【感想・ネタバレ】漂う子のレビュー

あらすじ

『デフ・ヴォイス』で話題の著者による傑作長篇!
現代社会が抱える闇のひとつ――「居所不明児童」とは?

恋人の教え子・紗智が父親とともに突然姿を消した。
彼女を探すことになった二村直は、ただ一つの手掛かりをもとに名古屋へ向かう。
所在がわからない子供、「居所不明児童」という社会の闇を知るうちに、直は重大な決断を迫られる――。

子を持つとは、親になるとはどういうことか。
話題作『デフ・ヴォイス』の著者が描く感動のミステリー!

解説・大塚真祐子(書店員)


※この電子書籍は2016年10月に河出書房新社より刊行された単行本の文庫版を底本としています。

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Posted by ブクログ

「居所不明児童」「棄児(きじ)」という言葉を初めて目にした。以前観た映画「万引き家族」(是枝裕和監督, 2018年)を思い出した。

親になることを逡巡する主人公の青年、
父親とともに失踪した少女、
身体を売って生計を立てる身寄りのない少女たち、
ニュースで報じられる白骨化した少女の遺体、
かつて被虐待児道であった大人たち、
血のつながりはなくとも深い愛情で結ばれた親子、
児童相談所の職員…
様々な登場人物が置かれている文脈の断片が重なり、物語がどんな結末に向かっていくのかを読者に想像させる。
それだけではない。これらの断片は、読者が現実世界で耳にする虐待やネグレクトのニュースとリンクして、この物語がフィクションでありながら、非現実ではないことを突き付けてくる。

「子どもを殺すのって、親を殺すのより罪が軽いん?」

丸山正樹さんの作品は、私たちが生きる社会の中に確かに存在する、けれどあまり意識されることのない人たちに光をあてるものが多い。それゆえに、読んでいる間は胸がギュッと締め付けられたり、自身の無知を責める気持ちになったりする。モヤモヤした余韻を残しつつ、読後感がどこか爽やかなのは見事だと思う。

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2024年08月28日

Posted by ブクログ

 この小説に限らず、丸山先生の小説は
親になるとはどういうことか、子供を育てるとはどういうことか。また家族になるとはどういうことなのかを考えるきっかけになるテーマを、物語を通して提示してくれる。

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2023年01月15日

Posted by ブクログ

デフヴォイスの時も感じたことだけど
この方の作品はホント勉強になりますm(_ _)m

居所不明児童…初めて聞く言葉
 
今作も膨大であろう取材、資料、それらの内容が
深くなりすぎず、けれど分かりやすく、小説としてのストーリーに組み込んである。
主人公が一人の少女を捜索することがちょっとしたミステリー?としての作品になってる事も、デフヴォイスと同様素晴らしかった!

次はどんな知識を与えてくれるのか楽しみに待ちたいと思う。

あ〜つくづく読書って良いな(*´ー`*)

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2022年05月15日

Posted by ブクログ

居所不明児童の問題を扱ったお話

フリーランスカメラマンの二村直は、恋人で小学校教師の祥子から妊娠を告げられる。気に障る親のせいか、自分の子供を持つことに拒否感がある直は結婚や堕胎の提案をためらう。
その問題とは別に、祥子の教え子で父親と共に連絡が取れなくなった紗智を探すことになった直が、手がかりの情報を元に名古屋に向かった先での出来事。

居所不明児童、棄児、虐待、少女売春、売春斡旋、ストリートチルドレンなど……


居所不明児童
連絡を取れない子供、親とともに所在がわからない等の子供たち

行方不明や虐待のニュースを見かけるたびに、実態の数としてはどのくらいの規模感なのかと心がざわつく
普段自分たちが見える光景では、そんな境遇の子供たちはほぼ見かけない
しかし、実際に存在はするわけで、しかも表沙汰になっていない数を含めれば……


直の行動や言動に批判的な人がいるのも納得
ただ、そんな男がいることも確かですけどね

私個人も、別に自分の血縁としての子供はいなくてもよいと思ってたからなぁ……
だからといって敢えて拒むほどでもないですけど
まぁ、作中でもあったように義理の関係でも色々とありますからねぇ……

物語全体として、親とは何か?が問われている


昔は尊属殺人という枠組みがあったけど、今はなくなていて
別に親だろうが他人だろうが殺人は同じ罪
しかし、親が子を殺した場合はどうか?

