長野まゆみのレビュー一覧
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ふと夏至南風に吹かれたくなって。
腐りきった夏がやって来ました。叛骨心よ!
どことなく三島由紀夫『午後の曳航』を思い出す本作は、長野さんも愛する代表作で、頁という頁にわたって、腐爛した、湿り気のあるグロテスクなモチーフが鏤められています。しかし、その悍ましさは果実のように妖潤であり、ひと夏の惨劇でありながらも永遠にちかしい時間の粼に何度恍惚としたことか! 碧夏との出逢いから、サディスティックな眉姿の潜む鬱々とした地下部屋に検疫公司の廃墟、近親相姦に峻拒の囁き、絶望の怨嗟を彷彿とさせるラストシーン…。「醜悪ながらも美しい」とはこの手の作品を形容する時に使われがちですが、まさしく本作がそれで、 -
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色んなテーマが上手く織り交ぜられていて、よかったです!
主人公、鳥貝は建築の大学に合格して地方からやってくることになった。
それで住む場所を探しているが、遅れをとったみたいで良い物件が見つからず…
そんなある日学食にいたら時屋という人に月1万円の男子学生寮を進められ安羅や多飛本に会い、謎のひつじを渡され学生寮に見学に…
そうすると玄関前で百合子という人に会う。
急に同性の百合子にキスされ…
他にも白熊に会ったり…
学生寮の人達は名前も性格も変わっていて、食事を作らせて意地悪をして泣かせるのを趣味にする人も!
本を読み進めると、学生寮の人達と鳥貝の兄?の関係も解き明かされていく。
男同士の絡 -
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ゆで玉子が食べたい!
こういうお話、好きです!予備知識なく初めて読んだ時は、「な、なんといかがわしい!」と思いながらとても楽しんでしまいました。
男性同士の性的な会話や描写が毎回でてくるので、苦手な方は注意が必要かと思います。
長野先生が使う言葉や描写が幻想的で、いつの間にか現実からおかしな世界に迷い込む感じがくせになってしまいます。暮らしの描写も丁寧で、こんな世界で暮らしてみたい!と思う表現がたくさん出てきます。
そしてなにより、桜蔵の弟の千菊がしょっちゅうゆで玉子を持って出かけるのですが、その書かれ方がなんだか凄く良くて、無性にゆで玉子が食べたくなってしまうのです。 -
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毎晩の読み聞かせで最近のお気に入り。
秋の新学期から翌年の夏季休暇まで、アビと宵里(しょうり)、2人の少年が過ごした一年の日々を描く。
私の高校もインターナショナルだったので、9月生を迎える秋の季節を懐かしく思い出した。
宮沢賢治の銀河鉄道の夜に出てくるジョバンニとカンパネルラにも似た2人の少年の幻想的な世界観が美しい。
息子もちょっと大人びて天才気質の雰囲気の友人と深く付き合うことが多いので、2人の少年の日常という場面設定がしっくりくるようで、毎晩のように天球儀文庫読んで、とリクエストしてくる。
毎晩のイメージトリップが楽しくなる一冊。 -
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長野まゆみさんのご本を読むのはちょっと久々。
学生時代に大ハマりしてお店にも行ったし、『耳猫風信社』とか『少年アリス』とか何回も読み直してる。
このお話もすごく良かった。
こちらも今後何回も読み直すと思う。
まず、この『チマチマ記』という題名ね。
響きといい、由来といいとにかく可愛い。
お洒落で美味しそうでヘルシーな食べ物たち、マキマキ兄弟や他の猫たちの可愛さ。
そして、カガミさんと桜川くんの関係…!
全てが良かった。
季節ごとのコラムも、清少納言みたいなすぱすぱした語り口で読んでて気持ちよかった。
あんなフリーペーパーがあったら毎回楽しみにしちゃうな。 -
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ネタバレおしゃれな文体だな…。
装丁が女性向けっぽかったので読んでみたら別の意味で女性向けだった。
男性同士の恋愛は「許されない恋」「人に言えない恋」という背徳的な要素がより感情にブーストをかけ、だからこそ人気のあるテーマだが、
昨今の空気からしてそういうエッセンスが薄れつつある気がする。
段々と異性同士の恋愛と同じような扱いになっていくのだろうかな。
愛人として一生を終えた母が死に、母を囲っていた父も死に、姉も死に、残ったのは自分と姉の夫(義兄)だけ。
会社では諸事情により役員の便利屋として秘密裏に行動しているため、他の社員からは何も仕事をしていないと誤解され蔑まれ、それを釈明することもできない -
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ネタバレあらすじと表紙に惹かれて初めて手に取った長野まゆみ作品を雨の多い昨今読み返したくなった。
傘や海などのキーワードとともに展開される主人公の義兄への想いが切ない。
主人公を廻る登場人物とは大人な関係が描かれるが、それも本命への純粋で叶わない恋へのエッセンスとなる。
女子としてプラトニックを恋愛の最上に置く感性はとても共感できる。
絶対に嫌われたくないから欲を見せられないのに筈なのに周囲には見透かされてるぐらいわかりやすくてそういう可愛さも垣間見える。
義兄にはムキになり強気なのに、ラグーを作りながら涙が溢れてしまったり精神的脆さを見せるのはそういう相手なのが憎い。
義兄のどっちともつか