長野まゆみのレビュー一覧
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長野まゆみさんのご本を読むのはちょっと久々。
学生時代に大ハマりしてお店にも行ったし、『耳猫風信社』とか『少年アリス』とか何回も読み直してる。
このお話もすごく良かった。
こちらも今後何回も読み直すと思う。
まず、この『チマチマ記』という題名ね。
響きといい、由来といいとにかく可愛い。
お洒落で美味しそうでヘルシーな食べ物たち、マキマキ兄弟や他の猫たちの可愛さ。
そして、カガミさんと桜川くんの関係…!
全てが良かった。
季節ごとのコラムも、清少納言みたいなすぱすぱした語り口で読んでて気持ちよかった。
あんなフリーペーパーがあったら毎回楽しみにしちゃうな。 -
Posted by ブクログ
ネタバレおしゃれな文体だな…。
装丁が女性向けっぽかったので読んでみたら別の意味で女性向けだった。
男性同士の恋愛は「許されない恋」「人に言えない恋」という背徳的な要素がより感情にブーストをかけ、だからこそ人気のあるテーマだが、
昨今の空気からしてそういうエッセンスが薄れつつある気がする。
段々と異性同士の恋愛と同じような扱いになっていくのだろうかな。
愛人として一生を終えた母が死に、母を囲っていた父も死に、姉も死に、残ったのは自分と姉の夫(義兄)だけ。
会社では諸事情により役員の便利屋として秘密裏に行動しているため、他の社員からは何も仕事をしていないと誤解され蔑まれ、それを釈明することもできない。
そうした環境に依る主人公の精神的な脆さが随所に現れていて良かった。
最初は不思議な出来事から始まり、叶わない恋へと主軸が移り、悲しくも穏やかな話か?と思いきや主人公の不幸な境遇が明らかになるにつれ物語のテイストがどんどん息苦しくなっていく。
登場人物を出来るだけイニシャルで表記する(必要なタイミングでは本名が明かされるが、それ以降もイニシャルは継続する)のが、主人公が周囲の世界から一歩引いた形で存在せざるを得ないことのあらわれのような気がして切なかった。
文体がなんか全体的におしゃれだったな。
他の作品も読んでみたい。
普段使わないような言葉が頻出するので語彙が増えそう。 -
Posted by ブクログ
ネタバレあらすじと表紙に惹かれて初めて手に取った長野まゆみ作品を雨の多い昨今読み返したくなった。
傘や海などのキーワードとともに展開される主人公の義兄への想いが切ない。
主人公を廻る登場人物とは大人な関係が描かれるが、それも本命への純粋で叶わない恋へのエッセンスとなる。
女子としてプラトニックを恋愛の最上に置く感性はとても共感できる。
絶対に嫌われたくないから欲を見せられないのに筈なのに周囲には見透かされてるぐらいわかりやすくてそういう可愛さも垣間見える。
義兄にはムキになり強気なのに、ラグーを作りながら涙が溢れてしまったり精神的脆さを見せるのはそういう相手なのが憎い。
義兄のどっちともつかずの態度は、彼としても姉の夫という立場が邪魔することもあるのかなと希望的観測をしてしまう。
結ばれることはなくてもギリギリの絆を紡げる2人であると思う。
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猫ってそっちの猫かーい!というツッコミは他の方のレビューを事前に読んでいたので出なかった。しかしこれまで読んできた長野さんの小説の中ではとりわけ耽美でしっとりしていた気がする。大変好きです。はい。
〈猫飼亭〉という立派な屋敷に住まう美しい兄弟たち。そしてその屋敷に誘われた青年たちに起こる不可思議な出来事を蠱惑的に描いた作品集。それぞれの話は独立しているが、共通して猫飼亭の兄弟たちとの関わりを持っている。長野さんの小説にありがちな、透明な細い糸で登場人物たちが実は繋がりを持っているという構造になっている。
最初と最後のお話では大学生の梓一朗が主人公となっている。一朗は女友達との旅行費を稼ぐために学生課で紹介された猫シッターのアルバイトを引き受ける。同じく雇われた日暮星とともに猫飼亭に訪れると、屋敷の住人である駒形芳白に出会い、「猫になる」という契約を結ぶ。もうこの時点で勘のいい読者は「一朗逃げろ!」と思うが、芳白の使う隠語を理解できていない一朗はすんなりと契約を結んでしまう。しかし「逃げろ!」と思っていても本心ではこのまま溺れてくれ、とさえ願っている自分がいる。悔しいがまんまと長野さんの術中にはまっている。