親が子供を殺しても、他の殺人よりは軽くなっているのが実情という視点ははっとさせられた
被害者家族=加害者という構図は、視認に口なしとばかりに親の事情のみが鑑みられて減刑される傾向があるよう
確かに、殺すに至った理由はあるんだろうけどさ、大抵は子供に責任はないわけで、やはり心が痛むなぁ


情緒障害児短期治療施設という存在を初めて知る
「生き延びた」子達は是非とも社会に参画してもらいたいものですね
ただ、それまでの境遇により難しい場合があるのですね

河原やシバリのような、同じ経験をした人たちもその一助になっているといいなぁ


あと、終盤にデフ・ヴォィスシリーズのアノ人が登場
都道府県をまたいでの出向とか、キャリアでもなきゃねぇよw

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2022年03月04日

Posted by ブクログ

居所不明児童、という言葉をこの作品で知った。
虐待などによってうまれるそういった子どもやストリートチルドレンの背景や、暮らしについても描かれているドキュメンタリーとも言える小説。

話としては、お父さんとともに行方不明になった婚約者が担任で受け持っている娘を、なんとなくのきっかけで主人公が追っていく…というのがメインストーリー。

その主軸をもとに、主人公と家族の関係、婚約者との関係、仕事との向き合い方、関連する登場人物の背景などがしっかりと描かれているので、物語に深みが出ている。
デブヴォイスの時もそうだけど、この作者さんはその辺り上手いなと思う。

デフボォイスを読んでいると、少しオヤっと思える登場人物もいたりします。

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2021年11月23日

Posted by ブクログ

親としての自覚、それはどこでどうやったらできるのだろう。周囲から?教えてもらう?自分で?背中を見て?

初めての子供がお腹に宿ったと分かった時、自覚の じ の字も持ってなかった私の心は途方にくれた。夫の一言が少しの灯りをくれた。彼がどんな気持ちでそう言ったのかいつか聞きたい。

この世に生まれることになった命が無事に生まれて、みんな幸せな大人になれるといいなぁ。

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2020年07月31日

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丸山正樹『漂う子』文春文庫。

丸山正樹の作品を読むのは『デフ・ヴォイス』に続き2作目となる。本作は『居所不明児童』をテーマにした社会派小説である。

大人になりきれず、自覚を持たない親たちの身勝手な論理により、疎まれ、虐げられ、まともな社会生活を送れず、社会から遺棄される子供たち。連日のようにテレビや新聞は子供の虐待や殺害死体遺棄といった悲しい事件を伝えている。

長年の親との確執により、自分が子供を持ち、親になることに疑問を抱くフリーカメラマンの二村直を主人公がある居所不明児童の調査をきっかけに、家族について見詰め直すという救いのある物語である。しかし、結末には少し納得できなかった。

二村直は恋人である小学校教師の祥子から教え子の小学4年生の紗智が父親と共に失踪したことを聞かされる。紗智を探すことになった二村直は失踪した少女たちの背後に虐待や遺児、援助交際などの社会の闇が広がっていることを知る。

本体価格820円
★★★★★

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2019年11月11日

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児童虐待、居所不明児、棄児、ストリートチルドレン、神待ち、児童ポルノ、売春⋯と、子どもを取り巻く闇が次々浮き彫りにされていきます
行政は完璧では不完全、NPO法人も限定的
すべての子どもたちの人権が尊重されて、安心して眠れる日が来ることを祈っています

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2025年09月24日

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居所不明児童という社会問題をベースに家族のこと、親になること、子どもを産むこと育てることについて多角的な視点から書かれている

親のDNAなんて気にせずに
自分は誰のものでもなく
細胞から全て俺のもんだ

今までなんとく知っているようでなんとなくしか知らなかった社会の一面をよくよく知ることでこれから来る未来に思いを馳せる

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2025年04月19日

Posted by ブクログ

居所不明児童という存在、その壮絶な状況。
そして虐待を受け居場所を無くした子供達。
親は守ってあげるべき立場なのに…。
やり切れなさを感じる。

子供を持つことが怖い直が、彼女の教え子を探していくうちに成長していく。

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2024年03月28日

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児童虐待や戸籍がない子供達の話、読んでて苦しかった。でも知らなくては何も始まらないし、子供達も救えない。読んで良かった。

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2023年11月05日

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読後というより、読み進めるうちに色々と考えることになった。登場人物の心境やセリフがいちいち心にささる。
呑気に生きて来れた事に感謝しつつ、知った事実から目を逸らさず受け止めていこうと思う。

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2020年09月23日

Posted by ブクログ

デフ・ヴォイス以上の衝撃作だと思う。日本には1年以上,所在が分からない子供(中学生以下)が千人以上。そしてそれすらも氷山の一角というのだから驚きを超えて寒気すら感じる。漂わざる得ない子供の目を覆いたくなるような悲しい現状に多くを考えさせられた一冊でした。超オススメ。
あらすじ(背表紙より)
恋人の教え子・紗智が父親と共に突然姿を消した。彼女を探すことになった二村直は、ただ一つの手掛りをもとに名古屋へ向かう。所在が分からない子供、「居所不明児童」という社会の闇を知るうちに、直は重大な決断を迫られる―。子を持つとは、親になるとはどういうことか。『デフ・ヴォイス』著者が描く問題作。

