上遠野浩平のレビュー一覧
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「空を飛ぶ」ということはどういうことなんだろう?
例えば、「地面から足が離れた状態」とした場合は、椅子に座って足を投げ出していても空を飛んでいることになる。
じゃあ、「地面と肉体の接点が直接的・間接的を問わず無い状態」としたら、ジャンプしている時も空を飛んでいることになる。
じゃあ、「地面と肉体の接点が直接的・間接的を問わず一定時間以上無い状態」とした場合も、たかいところから落下している時も飛んでいることになる。
おそらく言葉を付け足して付け足して、厳密にしていけばそれっぽい定義が出来上がるのだろうけれど、もはやそれは多くの人が認識している「空を飛ぶ」こととは別な状態な気がする。なぜなら、空を飛ぶってことを多くの人はそこまで厳密に捉えていないからだ。
なんとなく空を飛んでいると思うから。そう、なんとなくだ。
その抽象的で曖昧な認知の隙間に付け込んでいるのがマジックなのだろう。
飛行機は空を飛ぶ。それに異議を唱える人はまずいない。みんな飛行機は空を飛ぶと思ってるから飛行機は空を飛ぶ。
だけど、じゃあマジシャンが空を飛ぶのはどうだろう?
タネも仕掛けもある前提でやっているマジシャンがある日突然「私は空を飛べます。残念ながらこの能力にはタネも仕掛けもありません」と言って空を飛んだら?
他のどんな優秀なマジシャンや科学者もそのタネも仕掛けも見抜けず、もう認めるしかないとなった時、はたしてそれは本当に空を飛んでいると言えるのでしょうか?
真実を知るのは本人のみだけど、その本人が口を閉ざしてしまったら、もうそのマジシャンが空を飛んでいると認めるしかない。だって、全員にそう見えているから。
世界は認知の賜物だって言葉をどっかで聞いた覚えがあるが、これはまさにその通りなのかもしれない。天動説だって昔は真実だったわけで、みんながそうだって言えばそうなってしまう。怖ろしい。
本書を読んでそんなことを思ったのでした。ストーリーとかはガン無視。上遠野さんの本に限ってはあまりストーリーは大事じゃないと思ってる。 -
Posted by ブクログ
抽象的なものを抽象的なまま描くことっていうのはただでさえ難しく、ましてや小説は文章(言葉)だけで表現しなくちゃいけない。
漫画や音楽にはそれぞれ、絵や音に加えて言葉もあることを考えれば、その難しさは想像を絶する。
けれど、恐らくそれをやるだけならば、それほど難しくはないのでしょう。上遠野さんの凄さはそれをこなすだけじゃなくて、それがちゃんと小説の形を成していることだと思う。
ストーリーが敷き詰められていて、その上を登場人物達が動き回る、秩序を作り出している。
それこそ期待である酸素を固めて、目に見えるようにするレベルの芸当でしょう。
酸素は人間に必要不可欠なものではありますが、酸素濃度が高過ぎれば人間は死にます。
これをどう捉えるかが問題なんですが、私は「酸素は毒にもなりえる」と今まで捉えてました。
けれど、本書で語られるのは「酸素は毒で、人間は生きて行くために毒を吸っている」という視点であり、それにとても納得した。
その考え方の方がしっくりくる。
例えば、全ての毒を排除して綺麗な空気、水、食料の中で生活している人間はそこから出てしまえば本当に脆く、すぐに感染症にかかって死んでしまうでしょう。
つまり、強く生きようとするならば、毒は必要不可欠。けれど、毒はあくまでも毒であるためにあまり摂取すると死んでしまう。その調整が難しいってことなんだろう。 -
Posted by ブクログ
前の禁涙境事件からかなり年月が経っての出版で待ちわびていました。
でも、イラストが金子さんから変わってしまったのがかなり残念です。
イラストも楽しみにしていたのですが、世界観は気に入っているので続けて読んでいこうとは思っています。新書で買い続けている小説はこれだけですので・・・。
内容は残酷号の大活躍と苦悩といったところでしょうか?
ファンタジーにミステリーが薄まり、ヒーロー要素が追加されて少し異色でしたが相変わらず面白いです。登場人物のロードマンが名前の響きが気に入っていたりします。
次巻は「無傷姫事件」
何年後に発売されるか分かりませんが、気長に待ちます。
おそらく月紫姫が出てくると期待・・・。 -
Posted by ブクログ
ネタバレブギーポップシリーズ以外で初めて手にする上遠野さんの小説。
期待していた以上のものでした。世界観も登場人物も小説の構成も全て好きです。一気に読み終えてしまったほど楽しかったです。
読んでいてなんとなくガンダムを思い出すような話でした。トモルと夢幻のシーンはどれも好きなんですが、中でもトモルが感極まって夢幻に想いをぶつけるシーンには胸を打たれました。トモルだから言える台詞。トモルにしか言えない台詞でした。口絵もお気に入りで中でも「出逢い」の絵は格別です。登場人物はリスキイ妹が最も好きです、あの健気さがいい。
物語は、二人の未来もこの戦争の行方も、何もかもわからないままに終わってしまうんですが私はあえてこのままであってほしいと思っています。ちゃんと完結する話が好きな一方でこういう風に読者の想像に任せるような話も好きなので。ただ、この世界観はすごく気に入ってるので何か違った形でまた読むことができたら嬉しいです。 -
Posted by ブクログ
“魂の一滴(ソウルドロップ)”と引き替えに命を奪う……!
神出鬼没の謎の怪盗 vs 異能の私立探偵
話題沸騰!好評ソウルドロップシリーズ第2弾!
「あの事件は終わっていない―」私立探偵・早見壬敦は、禿猿山で出会った不思議な人物から謎の言葉を聞く。杜名賀家の離婚問題調査で長女の過去に興味を抱き調べている時であった。その山は、二十年前一家を襲った惨劇の舞台だったのだ……。一方同じ頃、杜名賀邸では庭が爆破され、怪盗“ペイパーカット”の予告状が発見される。神出鬼没の怪盗を追うサーカム保険の調査員伊佐俊一と千条雅人が現場に急行、生命と同価値のものを奪う怪盗の標的が早見ではないかと不安を抱くが……。