またこの本のよいところは、長野さんの用いる美しい言葉遣いだ。猫飼亭を装飾する骨董品や芸術作品の数々が丁寧に紹介されていて、想像が膨らむ。また、『鳩の栖』と同じように、今回も桜の季節から始まり、四季折々の物語が展開している。
「桜の季節には、日ごろの無粋者もすこしは景色に心をうばわれ、春らんまんの花吹雪に酔いもする。」
この一文から物語は幕を開け、美酒に酔いしれるかのような心地よさに揺られる。これから一朗が体験する不思議な出来事を予兆するかのような妖しさを含んでいてどきどきしてしまう。 -
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長野まゆみさんの文章をまた味わいたくて比較的最近出たらしい本を購入。また例によって青年が主人公の作品で、読んでいる最中「好きだ~~!」と心の中で叫びをあげていた。
題名からして部屋探しストーリーなのかな?なんて思うがそんな単純な話では全くない。プロローグから、夢かうつつかわからないような遠い思い出話が始まる。あれ?これは部屋探しの話ではないのか?なんて思っていると次の章からは17歳の鳥貝くんの上京に伴う部屋探しが始まる。入学手続きを終えてから部屋探しを本格的に始めた彼は完全に乗り遅れてしまい、どこも契約済みであると諦め気味に大学の食堂で資料を広げて昼食をとっている。するとそこに、いい部屋があると見知らぬ学生に紹介され、とんとん拍子にとある洋館にたどり着く。そこは一癖ある青年たちが暮らす寮になっていて、鳥貝は料理番をするという条件で破格の家賃で住ませてもらうことになる。この料理を振る舞う場面がまた絶妙に描かれていて、想像するだけでよだれが垂れそうになる…
他の住人の中でもとりわけ癖が強いのが百合子(これが名字)であり、鳥貝と絡むとまあなんというかBL的なにおいがする。けれど、話が進むにつれて彼が重要な役回りを担うことになり、素直でないだけで優しさを秘めている(本当か?)ことが判明する。そして鳥貝も夢かうつつか思い出せないような記憶を上京を機に、そして百合子と接するうちに紐解いていくことになる。
前回読んだ『鳩の栖』といい、今回の『いい部屋あります。』も、様々な事情を抱えた青年たちが物語の主人公であることが長野さんの作品の特徴なんだな、と。そしてその主人公たちを優しく包んでくれる友達がいい仕事をしている。今回の作品は、読み終わってから再度プロローグから序盤のあたりを読み直したくなる仕組みになっていて、より楽しめた。 -
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初読みの作家さん。結論から言うとドンピシャにタイプの文章。シンプルで静かだけど、その中にも美しさが垣間見えるような言葉遣い。国語の教科書に載ってそうな、読解問題向けの短編集だけど普通に趣味で読む分にも楽しいので、こういう物語に学生時代に出会えていたらよかったのになーという感じ。
本作は表題の「鳩の栖」以外にも中学生の男の子が主人公の短編が4作ある。作者のあとがきにも書いてあるように、この本は「騒がしい思いに駆られがちな年齢の彼らの、静かな部分を描いて」いる。大人に比べればまだ不自由な身で、どこか不器用さが残る少年たちの心の奥を描いた、四季折々の物語。友や家族との死別、複雑な家族構成など、様々な境遇の彼らが何を思い、どう進むのかを繊細に描いているのが好きだな…
中でもお気に入りは「鳩の栖」と「紺碧」。病で伏せている至剛のために水琴窟を鳴らす操の描写が愛おしい。「紺碧」では真木のキャラクター性が好きだった。おちゃらけていて自分の弱さを決して見せないけれど、友達の亨には真摯に接する姿がかっこいい。 -
Posted by ブクログ
ネタバレすごくいいはなしだった。
タイトルや表紙の球体関節人形から、初期の自動人形とかが出てくるファンタジーを想像して読んだら、全然違った。
放浪癖のある父と共に色々なところを転々とする主人公。
目立たないよう、疎まれないよう、周りを観察して、上手く立ち回る術が身についている。
他人と深く関わることをしない岬が、あるとき訪れた山あいの町の古ぼけた学校で、気になるふたりの少年に出会う。
他の作品だと、書き方がちょっと卑屈すぎたり、自意識過剰だったりで読みづらいときがあるんだけど、今回はさらりとしていて読みやすく、美しい文章だった。
最後の、手紙からの流れがぐっとくる。手紙がはさんである本って最強アイテムだな…
そしてお父さんがとにかくかっこいい。大人のお父さんも、少年のお父さんも素敵。