丸山正樹のレビュー一覧
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100人以上の入居者のいる特別養護老人ホームで働く新人介護士のお話だ。もちろん文章ではあるが介護現場のリアルが多少なりともわかった。
どこからともなく漂う便臭、認知症による徘徊、陰部洗浄、宿便対応、孤独な入居者の事情、そして死…果たして自分にはできるか…そして現実問題として、これから我がオフクロを施設に入れてお世話になることも充分に想定しておかねばならない…
派遣切りにあい仕方なく就職し、最初は嫌々いつ辞めようかと働いていたが、仕事を覚えるに連れ、やり甲斐等を見出して成長していく主人公が逞しく思えた。
本編の解説は、なんとメイプル超合金の安藤なつさんが書いている。もともと介護施設でお手伝い -
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前の二作品を読んでから少し時間が経ってしまったので、読み返してから手に取りました。
「聞こえない」ということは、世間的には「障害」といわれることもありますし、日常生活の中で苦労することも多々あるのだと思います。
それでも、「日本手話」という言語と「ろう」という文化をもち、暮している彼らの生きざまは決して不幸ではありませんし日々の生活の中での出会いや感情の機微は、「聞こえる」「聴こえない」という特質による差はなく、みな一人ひとりの人間なのだと改めて感じます。
CODAとして育った主人公・荒井がついに家族を持ったあとの4つのエピソードからなる連作短編集ですが、読後感は暖かく、ますます作品の世界 -
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この作品は、「コーダ」(両親ともに、もしくは一方がろう者・難聴者でも、聞こえる子ども)が主人公である。これまで、障害を持った方を中心に描いた作品は多かったが、コーダという視点はあまり無かったのでは無いか。私自身、コーダという言葉を初めて聞いたということもあり、学べることも多かったが、あくまでも推理小説であるので、あまり同情を買うような話でも無く、非常に読みやすかった。
また、徐々に事件や主人公についてのことが分かっていくため、読み進めていく面白さもあり、最後は少し心がざらっとするような感覚があった。
是非多くの人に読んで頂きたい作品であった。また、他にもシリーズがあるようなので読んでみよう -
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「デフ・ヴォイス」シリーズの第3弾
聴こえない人たちが直面する様々な現実を、前作よりも更に深く、読者に突き付けてくる内容だった。
医療へのアクセス、
教育機会へのアクセス、
聴者が抱く「クールなパフォーマンス」としての手話の「イメージ」と、ろう者にとっての「言葉」であり「文化」である手話のギャップ、
職場内での差別や孤立、
それらと並行して、尚人と妻のみゆき、みゆきの連れ子である美和、尚人とみゆきの間に生まれた「聴こえない子ども」である瞳美が、徐々に「家族のかたち」を作っていくストーリーが描かれている。
読み終えてからあらためて表紙を見ると、少女のポーズの意味が分かってキュンとする。
今回も、 -
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デフ・ヴォイス続編。
「障害を持つ者が馬鹿にされ、それに気づかないわけないのだ。見下されていることを理解し、そのことに深く傷つき、そして悔しさを胸にしまう。そうやって生きてきた。」
ろう者、難聴者、中途失聴者、そしてコーダ、それぞれの世界の違い、その中での葛藤がリアルに描かれている。
今回は場面緘黙症の少年も、荒井の娘美和ちゃんの同級生として登場し、重要な役どころとなる。
第3話ではミステリー要素も強くなり、ドキドキした。
英知くんと美和ちゃんには、たくさんの笑顔で過ごしてほしい。荒井さんが優しくて、弱者と社会のかけ橋になってくれていると感じた。第3弾でまた会いたい。
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【「龍の耳を君に」丸山正樹】
「デフ・ヴォイス 法廷の手話通訳士」シリーズの第2作。丸山正樹さんの作品は、ミステリとしての面白さと、社会の中で見過ごされている課題への気付きが相乗りしている。読んでいる間はすごくドキドキ・ モヤモヤするのに、読後感か爽やかなところが好き。
不十分な通訳で無実の罪の被疑者となってしまった林部、
日本語対応手話での取り調べに応じなかった新開、
手話によって「自分の言葉」を得た場面緘黙症の少年、英知。
「意思を自分の言葉で伝える」ということは、「尊厳」そのものなんだと思った。
ろう者や日本手話、ろう教育の歴史などについても多くを知ることができる。その丁寧な描写から -
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デフ·ヴォイス シリーズの第三弾。
手話通訳士の荒井尚人が依頼を受ける人々との関わりの中に、大切な事がこの世には沢山ある。ということを教えてくれる。
昨年は草彅剛さん主演でドラマ化もされました。
このシリーズでは新井さんに新しい家族が出来ます。父となった新井さんは少しずつ心ほどかれ、柔らかな表情を見せてくれる。
私は、このシリーズを読み、初めてコーダや手話表現、ろう文化など沢山の事を知りました。耳が聴こえないことの生きづらさも物語を通して初めて知ることばかりで、自分がいかに何も知らなかったかをしり愕然としたものでした。
もっともっと沢山の人に、この本を読んでほしい。
そして、皆がお互いに歩み -
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「デフ・ヴォイス」シリーズで、いつも憎まれ口をききながらも主人公の荒井尚人をフォローする埼玉県警の刑事・何森。
昔気質の刑事である彼を主人公に据えた短中編集。とても面白く読んだ。
短編2作。多発している窃盗事件と同一犯という本部の見立てに疑問を感じたり、被疑者の男の一貫性がない供述に違和感を覚えて、独自の捜査を始める何森。
それを通して、彼の刑事としての優秀さや、にもかかわらず昇進もせず所轄署をたらい回しにされる期し方や、刑事という仕事への執着が分かっていく。
さらには、捜査の線上に浮かぶ、頚髄損傷、共依存、供述弱者といった人々に対する温かい眼差しも感じさせ、「デフ・ヴォイス」シリーズで知っ -
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いやあいっぱい詰まってた。康介の介護士の仕事の成長(人としても)が読んでいてわかりやすくて、風俗で発散して自分の心のバランスをとるとか、でも同窓会で言われた重労働がバランス取れるのかって今でも思うけど、お菓子にカップ麺を食べるとか。ラスト依田さんの事件も、園の本音と建前とあるのが切ない、自民党のダメな政策のせいで、安い賃金で働く外国人も、6人に2人しかいない正社員も、あーなんでこんな国になっちゃうの?しか思えない。あとラスト依田さんない語り掛ける場合が何故かジーンときてた。あとオムツ換えにお風呂に陰部を洗うにお尻の穴に指入れてクソを掻き出すとか自分の親に出来るのかと考える