丸山正樹のレビュー一覧
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丸山正樹『わたしのいないテーブルで デフ・ヴォイス』創元推理文庫。
『コーダ』の手話通訳士・荒井尚人を主人公にした『デフ・ヴォイス 法廷の手話通訳士』シリーズ第4弾。
『デフ・ヴォイス』とは、ろう者の発する明瞭でない声、何を言っているか判然としない言葉のことで、『コーダ』とは、ろう者の両親から産まれた聴者のことである。著者は一般の人が全く知らない聴覚障害者について誤解することが無いよう非常に気を使ってその実態を極めて詳しく、正確に描いていることが良く解る。
今回は『ディナーテーブル症候群』という家族や友人、仲間と交われない聴覚障害者の苦悩がテーマとなっている。ページを捲る度に聴覚障害者の苦悩や家族の温かさに触れ、涙目になってしまった。
聴こえる者と聴こえない者。丸山正樹が描く小説には、悪い人間など一人として居ない。
手話通訳士の荒井尚人は、妻で刑事のみゆき、高校受験を間近に控える美和、ろう学校の幼稚部に通う瞳美の4人で暮らしていた。2020年、コロナ禍の影響で荒井は手話通訳士の仕事を控え、刑事として働くみゆきに代わり、家事と育児を担当していた。
そんな中、荒井の元に旧知のNPO団体から、ろう者の娘が実母に対する傷害事件のサポートを依頼が入る。一度は断ったものの、ろう者である被疑者が徹底して黙秘を続けていると聞き、依頼を受けることにした。
何故、被疑者となった娘は実母を包丁で指したのか……
本体価格760円
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100人以上の入居者のいる特別養護老人ホームで働く新人介護士のお話だ。もちろん文章ではあるが介護現場のリアルが多少なりともわかった。
どこからともなく漂う便臭、認知症による徘徊、陰部洗浄、宿便対応、孤独な入居者の事情、そして死…果たして自分にはできるか…そして現実問題として、これから我がオフクロを施設に入れてお世話になることも充分に想定しておかねばならない…
派遣切りにあい仕方なく就職し、最初は嫌々いつ辞めようかと働いていたが、仕事を覚えるに連れ、やり甲斐等を見出して成長していく主人公が逞しく思えた。
本編の解説は、なんとメイプル超合金の安藤なつさんが書いている。もともと介護施設でお手伝いをしていて、2年前に介護福祉士の資格も取ったらしい。書いている内容も素晴らしく、ちょっと彼女を見る目が今後変わりそうだ…
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前の二作品を読んでから少し時間が経ってしまったので、読み返してから手に取りました。
「聞こえない」ということは、世間的には「障害」といわれることもありますし、日常生活の中で苦労することも多々あるのだと思います。
それでも、「日本手話」という言語と「ろう」という文化をもち、暮している彼らの生きざまは決して不幸ではありませんし日々の生活の中での出会いや感情の機微は、「聞こえる」「聴こえない」という特質による差はなく、みな一人ひとりの人間なのだと改めて感じます。
CODAとして育った主人公・荒井がついに家族を持ったあとの4つのエピソードからなる連作短編集ですが、読後感は暖かく、ますます作品の世界観に引き込まれました。
2025年5月には、シリーズの最新作「わたしのいないテーブルで」が文庫化されるとのことで、いまから刊行が楽しみです。 -
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「デフ・ヴォイス」シリーズの第3弾
聴こえない人たちが直面する様々な現実を、前作よりも更に深く、読者に突き付けてくる内容だった。
医療へのアクセス、
教育機会へのアクセス、
聴者が抱く「クールなパフォーマンス」としての手話の「イメージ」と、ろう者にとっての「言葉」であり「文化」である手話のギャップ、
職場内での差別や孤立、
それらと並行して、尚人と妻のみゆき、みゆきの連れ子である美和、尚人とみゆきの間に生まれた「聴こえない子ども」である瞳美が、徐々に「家族のかたち」を作っていくストーリーが描かれている。
読み終えてからあらためて表紙を見ると、少女のポーズの意味が分かってキュンとする。
今回も、さんざんモヤモヤした末の晴れやかな読後感が最高!!
