あらすじ
読書メーター of the year2021 第1位! 事故による頸椎損傷で、寝たきりの「妻」(49)を介護している「わたし」(50)。設計士の一志(39)と編集者の摂(38)夫婦は妊活が実らず、特別養子縁組の話が。様々な悩みを抱える男女の「過去と未来」が照らし出したものとは――。『デフ・ヴォイス』シリーズなどで現代社会の歪みを描き続けてきた著者渾身の傑作長編。
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有能/無能なんていう物差しは、社会が作ったものにすぎない。そんなもので命の価値に軽重をつけたくない。健常者の感覚で言うならば、コスパ•タイパが重視される社会で、それに適応できる人が「優秀」と評価される。
でも本当は生きているだけでその生が尊重される世界で生きたい。
なんていうのは綺麗事かもしれないけど、少なくとも命の選別が行われて、蔑ろにされている命がある今の社会では生きていたくない。
•353頁の裕太のセリフに刺された。
「自分が差別的な人間と思われたくないからそんなこと言ってるんだろ。会いたいわけないじゃないか。いや仮に会いたいというのが本心だとしても、それはあくまで『奉仕の精神』だろ。援助者、介助者として、障害者に親切にしたい、親切にしなきゃいけない、そういう思いからだろ。つまり、ただのボランティア精神だ」
•健常者/障害者の二項対立を意識しすぎずに、フラットに接することができるのがいいのかな…もやもや
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健常者が障がい者を特別扱いするのは差別なのか
障がい者の子どもを殺してしまった親は…
「無力の王」「真昼の月」「不肖の子」「仮面の恋」という4つの物語が同時進行で展開されていきます
どうしても傲慢で偽善的になってしまいますが、とても考えさせられる本でした
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障害者の世界を知らない自分には知らない世界を見れる教材の様な本でした。もちろん面白さはラスト迄の展開とあっと驚く結末なのだろうけど、根底には奥さんの介護する現実と障害者の未来が我々には認識されずに重度の障害に負担する身内に出来ない時の思想が安楽死だけで。色んなことをひっくり返したい想いがこの作品に現れたのでは。しかし出だしの夫の創作がこの本だったとは、エンドロールでようやく繋がったが同一人物とは思わずいた。1日(1)×4とエンドロールで4日かかりましたが、思ったより捗らなかったかも。空想も含めて摂の人格があり過ぎて多過ぎて、整理出来ていないって事
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無力の王(1)/真昼の月(1)/不肖の子(1)/
仮面の恋(1)
無力の王(2)/真昼の月(2)/不肖の子(2)/
仮面の恋(2)
無力の王(3)/真昼の月(3)/不肖の子(3)/
仮面の恋(3)
エンドロール
始めの話は中心の二人の名前がはっきりしない。摂がいて、岩子がいて、GANCOがいる。岩子とGANCOって??
読み終わると全部が腑に落ちる。みんながそれぞれ幸せな世界にいるといいな
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全く関係がないと思われる4つの男女の物語。構成からしてきっとどこかで繋がるのだろうと予想してきたけれど、そうきたか。
健常者とは障碍者とは、介護、不妊、いや普通ってなんなんだと色んなことを考えさせられる。
全てがわかったときに、驚いた以上に切ない気持ちでいっぱいになった。
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新聞の書評を読んで購入、初めての丸山正樹。
障害者、人の尊厳といった物を基軸に、4つのストーリーを時間軸を交差させながら、それぞれの主人公の視点で描いています。
クライマックスで・・いや、エピローグ的な部分の最後で・・・ヤラれます。完全にヤラれました!
是非!予備知識無しで読んで頂きたい!超オススメです!!
