丸山正樹のレビュー一覧
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ネタバレ有能/無能なんていう物差しは、社会が作ったものにすぎない。そんなもので命の価値に軽重をつけたくない。健常者の感覚で言うならば、コスパ•タイパが重視される社会で、それに適応できる人が「優秀」と評価される。
でも本当は生きているだけでその生が尊重される世界で生きたい。
なんていうのは綺麗事かもしれないけど、少なくとも命の選別が行われて、蔑ろにされている命がある今の社会では生きていたくない。
•353頁の裕太のセリフに刺された。
「自分が差別的な人間と思われたくないからそんなこと言ってるんだろ。会いたいわけないじゃないか。いや仮に会いたいというのが本心だとしても、それはあくまで『奉仕の精神』だ -
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大手フランチャイズ加盟コンビニ店主の主人公は、「万引き犯など最低の人間」との正義感の強い人物で、許しを請われても必ず警察に通報して、喜びを味わっている。ある日、菓子パンを万引きした男を捕まえようとして、もみ合いうちにその男を死亡させてしまい、人生は大きく崩れていく。妻子との離別と娘のパパ活疑いが、心をかき乱す。一方、児童養護施設で暮らしていた頃に万引きで捕まり、人生が大きく崩れてしまった女性。バイトを掛け持ちしながら必死に自律生活を夢見るが、コロナ禍で次々に職を失い、メンズエステで働いている。しかし、インターネットでの書き込みなどに不安を抱き、目標の貯金も貯まり潮時だと思っている。自身の児童
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ディナーテーブル症候群という言葉自体はきいたことがあったし、概要もある程度は知っていたけれど、いざ当事者の声を読むとかなりきついものがある。
毎度のことではあるが、今回は特に全体的に入念なリサーチのもと書かれていて、ろう文化・ろう者を取り巻く社会のことがよくわかるものだった。SNSでろう者が日々呟いていることがまさに出てきて、より心に重くのしかかるものになった。正直、ろう者と聴者の分断は完全に無くなることはないと思っているけれど、少なくとも自分はニュートラルでありたいと願う人はこのシリーズを読んでほしい。きっともう読んでいるかもしれないね。 -
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ネタバレ2025/05/15予約 2
いつもながら考えさせられる作品。
社会問題の万引き、SNS誹謗中傷、児童養護施設、悪質ホストなどに加え初めて知る言葉であるケアリーバーなど盛込み、突破口はどこにあるのか分からなくなる。コンビニ店主だった柳田は、万引きをしたミチルを警察に通報、その後2人は立場も変わり興信所の調査員と依頼人として顔を合わせてしまう。何かひとつでも躓いてしまうと連鎖反応のように全て崩れてしまう。誰にでも起こりそうな躓きを受け止めたり再生を促す余裕が、現代にはない。万引きを許さない気持ちも、児童養護施設で育っとたことも、親が万引きし追いかけられ亡くなったことも、本人の罪ではない。だから -
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丸山正樹『わたしのいないテーブルで デフ・ヴォイス』創元推理文庫。
『コーダ』の手話通訳士・荒井尚人を主人公にした『デフ・ヴォイス 法廷の手話通訳士』シリーズ第4弾。
『デフ・ヴォイス』とは、ろう者の発する明瞭でない声、何を言っているか判然としない言葉のことで、『コーダ』とは、ろう者の両親から産まれた聴者のことである。著者は一般の人が全く知らない聴覚障害者について誤解することが無いよう非常に気を使ってその実態を極めて詳しく、正確に描いていることが良く解る。
今回は『ディナーテーブル症候群』という家族や友人、仲間と交われない聴覚障害者の苦悩がテーマとなっている。ページを捲る度に聴覚障害者の