丸山正樹のレビュー一覧

  • 龍の耳を君に

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    デフ・ヴォイスシリーズ第二弾。丸山さんの作品は、弱者に寄り添い、代弁者として声を上げているのに、少しも押し付けがましさや説教臭さがないのがすごい。知識や情報がたくさん盛り込まれているにも関わらず、それが会話の中なために、不自然さがなく、すっと頭に入ってくる。今回も純粋にミステリーを楽しみつつ、たくさんの学び、気づきを得た。

    『弁護側の証人』
    聾学校の教師の教育法への自信に対する、生徒であった被告人の習熟感の低さ。教師と生徒の認識の大きな齟齬によって、聾学校の教育法に大きな疑問を投げかける。現在、日本の一般的な聾学校においては、聴覚口話法といって、補聴器を使って残存聴力を活用しながら、相手の唇

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    2024年10月15日
  • 刑事何森 逃走の行先

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    外国人技能修習生の妊娠、非正規滞在外国人の仮放免、コロナ禍下での女性の失業と貧困。罪を犯さざるを得なかった女性たちの社会的背景を、彼女らを追う何森刑事が浮き彫りにしてゆく。

    スポットを当てられた女性たちの問題は、どれも既視感のあるものばかり。その時々には、憤りを感じているものの、日々右から左に流れてゆく新しいニュースに埋没していた。外国人技能修習生の問題についてもそうであるが、「社会全体として難民問題に関心を寄せる人が少ない」との言には、ただただ耳が痛い。せめて、関わることのある留学生や外国人研究員には、寄り添える人間でありたいと気持ちを新たにする。

    ぶっきらぼうな物言いは相変わらずなもの

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    2024年10月11日
  • 慟哭は聴こえない

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    デフ・ヴォイスシリーズ第三段。
    『慟哭は聞こえない』
    聾者にとっての緊急通報の問題。作中では、サービスの欠如で通報が遅れ、痛ましい結果となったが、現在は、事前登録することでメールやチャットでの通報対応、GPSでの位置検知対応などができる緊急通報サービスが整備されているよう。文字の入力が難しくても状況を動画や画像撮影して送ることもできるし結構便利かもしれない。緊急時、家に一人でいる際など、いつでも口が利ける状態とは限らないし、自分でも登録しておきたいぐらい。
    ストーリーの展開上仕方がないとはいえ、聾の若い夫婦があまりにも受け身というか危機管理がなってない気がした。妊娠に気づき、産婦人科を受診とい

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    2024年10月27日
  • 慟哭は聴こえない

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    ネタバレ

    オーディブルにて。

    やはり障害者とその周りの環境について興味があるからか面白く読めた。
    聾者として生まれた瞳美が手話を覚えた2歳になるまでが飛んだけど、文字の概念も分からぬうちにどうやって教えたのか気になる。
    3作目なので新井とその家族の成長も一緒に追えて面白い。

    「一人でも障害児を減らせるように」との言葉にみゆきは 障害児は減らさなきゃいけないものなのか、この子は変わらなきゃいけないものなのか と思ってたけども、障害児に関わる者としては 人工内耳のようにその子自身が大きく変わらなくても道具や環境を変えることで生きづらさがなくなればいい という思いなのかな〜とも思いつつ。
    でも少なからず(

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    2024年10月02日
  • 龍の耳を君に

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    ネタバレ

    オーディブルにて。

    今回はより法廷に寄せて。
    個人的に興味のある発達障害のこともテーマとして含まれてたので面白かった。
    普段読まない作者さんでも法廷系だと読めちゃう説か、作者さんと合っているのか。とりあえず読み進める。

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    2024年09月26日
  • 刑事何森 孤高の相貌

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    『デフ・ヴォイス』シリーズのスピンオフ小説集で何森刑事を主人公とした短編2作と中編1作。推理小説なのでストーリーには触れないことにする。被害者も加害者も聾者ではないのでデフ・ヴォイスとの関連性は少ないが、精神や身体に障害を持つ人たちばかりなのでトーンが似ている。どの作品も障害について深く考えさせる内容になっている。最後には何森刑事の哀しい過去がわかって切ない。ラストシーンには荒井ファミリーも登場する。何森刑事シリーズは続編が出ているので続けて読みたいと思っている。