そして読んだらぜひ感想をお聞かせください(^_^;)
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つい最近NHKでドラマ化された、丸山正樹さんの「デフ・ヴォイス 法廷の手話通訳士 」。手話を学ぶ者にとっては必読の一冊ですが、それ以外にも丸山正樹さんは刑事物だったり社会はミステリーだったりと幅広い内容の物語を書かれています。その中でも、衝撃的で心揺さぶられる一冊が文庫化されました。
この一冊は4つの物語から構成されてます。事故によって重度の障害を負った妻を献身的に介護する夫、編集者の妻と将来の家について相談し悩む設計士、ネットの世界で独自の世界観と的確なコメントを綴る車椅子の男性、そして福祉の世界に興味を持ち真摯に取り組む女子大生。それぞれの物語が「人としての尊厳」や「人生の哀しさ」、「生きていく上での大切なこと」などを読む者に問いかけてきます。そして、最後には4つの物語が意外な形で一つにまとまるのですが、さらに最後の数ページで衝撃を受けると共に頭が混乱してしまう一冊です。
ネタバレになってしまいますので詳しく書くことができませんが、ネタバレ覚悟で書こうとしても何をどう整理してお伝えすれば良いかが分からない。二度三度読んで、ようやくなるほどそうなのかと納得しつつも、なんとなく納得できない。そんなもどかしい感想を持つ一冊です。
丸山正樹さんは最新作「夫よ、死んでくれないか」でも今までとは趣の異なる内容を書かれていますが、一貫しているのは世の中に当たり前のように存在している「理不尽」を問うていることだと個人的には感じています。それを著者の作品の中で一番感じたのがこの一冊でした。オススメです!
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この作品を読むまで結局自分は偽善的な
考えで身体障がい者のことを見ていたと突きつけられた気がした。
脳性麻痺の娘、息子を殺す母親にどこか同調してしまっていたと思った。
でもそれって彼女や彼からしたら自分の命を勝手に奪われることで、幸せか幸せじゃないかは他人が決めることではないと本当だと素直にそう思う。
この作品は一見ミステリーだと思うけど
そうじゃない。自分が知らなかったことを知るきだかけでもあったし、私自身だって健常者ではなくなるきっかけはいつだってある。だから他人事じゃないし、健常者に勝手に彼ら彼女らはこうだからと決めつけられるのはおかしいこと。
この作品を1人でも多くの人に読んでもらいたいと思った。そんなすごく自分に問いかけられ考えさせてもらえた本だった。
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丸山正樹『ワンダフル・ライフ』光文社文庫。
変わった構成の連作小説の形式を取っている作品である。『無力の王』『真昼の月』『不肖の子』『仮面の恋』という4つのタイトルを付けられた4組の男女の物語が3回ずつ描かれ、一見関係の無いように思えた4つの物語は『エンドロール』を経て、最後に1つの物語に帰結するのだ。
まるで裏と表の世界のように『エンドロール』に描かれたもう1つの世界。
東日本大震災と福島第一原発事故、新型コロナウイルス、障害者の人権と現代の様々な災害や問題を散りばめながら、人生を生きる意味を教えてくれるような深く重たい小説だった。
『無力の王』。事故により頸髄損傷という重度の障害を抱える妻を献身的に支える中年の夫の物語。
『真昼の月』。子供を作るか否かで揉める設計士で夫の一志と編集者で妻の摂の三十代の夫婦の物語。
『不肖の子』。橋詰という上司と不倫する私の物語。
『仮面の恋』。脳性麻痺の俊治がパソコン通信で知り合ったGANCOというハンドルネームの女性との物語。
全く関係無いと思われた4つの話が少しずつ繋がっていく様に驚き、『エンドロール』で一瞬幸せな夢を見せられるが、直ぐに現実に引き戻される。それでも、30年振りの再会のシーンには胸が熱くなる。
本体価格780円
★★★★★
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あまり事前情報を入れずによんでいただきたい作品。
ワンダフルライフこのタイトルは作中のあそこからきているのね!
