山下紘加のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ネタバレ【あらすじ】
ほしくて、ほしくて、たまらなくほしくて、いったいどうしてほしいのかも、本当にほしいのかももはやわからないーー。
中原多恵(33歳・既婚)“普通”でありたいために、夫でなくてもかまわず、ネットで見つけた好条件の男から精子を購入。
「みんなに平等に与えられる当然の権利を、自分だけが剝奪された」
守山みつき(33歳・独身)多恵の大学時代の同級生、雑誌編集者。理想を追い求めるマチアプのヘビーユーザー。
「目の前の男を好きになれる可能性を見出そうとしてる。キスできるのか、セックスできるのかと自分に問うている、常に」
安西桃(20歳・独身)推しが全てで、推し活のためにいい加減な -
Posted by ブクログ
凄かった。エッセイというものをほぼ読んだことがなかった私にとって強烈な読書体験だった。
ほんタメというYouTubeチャンネルで紹介されており興味を持って読んでみた。これは、映像化はきっと難しい、本という媒体のみを通して伝えられる感覚だと思った。
共感できる部分も多く、一方で共感できなかったあの子の振る舞いはこんな感覚にルーツがあったのではと思い至るところもあって、強烈に胸に響いた。私の感じたもやもやを言語化してもらったようで嬉しさもあった。自身も女性性を元とした経験はポジティブ面、ネガティブ面ともにあり、同じような経験をした作家がそれをどう捉えるかを聞けたことが嬉しかった。
性に関する体験を -
-
Posted by ブクログ
女性にとって、結婚して子どもを産み育てること一つとっても生きづらい世の中だと感じた。そこに価値を見出すことは人それぞれとして、結婚妊娠出産育児が普通であり、女性の幸せであり、社会的規範だと執着する多恵や侑美の欲望は異様に思えたが、そんな風に追い詰められるのは、本の世界だけではなさそうだ。
普通への欲望は、夫に内緒で精子を購入するなど、極端な行動となって表れ、自分のほしいものを充足させるために、周りを道具にしたり、自分の望む役割に当てはめたりする。普通でありたいという欲望を満たすことが誰かの苦しみになっていることにも気づかず、突き動かされている彼女たちが本当に手にしたかったものは何だったのだ -
-
Posted by ブクログ
「私の身体」を「生きる」とは何だろう。いや、「私の身体」とは何だろう。そもそも、「私」とは何だろう。
各作家たちの切り口は様々だが、みな共通しているのが、己という存在を不可欠に構築するこの肉体というものの生物的な役割にも社会からの眼差しにもかなり戸惑い、苦しみ、受け入れたり受け入れられなかったりしながらどうにか生きている点で、強く連帯感を持ちながら読んだ。
痛ましさを感じたのが、執筆陣の女性たちはほぼほぼみな性被害の経験がある点。私にもあるし、私の友人たちもほとんどあると思う(学生の頃、痴漢が話題になったとき、その場にいた10人ぐらいのなかで痴漢に遭ったことがない子は1人しかいなかったことを -
-
-
Posted by ブクログ
先日亡くなった祖母と母の関係を思い出す。
老いや孤独を武器に好き放題に悪態をつく祖母に母は頭を悩ませていたし、時には泣いたりしてた。
老いからくる孤独感や疎外感、自分が思うように身体がついてこないことへの苛立ちなどは、自分がその状況に置かれなければ完全に理解できるものではないと頭の隅では理解しているから、こちらは同じ熱量で張り合えないし、張り合ってしまったことを反省したりする。
相手はじいちゃんに先立たれて施設で1人暮らしているおばあさんやぞって。優しくしてあげないとあかんやろって。分かってても、イラついてしまう。分かっていることとイラつかないことは同義ではない。
お人好しで気使いな母を介 -
Posted by ブクログ
「掌中」
かつて友達だった人の子どもは結婚し、孫までいる人もいる中、自分の子どもは引きこもりで、これと言った楽しみもない。そんな中、スリルを求め万引きに走ってしまう女性が描かれていた。自分の大切に育てて来た息子が世間から見たら「失敗作」のようで、それが受け入れられなくて、どうしたら良いか分からない。親が1番乗り越えるのが難しいことそれは、子どもが自分たちの思い通りにならなかったことだと聞いたことがあるが、それが引きこもりとなると、四隅が塞がった感じがし、救いようのない印象を受ける。あの時、ああしていれば、こうしていれば、過去の楽しく、輝かしい記憶が邪魔をし、それが現在との対比で苦しくなる原因に -
Posted by ブクログ
幼い頃から一緒に暮らしてきて、かわいがってもらった時期や、甘えていた時期もあったはずなのに、今ではわずかでも肌に触れることに抵抗を感じ、日常的な会話のキャッチボールをするのにも妙な緊張感を覚える。(p.14)
食べることが生きることに直結しているのだ、おそらく、本能的に。(p.17)
あたしにとっては、行儀やマナーの問題ではなく、理性より先に欲が勝る感じが、人間の本質を見ている気がして怖いのだ。(p.30)
夢を応援してくれるのはありがたいが、話を聞いてほしいかわりに、放っておいてほしい。関心を持たれたり、踏み込まれるとかえって疎ましい。しかしそのあまのじゃくな性質を、きいちゃんの前ではうまく -
Posted by ブクログ
しかし、物心ついた時から自然と根付いている「出された料理はきちんと食べきらなくてはいけない」というモラルの肥大化が焦燥感に拍車をかけたいた。倫理観を持ちながら、好きなだけ食べていい状態から、食べ物を差し出される状態は何か禁忌でも冒しているようで、ハイになる。気がつけば「普通」の感覚が逆に自分を麻痺させ、興奮を煽る。(p.11-12)
DMやコメントにはひと通り目を通し、見たことが相手にもわかるようにハートマークの「いいね」をタップする。反応を示せば、また反応が返ってくる。きりがない。時間もエネルギーも消耗する。(p.32)
食べる行為が自分を満たすための行為であり、色に対して貪欲であることは、