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    2024年09月21日
  • 漂う子

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    「居所不明児童」「棄児(きじ)」という言葉を初めて目にした。以前観た映画「万引き家族」(是枝裕和監督, 2018年)を思い出した。

    親になることを逡巡する主人公の青年、
    父親とともに失踪した少女、
    身体を売って生計を立てる身寄りのない少女たち、
    ニュースで報じられる白骨化した少女の遺体、
    かつて被虐待児道であった大人たち、
    血のつながりはなくとも深い愛情で結ばれた親子、
    児童相談所の職員…
    様々な登場人物が置かれている文脈の断片が重なり、物語がどんな結末に向かっていくのかを読者に想像させる。
    それだけではない。これらの断片は、読者が現実世界で耳にする虐待やネグレクトのニュースとリンクして、こ

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    2024年08月28日
  • ウェルカム・ホーム!

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    介護する側もされる側も、皆んな幸せになってほしい、そんな想いでいっぱいになった。

    介護する側は、時間に追われて効率重視な行動になってしまう。
    だからといって、一人一人の要介護者と向き合ってしまうと一日の業務が終わらない。時には心身共に壊れてしまう…。
    このもどかしさは、小説を読んだことで感じた。

    康介も鈴子先輩もコロナ禍をどのように乗り切って今に至るのか、続編に期待!

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    2024年08月21日
  • 慟哭は聴こえない

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    ネタバレ

    Audibleにて。
    デフボイスシリーズ3作目の連作小説。
    最初の短編は妊娠中の妻をもつ自分には辛すぎる話だった。
    続く民事裁判の話は、クライマックスで鳥肌が立った。
    ろう者に限らず、自分で声をあげることが難しい人間は想像以上に多い。
    なんで言わないんだ、ではなく、聴きにいけるだけの余裕をもちたい。
    最後の短編では天真爛漫だった長女の成長を感じられ、このシリーズは引き続き読んでいきたいと思った。

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    2024年08月17日
  • 龍の耳を君に

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    Audibleにて。
    前作がおもしろかったので、オススメのままに読んでみた。
    後書きによれば、もともと続編は考えてなかったが、文庫化をきっかけに要望があり前作から七年後に続編を発行なさったとのこと。
    にもかかわらず、不自然なところなどまったくなく、変わらずキャラがよかった。
    今作では子供を中心に話がすすむので、身につまされることも多かった。

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    2024年08月14日
  • 慟哭は聴こえない

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    オーディブルで聴きました。

    1作目より2作目、2作目より3作目が好きです。
    あらちゃんの経験する出来事の短編小説のような展開で読みやすく、全体が繋がっているからどの出来事も興味深いし、感動させられる。

    やはり身近に障害者がいないとわからないことは多い。会社を訴えた話では、会社側の人間のようにならないよう気をつけようと思った。でも実際同じ立場になったら、どういうふうに、どこまで踏み込んで良いか悩むのだろう。とにかくこうなんじゃないかといった想像でなく、実際のコミュニケーションは必須なのでしょう。健常者、障害者かかわりなく。

    ひとみちゃんがとてもかわいくてほっこりする。このまま幸せにすくすく

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    2024年08月04日
  • 龍の耳を君に

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    オーディブルで聴きました。

    一冊目より面白かった。
    龍はヒゲで聞けるから耳はない。落とした龍の耳はタツノオトシゴになった。。。とのこと。今年の年賀状に耳付きの龍を描いてしまったのを後悔。
    どうやって学んでいるのだろうと思っていたが、聾学校では口の中を触ったり、触らせたり、ほっぺの震えを確認しながら、発声を学ぶということ。すごい。

    そして、「やはり」だったが、警察の取り調べでも、聾者をぞんざいにあつかっているようで、警察にさらなる不信感を抱いた。小説の中の話だろうと言う人もいるかもとは思うけれど、この本に出てくる性格激悪の警官は普通に存在するに違いない。絶対。

    音声言語にもネイティブスピー

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    2024年07月18日
  • 慟哭は聴こえない

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    こういう本を読む人が増えることでろう者の世界に理解を持つ人、歩み寄れる人が増えるといい。知るための足掛かりとしての小説の役割は大きい。

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    2024年07月17日
  • 慟哭は聴こえない