後半、つまりあそことあそこが繋がっているのか…?やっぱりそうなっているのかーーーー!!!スッキリ!!!!!という感情になる素晴らしい構成ではあるが、内容が内容なだけに爽やかさはないですね。あとがきでなんとか救われました。
障害者とそばに生きる人の話。「それでも君は僕と恋ができますか?」差別ってこういうことだよなあと思いつつ、自分ならどうなのか、自信がない。もはや普通に接しようと思うことすら差別になるんだなと。偏見ゼロで関わるのは難しいし、できないと思う。
障害のことは全然知らないのかもしれない。中学生くらいまで学校で少し関わることもあったけど、社会人になってからは全くその機会がなかった気がする。あまり積極的に触れたくのないような話であるけれど、誰もが障害を持つもしくは近くの人が障害を持つ可能性はある。
作中にもあったように、 「慣れる」のが一番大事なのかも。今その状況を自ら作るのは無理だけど、周りにいないからわからない。それは障害者だけではなく、子どもがいる人の気持ちも周りにいないとわからないと思ったから。以外と同じなのかもしれない。
そういう時が来たら受容して、慣れて前に進むしかないのかな 。摂と同病室の●さんが、微笑んで「生きてたらいいことあるから!」って言ってたのも、最後にテルテルと会えてよかったってことなのだろうか。そして、国枝(旦那)を自由にさせたのも、摂が福祉に興味を持って関わり、テルテルの過去を知り、洋治の父親を見たりして感じたことがあったからなのか・・・。いろんな側面で人生は繋がっているのだろうね。受け止めれないことがあってもちゃんといずれ受容できますように。
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岩田(国枝)摂の人生。脊髄損傷の妻の介護をする夫の話から始まり、そこに至るまでの摂の過去が語られています。話が複雑な構成になっていましたが、だんだん謎が紐解かれていくのがすごかったです。
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「『デフ・ヴォイス』の著者が問う”人間の尊厳”とは何か」という文庫の惹句に惹かれて、手に取る。
目次に「無力の王」「真昼の月」「不肖の子」「仮面の恋」が(1)から(3)まで表示される。
「無力の王」は「わたし」と妻が。「真昼の月」には、一志と摂。「不肖の子」では、洋次と不倫する岩田と名乗る「私」。そして「仮面の恋」では、<テルテル>というハンドルネームを持つ障害者の俊治と<GANCO>を名乗る女性。
それぞれ一見関係なさそうな登場人物たちの話が繰り返される。
それが、「エンドロール」で一気に結びつく。
「It's a Wonderful Life」が決まっている。そう来たかと、著者の手腕に脱帽する。
「わたし」がする介護の全般にリアルさが際立つのが、著者のあとがきで納得。
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この類の仕掛け、とても好きです。物語が4つのストーリーで構成されていて、「こことここが繋がるのかな?」と想像しながら読むけど、オチは全く違うものだった。混乱したままラストの章を読みました。もう一度読みたくなるというのは、このことか...。時代背景も、あっちにいったりこっちにいったりしているから、ちゃんと落ち着いて読めるときに一気に読むべき一冊。
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必ずもう一度読みたくなる、と言う一文に惹かれて購入しました。
障がいを持つ方に携る人達の短編集
読み進めるうちに、あれ?なんかこれ…と違和感のようなものを抱きつつ、でもそれぞれの人物の人生(生活)がリアルで興味深くサクサクと読み進めていきました。
そして最後で自分でも「あ!」と気づいたのですが、著者は詳しくラストでもきちんとまとめてくれているので、混乱することなく確かにもう一度読みたくなりました!!