行き倒れたろう者の出自を追う尚人と何森刑事の旅では、ろう者と聴者が等しく手話で話す地域が登場する(そのような地域が現実に存在するらしい)。
何森刑事の生育歴がさらに気になり、スピンオフ作品も読みたくなった。
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【「龍の耳を君に」丸山正樹】
「デフ・ヴォイス 法廷の手話通訳士」シリーズの第2作。丸山正樹さんの作品は、ミステリとしての面白さと、社会の中で見過ごされている課題への気付きが相乗りしている。読んでいる間はすごくドキドキ・ モヤモヤするのに、読後感か爽やかなところが好き。
不十分な通訳で無実の罪の被疑者となってしまった林部、
日本語対応手話での取り調べに応じなかった新開、
手話によって「自分の言葉」を得た場面緘黙症の少年、英知。
「意思を自分の言葉で伝える」ということは、「尊厳」そのものなんだと思った。
ろう者や日本手話、ろう教育の歴史などについても多くを知ることができる。その丁寧な描写から、ろう者やろう文化に対する作者のリスペクトが伝わってくる。一方で、いくら知識を得ても、手話を身につけても、ろう者のことを「完全に理解することはできない」ということも、登場人物たちの思いを通して伝わってくる。作者から「これを読んで『分かったつもり』になってはいけない」と言われているような気がする。ちょっと切ないけど、「分かったつもりにならない」 のは、どのような関係性においても大切なことだと思う。
美和ちゃんと英知君が屈託なく手話で遊ぶ様子は、「障害が本人にあるのではなく、社会がそれを障害たらしめている」ということに気づかせてくれる。 -
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デフ·ヴォイス シリーズの第三弾。
手話通訳士の荒井尚人が依頼を受ける人々との関わりの中に、大切な事がこの世には沢山ある。ということを教えてくれる。
昨年は草彅剛さん主演でドラマ化もされました。
このシリーズでは新井さんに新しい家族が出来ます。父となった新井さんは少しずつ心ほどかれ、柔らかな表情を見せてくれる。
私は、このシリーズを読み、初めてコーダや手話表現、ろう文化など沢山の事を知りました。耳が聴こえないことの生きづらさも物語を通して初めて知ることばかりで、自分がいかに何も知らなかったかをしり愕然としたものでした。
もっともっと沢山の人に、この本を読んでほしい。
そして、皆がお互いに歩み寄り支え合う日常を見たい。 -
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「デフ・ヴォイス」シリーズで、いつも憎まれ口をききながらも主人公の荒井尚人をフォローする埼玉県警の刑事・何森。
昔気質の刑事である彼を主人公に据えた短中編集。とても面白く読んだ。
短編2作。多発している窃盗事件と同一犯という本部の見立てに疑問を感じたり、被疑者の男の一貫性がない供述に違和感を覚えて、独自の捜査を始める何森。
それを通して、彼の刑事としての優秀さや、にもかかわらず昇進もせず所轄署をたらい回しにされる期し方や、刑事という仕事への執着が分かっていく。
さらには、捜査の線上に浮かぶ、頚髄損傷、共依存、供述弱者といった人々に対する温かい眼差しも感じさせ、「デフ・ヴォイス」シリーズで知っていた何森をより深く理解でき、その人物像に好感を持つ。
これら短編も良かったが、本の半分以上を占める中編がさらに読み応えあり。
かつて銀行強盗を働き逃走中に交通事故を起こして逮捕された男が仮釈放で出所することになり、「全生活史健忘」という記憶障害で氏名を特定できず留置番号から〈ロク〉と呼ばれるその男に共犯者が接触する可能性があるので、何森が監視することを命じられるところから始まるお話。
