、語彙力も有るようだ。
ただその分、葛藤なんかの描写が「あれ?」と感じるほど無く、伊坂幸太郎や安部公房のように、同様に嫌なやつが活躍する作品よりも浅く感じてしまう。ましてや、こだわりでキャラクターをつくり上げる大藪春彦には遠く及ばない。
井上三太の「Tokyo Tribe」や、Vシネマ的な映画もそうだけど、理由もなく銃をぶっ放したり、仲間だと思っていた人間が突然裏切って殺されそうになるような、闇討ち的な恐ろしさはあるが、人間としての恐ろしさは全く描かないのが、現代のヤクザ小説なのかもしれない。
読むのは大変ではなかったが、量も内容も結構疲れさせられた。まあ、自分とは関係ない世界の小説という意味で収穫はあったし、悪い小説でもないのだけど、もう1冊買ってみるかと言われると微妙。