映画「兄を持ち運べるサイズに」の原作だと知り、読んでみた。フィクションの小説だと思っていたが、主人公の名前が著者と同じであること、現在の生活環境も同じようであることから、どうやら実話のエッセイのようなものかと気づかされた。
遠く離れた宮城の街から届いた兄の死の知らせと、未成年の息子を除けば唯一の肉親(妹)であることから兄の死後の"終い"をすることとなった主人公・"私"(村井理子さん)。"私"の叔母や、兄の前妻・"加奈子ちゃん"、前妻との娘・"満里奈ちゃん"と共に兄の死後の手続きや、アパートの後片付け、死ぬ直前まで兄と一緒に暮らしていた息子・"良一君"(前妻との子)の身の上の手続きに関して奔走する様は本当に大変そう。そして、良一君がいくら加奈子ちゃんの実の息子だとしても、親権者が亡くなった以上、親権者の血縁者の立ち会いがないと自由に会えないし、引き取りにも時間がかかると知って驚いた。子どもを守るためには必要だろうけど、父の遺体を見てショックを受けているなか、母が来てくれているのに数週間施設や里親の元で過ごさなければいけないのは大変だなぁ。(今回のは施設も里親さんも本当に良い人だから救いだが)
本を読んでいる限り、亡くなった"兄"はどうしようもない人間に見えるし、その兄を優先し続けて父の遺した喫茶店を水商売に替えた主人公の母も"私"をないがしろにしたどうしようもない親に思える。ネットの言い方を借りれば"長男教の毒親"だろうか。
それでも、"私"は兄に対して「どこから見てもダメな人だったけど、こんなに突然死ぬほど悪いことでもしただろうか?」(p.64)と想いを馳せる。そして、ゴミ集積所で兄の遺品が詰め込まれたゴミ袋を次々と投げ入れながら、兄に対する怒りやそれまでの確執も一緒に捨てていく。"私"、村井理子さんは気持ちに折り合いをつけながら、兄の最期を送る優しい方なんだろうななと思った。
"私"が、兄の前妻・加奈子ちゃんや、兄の娘・満里奈ちゃん、息子・良一君と共に兄を送った5日間の記録。
読んでいるこちらも一緒に葬送の旅をしているようで面白かった。ついでに、多賀城の街に行ってみたいなと感じた。