丸山正樹のレビュー一覧
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小学4年生の美和ちゃんが主人公のお話。
子どもたちにとって大きな「事件」がおこり、どんどんうわさになって広まってしまう様子も、なんとかしなくちゃと「事件解決」に乗り込む冒険も、子どもの世界らしくて共感がもてる。
地域の人に話しかけて積極的に行動する姿がほほえましくもあった。自分は、めんどくさそうなことにできるだけかかわりをもたないように暮らしてしまっていることに、反省の念をもちつつ、しかしこんなふうに行動できないよなと肯定したりして、少し複雑な気持ちになった。
とはいえ、こういう、子どもが実生活の中でちょっと無茶しちゃう冒険物語は大好きな分野である。
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コーダ(ろう者の親を持つ聴者)である過去から逃げるように生きてきた荒井尚人。手話通訳士となった彼が、ある法廷通訳を引き受けたことから物語は動き出す。
本作を通じ、日本手話と日本語対応手話の違いや補聴器のノイズなど、聴者側の無理解を突きつけられた。さらに過酷なのは、ろう者同士の対立や差別だ。
幼少期の尚人の回想。
転んで泣いても気づかず遠ざかる母の背中に「あぁ、聞こえないんだ」と悟る場面。甘えを殺し孤独を飲み込んできたコーダの痛みに、強く胸が締め付けられた。
後半のミステリー展開には少しフィクション特有の物足りなさも覚えたが、
ラストに響く「デフ・ヴォイス」{聾者が発する声)には涙があふれた。ろう者か聴者か、敵か味方かという二元論ではない。
二つの世界の狭間で傷つきながらも、己の立場と生きる道を見出した姿に未来を見た気がした。 -
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11冊目の丸山正樹さんはデフ・ヴォイスシリーズの第5弾。なんとこれでシリーズ完結なんだそうです。大好きなシリーズなのでさみしいです。
こちらのシリーズは、コーダ(耳の聞こえない両親から生まれた耳の聞こえる子ども)であり、手話通訳士である荒井尚人を主人公とした社会派小説です。
今作では荒井の妻で警察官のみゆき、みゆきの連れ子で高校生の美和、生まれつきろう児で小学生の瞳美、の家族4人を中心としたお話でした。表紙の手話は「家族」を表しているそうです。
「CODAコーダ」はもちろん知ってましたが、美和のように「聞こえない兄弟姉妹をもつ聞こえる兄弟姉妹」のことを「Sibling Of Deaf Adult/Children(シブリング・オブ・デフ・アダルト/チルドレン」略して「SODAソーダ」と呼ぶんだそうです。
ちなみに重い病気や障がいのある子どもの兄弟姉妹のことを「きょうだい児」と呼ぶそうですね。こちらはこのお話には出て来ませんが、最近知りました。
盲ろう者や指点字については、以前、東京大学で盲ろう者としては世界初の大学教授となった福島智さんの著書『ぼくの命は言葉とともにある』や福島さんの半生を描いた映画『桜色の風が咲く』で履修済み。でも触手話は初めて知りました。
美和の受験や恋愛だったり、みゆきの仕事、さらに瞳美の教育問題などなど…荒井家を通じて家族のあり方や社会的な問題まで考えさせられます。
シリーズ最初の頃の荒井は、ろう者たちに対して一歩引いた関わり方だったような気がするんですよね。そんな荒井がろう者たちの気持ちを代弁するまでに…そんな荒井の変化にも胸がアツくなりました。
描き方は感情的にならず丁寧で、ラストも大団円ではないところが、とてもリアルで丸山さんの真摯な姿勢が伺えます。
丸山正樹さんの著作はいつもあとがきも楽しみにしています。丸山さんのこちらのシリーズへの思い入れも知れて嬉しい。
デフ・ヴォイスシリーズは残念ながらこれで完結ですが、スピンオフの『刑事何森』シリーズは続編があるらしいので、楽しみに待ちたいと思います。 -
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手話通訳士荒井。妻のみゆきは警察官、長女美和は高校生、次女瞳美は小学生。みゆきは望みの仕事に就きたいなら、上層部から〇〇しろと言われる。美和は恋と受験に悩む。瞳美の日本手話ができる先生が辞めてしまい、授業が分からなくなってしまう。
素晴らしい小説だった。手話やコミュニケーションについて大いに考えさせられる。たぶんネタバレにはならないかと思って書くと、ラストの裁判のシーンが圧巻だった。リーガルミステリーを読むと、殺人事件の裁判について多く書かれているので読む機会はあるが、こういうタイプの裁判について読む機会はなく、新鮮であり、かつ裁判における双方の言い分のぶつかり合いとそれぞれの巧さが読ませる。シリーズは終わりなのが残念。 -
