丸山正樹のレビュー一覧
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デフ・ヴォイスシリーズ第二弾。丸山さんの作品は、弱者に寄り添い、代弁者として声を上げているのに、少しも押し付けがましさや説教臭さがないのがすごい。知識や情報がたくさん盛り込まれているにも関わらず、それが会話の中なために、不自然さがなく、すっと頭に入ってくる。今回も純粋にミステリーを楽しみつつ、たくさんの学び、気づきを得た。
『弁護側の証人』
聾学校の教師の教育法への自信に対する、生徒であった被告人の習熟感の低さ。教師と生徒の認識の大きな齟齬によって、聾学校の教育法に大きな疑問を投げかける。現在、日本の一般的な聾学校においては、聴覚口話法といって、補聴器を使って残存聴力を活用しながら、相手の唇 -
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外国人技能修習生の妊娠、非正規滞在外国人の仮放免、コロナ禍下での女性の失業と貧困。罪を犯さざるを得なかった女性たちの社会的背景を、彼女らを追う何森刑事が浮き彫りにしてゆく。
スポットを当てられた女性たちの問題は、どれも既視感のあるものばかり。その時々には、憤りを感じているものの、日々右から左に流れてゆく新しいニュースに埋没していた。外国人技能修習生の問題についてもそうであるが、「社会全体として難民問題に関心を寄せる人が少ない」との言には、ただただ耳が痛い。せめて、関わることのある留学生や外国人研究員には、寄り添える人間でありたいと気持ちを新たにする。
ぶっきらぼうな物言いは相変わらずなもの -
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デフ・ヴォイスシリーズ第三段。
『慟哭は聞こえない』
聾者にとっての緊急通報の問題。作中では、サービスの欠如で通報が遅れ、痛ましい結果となったが、現在は、事前登録することでメールやチャットでの通報対応、GPSでの位置検知対応などができる緊急通報サービスが整備されているよう。文字の入力が難しくても状況を動画や画像撮影して送ることもできるし結構便利かもしれない。緊急時、家に一人でいる際など、いつでも口が利ける状態とは限らないし、自分でも登録しておきたいぐらい。
ストーリーの展開上仕方がないとはいえ、聾の若い夫婦があまりにも受け身というか危機管理がなってない気がした。妊娠に気づき、産婦人科を受診とい -
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ネタバレオーディブルにて。
やはり障害者とその周りの環境について興味があるからか面白く読めた。
聾者として生まれた瞳美が手話を覚えた2歳になるまでが飛んだけど、文字の概念も分からぬうちにどうやって教えたのか気になる。
3作目なので新井とその家族の成長も一緒に追えて面白い。
「一人でも障害児を減らせるように」との言葉にみゆきは 障害児は減らさなきゃいけないものなのか、この子は変わらなきゃいけないものなのか と思ってたけども、障害児に関わる者としては 人工内耳のようにその子自身が大きく変わらなくても道具や環境を変えることで生きづらさがなくなればいい という思いなのかな〜とも思いつつ。
でも少なからず( -
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「居所不明児童」「棄児(きじ)」という言葉を初めて目にした。以前観た映画「万引き家族」(是枝裕和監督, 2018年)を思い出した。
親になることを逡巡する主人公の青年、
父親とともに失踪した少女、
身体を売って生計を立てる身寄りのない少女たち、
ニュースで報じられる白骨化した少女の遺体、
かつて被虐待児道であった大人たち、
血のつながりはなくとも深い愛情で結ばれた親子、
児童相談所の職員…
様々な登場人物が置かれている文脈の断片が重なり、物語がどんな結末に向かっていくのかを読者に想像させる。
それだけではない。これらの断片は、読者が現実世界で耳にする虐待やネグレクトのニュースとリンクして、こ -
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オーディブルで聴きました。
1作目より2作目、2作目より3作目が好きです。
あらちゃんの経験する出来事の短編小説のような展開で読みやすく、全体が繋がっているからどの出来事も興味深いし、感動させられる。
やはり身近に障害者がいないとわからないことは多い。会社を訴えた話では、会社側の人間のようにならないよう気をつけようと思った。でも実際同じ立場になったら、どういうふうに、どこまで踏み込んで良いか悩むのだろう。とにかくこうなんじゃないかといった想像でなく、実際のコミュニケーションは必須なのでしょう。健常者、障害者かかわりなく。
ひとみちゃんがとてもかわいくてほっこりする。このまま幸せにすくすく -
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オーディブルで聴きました。
一冊目より面白かった。
龍はヒゲで聞けるから耳はない。落とした龍の耳はタツノオトシゴになった。。。とのこと。今年の年賀状に耳付きの龍を描いてしまったのを後悔。
どうやって学んでいるのだろうと思っていたが、聾学校では口の中を触ったり、触らせたり、ほっぺの震えを確認しながら、発声を学ぶということ。すごい。
そして、「やはり」だったが、警察の取り調べでも、聾者をぞんざいにあつかっているようで、警察にさらなる不信感を抱いた。小説の中の話だろうと言う人もいるかもとは思うけれど、この本に出てくる性格激悪の警官は普通に存在するに違いない。絶対。
音声言語にもネイティブスピー -
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障害者の世界を知らない自分には知らない世界を見れる教材の様な本でした。もちろん面白さはラスト迄の展開とあっと驚く結末なのだろうけど、根底には奥さんの介護する現実と障害者の未来が我々には認識されずに重度の障害に負担する身内に出来ない時の思想が安楽死だけで。色んなことをひっくり返したい想いがこの作品に現れたのでは。しかし出だしの夫の創作がこの本だったとは、エンドロールでようやく繋がったが同一人物とは思わずいた。1日(1)×4とエンドロールで4日かかりましたが、思ったより捗らなかったかも。空想も含めて摂の人格があり過ぎて多過ぎて、整理出来ていないって事
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シリーズ第3弾。すっかりこのシリーズの虜になってしまった。
コーダである主人公荒井がついに家族を持つ。荒井家の6年間と、手話通訳士の仕事を通してろう者の生きる世界、取り巻く環境、社会問題を浮き彫りに。
ろう者の緊急時通報が少し前までとても大変で、事前登録が必要だったとは驚き。現在はアプリがあるが、聴者のように容易ではない。緊急なのに…。
手話には2種類あるとシリーズ第1弾で学んだが、特定の地域の独自の手話が存在する(方言)。先天性難聴児への治療、人工内耳をする事への葛藤・メリット、デメリットなど。障害者雇用の難しさなど。
その立場にならないと知らない世界が沢山ある。第3章静かな男では泣 -
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いやあ痺れる、とてもよい本でした。ただ殺したとか謎解きとか捕まったとかの完結してスッキリとはまるで別物、ラストの犯人の表情を知れば、あーどうして捕まえるのとか思わん。何森の使命感だけで、相当な優秀さ、せせこましい警察社会の不正が本当に腹が立つ。ロストの後半の桐子の回に何森の捜査に書き方が上手すぎる、どんどん引き込まれて友田の正体が知れば知るほど謎が深まり何森の4歳の妹と話を聞く荒井の登場と優しさと、あー奥さんも優秀で人間味ある人だったんだ。お墓参りで見せた4歳の娘がスクスク育ち安心だったってこと。あと多摩動物公園の友田の笑い顔が1番印象的だったってこと