人生は障がいを持つ、持たないと言う事で全く違うものになる、それは当たり前のことだろうけどそれを自分の想像以上に教えてもらった気がします。
そして自分なりに深く考える機会ももらえて、純粋に小説としてもしかけがあり面白かったです。
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「デフ・ヴォイス」シリーズの作家さん。今回もずっしりとしたテーマを面白く読ませてもらった。
事故による頸髄損傷の妻と献身的に介護する中年の夫。1年限定で不妊治療に臨む30代後半の夫婦。不倫関係にある課長とアラサーのOL。ネット上のやり取りで意気投合した脳性麻痺の青年と女子大生。
4組の男女の話が並行して語られて、どこに行き着くのかと思えば、最後には、ああ、そういうことだったのか、となる構成が巧み。
そうした技巧的なところだけでなく、お話自体が、障害者に関わることを軸に社会の様々な問題について当事者性を持って描かれており、とても読ませる。
障害者に対する虐待が心情的に正当化されがちな世相に対し、障害者は『障害の種類や程度に関わらず、「あなたたちと同じ人間」としてこの世界で生きている』という思いが正面からぶつけられるが、例えば脳性麻痺の青年のスキルや考えや感情や生い立ちを描くことを通して無理なくその思いが伝わり、みんながその存在を知ること、その存在に慣れることの大切さが沁み渡ってくる。
私自身、障害がある人が多く働く職場にいるのだが、「排除アート」といったものの存在や特別養子縁組における子どもを受け入れる条件(養子を選ぶことはできない)なども含め、まだまだ知らないことや理解できていないことが多いことも改めて自覚した。
頸髄損傷のリハビリやその後の介護の描写は読み進めるのも辛くなる生々しさだったが、作者のあとがきを読めば『私自身、作中人物と同じく頸髄損傷という障害を負った妻との生活を三十年続けております』とあり、驚く。
『小説内の設定と異なり、いたって円満に過ごしております』とさらりと書いてあるが、そこには敬服しかない。
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やはり小説はいいなあと思う作品。 残りページが少なくなりどうやっても4つの物語を纏めるか少し心配になったがかつて無い方法で纏めていた。
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障害、介護と重い内容ではあったが自身の考えを改めるキッカケをくれた良い本だった。当方の周りにはそういった方々はいない為、感情移入はそれほどできなかったが想像しただけで苦労が絶えない生活なんだと想像できた。それも著者自身が経験してる故の描写、考え、語彙力なんだと頭が下がる思いである。いつ自身が障害を持つことになるか、また家族を介護することになるか分からない以上、さらに広い視野を持ち相手の感情、自身の心構えに気を配っていきたいと感じた。
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理想と現実。どこがどう繋がってフィクションなのか?
タイトルが平行しているが、章立てとして独立しているようでもないし、あとがきを読んで少~し理解
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障害や差別という重いテーマを扱っていて辛くなる部分も多々あったが、読みやすい文体のせいでさほど暗くならずに最後まで読み進めた。時系列や登場人物が入り組んでいて戸惑うが、ラストのエンドロールと年譜ですべてが繋がって物語の流れが理解できる。斬り込んだテーマも良いし物語の仕掛けも良くできているのに、ストーリーのバラバラ感と結末のムリヤリ感が拭えなかったのが少し残念だった。
Posted by ブクログ
「ありがとう」とせめて言ってくれたら。。と、
「ありがとう」の言葉は心が救われる。
これは健常者だからだろうか。
いや、そうではない。
その言葉事態が優しさを生むはず。
だが、絶対その言葉を言わないと決めているような妻。ちょっとそこが解らなかった。
と、介護する人、介護される人(障がい者側)が交錯する物語。そして、四つの話は時空間で同じ。
介護の経験もないが身近にそのような人いたりするので最後まで辛かった。
未来はわからないし、辛いことも多いだろう。
でも「素晴らしきかな人生」と、思えば素晴らしいか
Posted by ブクログ
別人格のように振る舞っている登場人物を、最後に同一人物です。と言われても消化しきれなかった。
同じ人物でも、年代や人によってそれぞれは別人格に映るかも知れないし、それはあくまで主観からの視点だからおかしくないのか。
自分を棄てる決断が出来るようにツラく当たる。これはある意味愛なのかな。
Posted by ブクログ
過去の作品もそうだけど、この著者は社会的弱者に焦点を当てた作品ばかりのようで、今作も障害者を巡る物語になっている。事故で頚椎損傷となった妻を介護する夫、生まれついての脳の障がい(CPというらしい)のある男性、などがでてくる。
他にも子供を持つことで意見の相違がある夫婦、
不倫の関係に終わりを感じているOLなどの物語が描かれている。始めはそれぞれ無関係に見えたそれらのストーリーがやがてひとつの物語になっていく。
重たいけど一気に読ませる力のある作品。