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    彼女は何か叫んでいた 彼女も彼も知らない声で。と締めくくられたラストの赤ちゃんが助からない現実 これこそがデフヴォイスの真髄なんだって事。どれもこれも司も瞳美もみんな障害を持って何かしらの差別を受ける、本当に歩み寄らないとダメなのはどっちなんだよって話で自分にも絶対あった筈だから、恥ずかしい 外伝ぼいいずもりの愛媛県の旅が好きかな 最後に涙を流す息子を認識出来たお母さん 司を助けるのと新開が登場するとか いいね。みゆきと美羽と本物の家族になれた気がする HALを見てた美羽は大丈夫だと理解出来た

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    2024年05月27日
  • ワンダフル・ライフ

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    障害者の世界を知らない自分には知らない世界を見れる教材の様な本でした。もちろん面白さはラスト迄の展開とあっと驚く結末なのだろうけど、根底には奥さんの介護する現実と障害者の未来が我々には認識されずに重度の障害に負担する身内に出来ない時の思想が安楽死だけで。色んなことをひっくり返したい想いがこの作品に現れたのでは。しかし出だしの夫の創作がこの本だったとは、エンドロールでようやく繋がったが同一人物とは思わずいた。1日(1)×4とエンドロールで4日かかりましたが、思ったより捗らなかったかも。空想も含めて摂の人格があり過ぎて多過ぎて、整理出来ていないって事

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    2024年05月27日
  • 慟哭は聴こえない

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    シリーズ第3弾。すっかりこのシリーズの虜になってしまった。

    コーダである主人公荒井がついに家族を持つ。荒井家の6年間と、手話通訳士の仕事を通してろう者の生きる世界、取り巻く環境、社会問題を浮き彫りに。

    ろう者の緊急時通報が少し前までとても大変で、事前登録が必要だったとは驚き。現在はアプリがあるが、聴者のように容易ではない。緊急なのに…。

    手話には2種類あるとシリーズ第1弾で学んだが、特定の地域の独自の手話が存在する(方言)。先天性難聴児への治療、人工内耳をする事への葛藤・メリット、デメリットなど。障害者雇用の難しさなど。

    その立場にならないと知らない世界が沢山ある。第3章静かな男では泣

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    2024年05月19日
  • デフ・ヴォイス

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    今まで 聴こえない人たち のことを何と呼び、どんな風に接したことがあっただろう? と考えさせられた。
    コーダ=聴こえない両親のもとに生まれた、聴こえる子どもである主人公には、これからの続編(まだ読んでいないので)でぜひ幸せになって欲しい。
    私の好きなサスペンスでもあり、ノンフィクション?と思うようなひきこまれる話で、オススメしたい1冊。

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    2024年04月28日
  • 刑事何森 孤高の相貌

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    いやあ痺れる、とてもよい本でした。ただ殺したとか謎解きとか捕まったとかの完結してスッキリとはまるで別物、ラストの犯人の表情を知れば、あーどうして捕まえるのとか思わん。何森の使命感だけで、相当な優秀さ、せせこましい警察社会の不正が本当に腹が立つ。ロストの後半の桐子の回に何森の捜査に書き方が上手すぎる、どんどん引き込まれて友田の正体が知れば知るほど謎が深まり何森の4歳の妹と話を聞く荒井の登場と優しさと、あー奥さんも優秀で人間味ある人だったんだ。お墓参りで見せた4歳の娘がスクスク育ち安心だったってこと。あと多摩動物公園の友田の笑い顔が1番印象的だったってこと

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    2024年04月25日
  • ワンダフル・ライフ

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    無力の王(1)/真昼の月(1)/不肖の子(1)/
    仮面の恋(1)
    無力の王(2)/真昼の月(2)/不肖の子(2)/
    仮面の恋(2)
    無力の王(3)/真昼の月(3)/不肖の子(3)/
    仮面の恋(3)
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    始めの話は中心の二人の名前がはっきりしない。摂がいて、岩子がいて、GANCOがいる。岩子とGANCOって??
    読み終わると全部が腑に落ちる。みんながそれぞれ幸せな世界にいるといいな

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    2024年04月24日
  • ワンダフル・ライフ

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    全く関係がないと思われる4つの男女の物語。構成からしてきっとどこかで繋がるのだろうと予想してきたけれど、そうきたか。
    健常者とは障碍者とは、介護、不妊、いや普通ってなんなんだと色んなことを考えさせられる。
    全てがわかったときに、驚いた以上に切ない気持ちでいっぱいになった。

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    2024年04月21日