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冒頭から惹き込まれ、先へさきへと急ぎたくなる物語だった。
生きていれば過ちを犯すことがあるかもしれない。
一度転落した人生は、再び日の当たる場所に戻ることができるのか…
不正が大嫌いで正義感の強いコンビニ店長。
その正義感は次第にエスカレートし、積極的に万引き犯を捕まえ、警察へ突き出すことに喜びを感じている。
しかしある日、万引き犯を取り押さえる際に相手が頭を打ち、その後死亡してしまうという〝事件〟を起こす。
その時の動画がSNSにアップされ、これまでの平穏な日々から暗転していく。
もう一人の主人公は、万引きの前科を持つ女性。
虐待から逃れ、高校卒業まで施設で育つが、その後の暮らしもまた苦しいものだった。
行きついた先は違法メンズエステのセラピスト。
ここで私が初めて知った言葉は
『ケアリーバー』
『18歳の壁』
児童養護施設で暮らした子どもたちが高校を卒業し施設を出た後には、様々な困難が待ち受けているという。
そうかぁ…
アパートを借りるのにも苦労したり、頼れる大人が不在なことから孤立したり…
様々な問題があるのね。
なかなか息苦しい内容で、途中までは暗い気持ちでの読書時間。
しかし、あるきっかけで二人の人生が交差していくと、希望を捨てず前を見て進む彼等の頼もしい姿が見えてきた。
コンビニ店長は事件の後、彼なりに改心していくのだが、生活が一変してしまった妻と娘のその後が気になるなぁ。
SNSって怖い。 -
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元警察事務職員の主人公が手話通訳士となり、17年前に関わった殺人事件と接点のある難事件に遭遇することとなる。
この物語はろう者が主体となって展開されていくのですが、わたくしこれまでの人生でほとんどろう者の方とコミュニケーションをとった経験がなく、知識も乏しいので失礼ながらあまり期待せずにこの小説を手に取りました。
途中、ろう者と手話の種類などが詳細に記されており、これに関してはとても勉強になりました。
17年前の殺人事件のホンボシは誰であったのか?
現在起きた殺人事件にはその17年前の事件の関係者が大きく関与していることが疑われ、主人公の荒井尚人が奔走します。謎が謎を呼び、最後に真実が暴かれます。
序盤は手話通訳の解説で少し退屈しましたが、中盤から事件背景とろう者をがっちりと連係させて、手に汗握る展開に緊張が走ります。主人公と刑事の心理戦の描写は緊迫感が直に伝わって興奮しましたね。
よく伏線回収などと最近の小説の手法として使われておりますが、伏線とは言えないまでも、謎と疑問は全て解き明かされてスッキリ清々しい結末を迎えました。良い小説に出会った気分です。
シリーズ化されてるので、また機会とタイミングが合えば続編も読んでみたいものです。 -
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再読シリーズ。
読んだことも大枠のストーリーもうっすら覚えているのに、結末はほぼ終わりまで忘れていた。。
前に記録していたものが消えてしまい、いつ読んだか定かではないけれど、おそらく手話に興味を持って少し習っていた時か少し後。日本手話と日本語対応手話とそれに関する様々な見解、コーダという言葉と存在を知ったのもこの本だったと思う。
書かれたのが前の本なので、今はまた色々と環境も変わっているだろうし、自分も最近、福祉の勉強をするようになって、当時とはまた受け止め方の違いもあった気がする。当然、当事者の人々と同じように考えるのは無理なことだけど、色んな境遇や考えや課題があることはこれからも知っていきたい。 -
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万引き犯を絶対悪として捕まえ続けた結果、最終的に死なせてしまったコンビニの店長、柳田。柳田を中心に、犯罪からの転落人生のその後や、犯罪の連鎖を描いています。
読後感は重いです。傷害致死と過失致死。量刑が大きく異なりますが、主観的な判断と言わざるを得ず、自分が実際にこのような加害者側の立場になってしまったらと思うと、非常に怖かったです。そんなつもりはなかったと訴えたとしても、信じてはもらえない。流れてくるニュースの見え方も、少し変わりました。
前科がついてしまったあとの暮らしも絶望的です。特に、ネットに顔や名前が出てしまっていたら、一生涯付きまといます。まともな仕事には就けず、犯罪を繰り返してしまうことも。。雇用主としてリスクを取りたくない気持ちもよくわかります。ただ、これでは釈放されたとしても、社会的に死刑がくだされていると言えてしまう状況です。日本が特別前科者に厳しいのか、世界的にこうなのか気になりました。