村井理子のレビュー一覧
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感情の振り幅の大きな人が集まると、家庭は安心できるどころか、こんなにも危うい場所になってしまうのかと思う。
母や兄の唐突で不可解な行動が非難されがちだが、二人に対する父や著者自身の拒絶にもベクトルは真逆だがかなり極端なものを感じてしまい、その意味で書き手や登場人物への感情移入は難しいのに、どういうわけか、一気に読み終わったあと、涙が溢れてしまった。
「毒親の一言で母を、そして父を片付けようとは思わない」
最後に登場するいま現在の著者自身の穏やかで平凡な家族の姿と、それを目指しても離れるばかりでどうにも辿り着けず苦しみ通した四人。でもそれがかけがえのない家族のあり方だったのだと、年月を経て噛 -
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文庫本で600ページに及ぶが、ある家族の7人きょうだいの末っ子の女性に、これがドキュメンタリーかと思わせるような事件が次々に起こり、目が離せないうちに短時間で読み終わった。原理主義的モルモン教徒の父親の下で社会から孤立して暮らしている家族の物語は、最近日本で話題になっている旧統一教会の親との関係で悩んでいる宗教二世を思い出させた。終末論や陰謀論を信じて疑わない父親による支配と兄弟による暴力、そして夫に支配され子供を守らない母親から逃げ出すようにして飛び出した著者は奨学金を得てケンブリッジ大学からハーバード大学まで進んで博士号を取得した。そこでハッピーエンドと思いがちだが、親子や兄弟の関係は変わ
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こんな現実があり得るなんて途中まで信じられなかった。作り話しを読んでいるのかと思った。でも、そんな残酷な現実から抜け出そうとあがき、もがいて自分の道を切り拓いた彼女がいるのは事実なのだから、これが作り話しだと言うには失礼すぎるだろう。
酷い仕打ちを受けてなお、ケンブリッジで博士号を取得してなお、彼女が家族への愛を捨てていない事実にも心が震えた。教育を選ぶか、家族を選ぶか迷い、教育を選んだことで家族を失う現実に直面し、大きな悲しみに心神喪失する彼女の愛情深さ。両親や兄弟と分かち合い、穏やかで平穏な暮らしをどれほど望んでいたのだろう。今もきっと望んでいるはずだ。
この本に書かれていることを、私 -
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プロローグ 古ぼけたアパートで始まる
「川沿いの砂砂利を少しだけ港に向かって歩いた場所に、さくら荘はあった。」
まるで自分の目の前で
起きているかのように
「家族」が壊れていく。
胸が締めつけられて辛い、
しかしズーンとした重たさはなく
読み続けられてしまう。
著者はこの本を書くことで
「家族」を心の中に
取り戻せたのかもしれないと
エピローグを読んで思った。
「琵琶湖のそばの田舎町に
私は二人の息子と夫、
そして愛犬とともに暮らしている。
(中略)
育った家とは
正反対の穏やかな空気に
満ちたこの家で、常に心の片隅に
両親と兄の存在を感じながら、
私は暮らしている」 -
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人生のピークは遅いほうがいい
ヨシタケシンスケさんの言葉を村井さんが引用したものだ。
そうだよね?やっぱりそうだと思ったんだーと心の中で拍手をする。
村井さんファンになって浅い私も2冊目を読み、益々読んでいて心強さを感じるほどのファンとなっている。
何か一つ、これというものを心に持っているのっていいですよ!
自分を見失わない私の暗示はきっと“英語”だと思う。
好きがこんなに長く続いているのはもはや呪文だ。
そんな村井さんが安心と心地よさを感じ、コーヒー片手にゆったりとソファに座って隅々まで楽しみたい柘植文さんの本(をはじめ、積読増加!)。
楽しく年齢を重ねる人は、1人で動くのが上手だと -
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「私が一番大事にし、ケアしなければならないのは自分自身だったというのに、それを怠っていたのだ」
「心臓手術を経験してからの私は、何に関しても、まずは自分のことを優先させる練習を重ねた」
「自分を優先させて、体を休めることは悪いことではない。その点を自分自身に叩き込むのには、しばらく時間がかかった」
女性は他者優先、家族優先になり自分を大事にすることは後回しになるからなぁと首がもげるほど頷く。
筆者にすっかりハマり、4作目。
ハードな入院生活なのに客観的な描写で読みやすく、
今回もすらすらと読み終わった。
村井理子氏の本、次は何を読もうかな。
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これら、自分の周りの大切な世界を、自分や家族のために住みやすくしていく、愛の話である。
好き!!
川添むつみさんのイラストもどタイプ!
村井さんの本、追い続けます。
年上のワーキングマザーさんで、息子さんたちが高校生。英語を使う仕事をされている。
学ぶことしかないです。
道を譲ることでできた時間で、その人を観察する。
その人もちょっとラッキーを感じてくれる。
村井さんが執筆に生かすなら、私は英語に生かそう。
仕事もある程度しながら、家事や他の家族の支度もしなくてはならない。
その中で苦手で好きじゃない家事はある。人間だもの。
その苦手を少しでも“楽しく”するように、作業の前倒しのために、 -
Posted by ブクログ
まず、すごかった。教育の力が、というよりもなによりも、誤った信念という暴力。そして誤った信念から生じる物理的な暴力。すさまじい。
ノンフィクションであり、筆者であるタラ・ウェストーバーの自伝。
サバイバリストであり狂信的なモルモン教徒である両親とその7人の子供を中心に、子供の1人であるタラがいかにこの狂信の渦から脱するのか、その過程でキーとなる教育とそれが彼女に与える影響を著者自ら回顧しながら生々しく、本当に生々しく描かれていく。
特に彼女の兄の、彼女への物理的な虐待の描写は辛い。
読みながら何度も、一刻も早く逃げて欲しいと祈る。
そして、それでもなお、家族と家族でありたいと望む彼女に無力 -
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書かれているのは、母なら、娘なら、嫁ならば、
いつかどこかで感じた出来事、のような気がする。
モヤモヤしたり、元気になったり、
自分を立て直したり、と、確かにあったこと。
しかし、それぞれのシーンの中で
感じたことも言葉にできず、うやむやに忘れ去っていたことを
しっかりと的確に書かれていて、
そして、それは大切なことだったのだ、と
気づかせてくれることが多かった。
何度も心が震えた。
著者の作品をもこれからもっともっと読みたいと思った。
>>備忘録として
P124
指の間からこぼれ落ちそうになったいたものを、なんとか失わずに済んだ。
また落とすのではないか、またすり抜けて