記録係という閑職に追いやれられながら再び刑事としての気力を湧きあがらせる何森と、〈ロク〉を受け入れた更生保護施設の施設長・加納桐子が、それぞれ異なる理由から〈ロク〉の過去を追う姿が描かれ、なかなかにサスペンスフル。
一つの謎が解けるとまた新たな謎が湧き出る展開と、登場人物の一人ひとりにそれぞれ重要な役割を持たせて進む構成は、長編に劣らぬ重厚さ。〈ロク〉の過去や記憶障害の秘密だけでなく、かつての事件の謎解きに、複数の兄妹の間の情念や何森自身が抱える過去の闇も絡ませた作りは、存分に楽しめる。
動物園での、〈ロク〉の笑顔を引き出した妹の言葉がとても印象深い。
二話目三話目では荒井の妻にして県警の刑事・荒井みゆきが捜査に関われない何森を助ける。
終章、荒井とその娘も登場し、瞳美が屈託なく育っていることが知れて微笑ましい。 -
Posted by ブクログ
いやあいっぱい詰まってた。康介の介護士の仕事の成長(人としても)が読んでいてわかりやすくて、風俗で発散して自分の心のバランスをとるとか、でも同窓会で言われた重労働がバランス取れるのかって今でも思うけど、お菓子にカップ麺を食べるとか。ラスト依田さんの事件も、園の本音と建前とあるのが切ない、自民党のダメな政策のせいで、安い賃金で働く外国人も、6人に2人しかいない正社員も、あーなんでこんな国になっちゃうの?しか思えない。あとラスト依田さんない語り掛ける場合が何故かジーンときてた。あとオムツ換えにお風呂に陰部を洗うにお尻の穴に指入れてクソを掻き出すとか自分の親に出来るのかと考える
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デフ・ヴォイスシリーズ第二弾。丸山さんの作品は、弱者に寄り添い、代弁者として声を上げているのに、少しも押し付けがましさや説教臭さがないのがすごい。知識や情報がたくさん盛り込まれているにも関わらず、それが会話の中なために、不自然さがなく、すっと頭に入ってくる。今回も純粋にミステリーを楽しみつつ、たくさんの学び、気づきを得た。
『弁護側の証人』
聾学校の教師の教育法への自信に対する、生徒であった被告人の習熟感の低さ。教師と生徒の認識の大きな齟齬によって、聾学校の教育法に大きな疑問を投げかける。現在、日本の一般的な聾学校においては、聴覚口話法といって、補聴器を使って残存聴力を活用しながら、相手の唇の形や動きを見て話す内容を理解(読唇)し、同時に聴者の口の動き、喉や胸の震え、舌の位置だけを頼りに発声訓練(聴能訓練)を行う教育方法を採用している。難聴の程度や失官の時期がそれぞれ異なる複数の生徒を相手に行う訓練は困難を極め、習熟度にも差が出てくるために、その後にくる日本語の文法学習、その他教科の学習の遅れにつながることもある。被告人が、それだけで自身の無罪を証明できるのにも関わらず、発声を断固拒否した背景には、学校内でどれほどの成績をあげても、一般社会では通用しないという徒労感、虚しさ、失望、困惑顔を向けられる屈辱感があり、やり切れない。
『風の記憶』
どれほど読唇、口話に長けても聴者には決してなれないという劣等感と屈辱感に苛立ち、心にわだかまる憤懣を、人を疑うことを知らずのほほんと生きているように見える同じ聾者たちに向ける。被告人・新開の行動の底にある感情の機微に触れ切ないが、最後には、荒井の言によって自尊心を取り戻すに至り、安堵する。
『龍の耳を君に』
学校や公の場など他人と関わる特定の場面で話すことができなくなる場面緘黙症の少年・英知が手話により他人とかかわる言葉と勇気を得る。触覚過敏のために手をつなぐことができず、やむなく使用した幼児用リードを、他人に虐待呼ばわりされた、という母親の話には、同様にあまり良い印象を持っていなかった自分の無知さに深く恥じ入ってしまった。英知の証言によって明らかとなった事件の真相は、切なく悲しいものだったが、音声による会話がないゆえの親子の深い愛情の形に触れ胸が熱くなった。