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2020年05月11日

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ネタバレ

どの程度取材をして書かれた小説なのか存じませんが、実際の虐待事件なども出てきてとてもリアルな感じがしました。居所不明児童に対して対応に限界があること、家族を頼れない若者がいろんな危うさを抱えながら自分で稼いで生きていること、売春や児童ポルノという形で我が子を売る親がいること、実際にこのような過酷な状況の親子がいるんだろうと思います。
登場人物すべて、悩みがあったり、過酷な生育歴だったりするけれど、最期は希望が感じられる小説です。

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2020年01月05日

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デフ・ヴォイスがよかったので、同じ作家さんのこちらを購入。
居所不明児童を探すお話。家の事情、親の事情で学校に行けなかったり、虐待されたりする子供が問題になっているが、「親が悪い」といって引き離すだけでいいのか?
周りの私たちに何ができるのか?という問題提起をしている小説。
いろいろ考えさせられた。

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2019年12月11日

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07月-03。3.0点。
続編出たため、再読。
カメラマンの主人公、恋人の教師の生徒が、行方不明に。探し始めるカメラマンだが。。

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2024年07月04日

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カメラマンの直は付き合っている小学校教師の祥子から担任をしていた児童が「居所不明児童生徒」となった事を聞かされる。父親と共に失踪してしまったのだ。その少女のことを心配する祥子だが仕事もあり妊娠している事もあって自分で探しに行くことが出来ない。そんな彼女の代わりにその少女を探しに名古屋まで行くことになった直はそこで残酷な現実を知ることになる。
「デフヴォイス」の著者が描く被虐待児やその子供達を利用する親や救うことのできない社会の在り方。重たい内容だが、グイグイ読まされる。
救いのないラストだけれどおすすめ。

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2024年05月10日

Posted by ブクログ

居所不明児童をテーマにひとりの女の子に焦点を当て書かれた小説ではあるが、
丸山作品を読むと、小説の可能性を感じる。
読者を楽しませるというよりも、引き込みつつ「社会」と向き合うきっかけをくれる。

しかし、里親制度と養子縁組の混同はあってはならぬミスで残念であった。

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2024年01月17日

Posted by ブクログ

共感出来るような 場面はほとんどなく 社会に潜んだ闇を見せられ 恐怖と不安に 心細い気持ちになる

だけど 現実に こういう世界が隠れている
大人として 知るべき事柄なんだと思った

フィクションとして やわらかく 伝えているのだろう
実際に 当事者からの言葉を聞けば もっと ツラくなるのかもしれない

でも 知らずにいる多くの人へメッセージを届ける 一歩をしっかりと踏み出している

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2021年02月07日

Posted by ブクログ

一気読み。
主人公には最後まで感情移入出来なかったけど
ストーリーとしては興味深かった。

『情緒障害児短期治療施設』と言うのもこの本で初めて知った。

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2021年02月14日

Posted by ブクログ

ネタバレ

本の中で紹介される児童虐待のエピソードは強烈なのだけれど、主人公があまり踏み込んだ立場におらず「話を聞いて衝撃を受けた」というところ止まりなので、他のルポタージュなどとあまり変わらない感じがした。フィクションなので、もう少しこの社会問題の核となる部分に主観的な意識を持っていってくれたらな〜と少しだけ残念。
また主人公が自分の子どもを持つことに対して抱く否定的な思いが、抽象的でつかみどころがないため、それを乗り越える過程もイージーに見えてしまった。デフヴォイスがすごすぎて、ちょっと期待しすぎたかもしれない。
それでも小説の題材としてはなかなか扱われない内容だと思うので、意義ある一冊だったと思うし、なんだかんだ言って一気読みでした。

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2020年12月14日

Posted by ブクログ

丸山正樹さんは2冊目。

(デフヴォイスの続編と勝手に思い込んでいたのだが、全く別物だった…)

カメラマンを細々と続ける直。
直は、子供の頃から両親と折り合いが悪く、自分自身が子供を持つことに夢が持てないでいた。

ある日、小学校教員であり恋人の祥子に、自分が受け持つ生徒が行方不明になったことを相談される。
また、祥子に妊娠したことを告げられ、自身の決断を迫られる。

そして行方不明の祥子の女子生徒を探す過程で、様々な事情で親と上手く行かなかった過去をもつを人々に出会うことになる。
そして、直自身も未来の家族のことを考えることになる。

テーマは、親子。
児童虐待、ネグレクト、そして我が子を売春させる親。
悲しい親子の形がいくつも描かれおり、胸が痛くなった。

丸山正樹さん、以前は小説家ではなくシナリオライターなのね。


これからデフヴォイスシリーズを読み進めるのも楽しみだな。

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2020年10月04日

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