丸山正樹のレビュー一覧
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丸山正樹『ワンダフル・ライフ』光文社文庫。
変わった構成の連作小説の形式を取っている作品である。『無力の王』『真昼の月』『不肖の子』『仮面の恋』という4つのタイトルを付けられた4組の男女の物語が3回ずつ描かれ、一見関係の無いように思えた4つの物語は『エンドロール』を経て、最後に1つの物語に帰結するのだ。
まるで裏と表の世界のように『エンドロール』に描かれたもう1つの世界。
東日本大震災と福島第一原発事故、新型コロナウイルス、障害者の人権と現代の様々な災害や問題を散りばめながら、人生を生きる意味を教えてくれるような深く重たい小説だった。
『無力の王』。事故により頸髄損傷という重度の障害 -
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丸山正樹『刑事何森 孤高の相貌』創元推理文庫。
『デフ・ヴォイス』シリーズのスピンオフ。『デフ・ヴォイス』にも登場した、昔気質で組織に迎合することなく、一途で正義の使徒のような刑事、何森稔を主人公にした中短編3編を収録。
硬直化した組織に於いては一途で実直であり過ぎると疎まれる傾向にある。適度が良いと言うことだが、その適度の加減が解らぬ男も居るのだ。それが何森稔という刑事だ。一途で実直であり過ぎるが故に幾ら実績を挙げようと所轄署をたらい回しにされ、昇進は見送られる。
3編共に読み応えがある本格的な警察小説に仕上がっている。事件の表面ばかりを見て、組織の面目を保つのに必死な所轄署の中で異彩 -
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居所不明児童の問題を扱ったお話
フリーランスカメラマンの二村直は、恋人で小学校教師の祥子から妊娠を告げられる。気に障る親のせいか、自分の子供を持つことに拒否感がある直は結婚や堕胎の提案をためらう。
その問題とは別に、祥子の教え子で父親と共に連絡が取れなくなった紗智を探すことになった直が、手がかりの情報を元に名古屋に向かった先での出来事。
居所不明児童、棄児、虐待、少女売春、売春斡旋、ストリートチルドレンなど……
居所不明児童
連絡を取れない子供、親とともに所在がわからない等の子供たち
行方不明や虐待のニュースを見かけるたびに、実態の数としてはどのくらいの規模感なのかと心がざわつく
普 -
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居所不明児童、という言葉をこの作品で知った。
虐待などによってうまれるそういった子どもやストリートチルドレンの背景や、暮らしについても描かれているドキュメンタリーとも言える小説。
話としては、お父さんとともに行方不明になった婚約者が担任で受け持っている娘を、なんとなくのきっかけで主人公が追っていく…というのがメインストーリー。
その主軸をもとに、主人公と家族の関係、婚約者との関係、仕事との向き合い方、関連する登場人物の背景などがしっかりと描かれているので、物語に深みが出ている。
デブヴォイスの時もそうだけど、この作者さんはその辺り上手いなと思う。
デフボォイスを読んでいると、少しオヤっと -
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主人公の荒井尚人が手話通訳者として、そして過去に警察事務官をしていたことから法廷の通訳もこなす。
そんな中で、荒井も家族を持ち、悩んで子どもを持つことを選択する。
そして生まれてきた瞳美はろう者だった…
母親のみゆきは、聴者に近づけるよう人工内耳を手術で埋め込みたい、と悩み、最後にろう者として育てる決断をする。
荒井家に産まれた瞳美は、かなり恵まれた環境だと思う。でもここでコーダとして育ち当たり前に日本手話を使いこなせる荒井と、小さい頃から面白がってアラチャンの手話を覚え使いこなせる美和の間で、以前、万一子どもが、ろう者だとしてもわたしが覚える!と言ったことが自分の枷になり、みゆきは別の意味 -
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デフヴォイスシリーズ第三弾!
今回も初めて知ることもたくさん。また新たな世界を見せて頂きました。
丸山さんの社会派小説は、毎回心に訴えかけられるものがあって勉強になる。
広く読まれて欲しい作品です。
*「慟哭は聴こえない」
産婦人科での通訳。
読後、胸を抉られる思いでした。
医療通訳をめぐる問題や聴覚障がい者の緊急通報に関する問題の深刻さを改めて感じた。
*「法廷のさざめき」
勤め先を雇用裁判で訴えた民事裁判の通訳。
悲しいけどリアルな現実なんだろうな…と。障がい者雇用は進んでも人への理解が同じように進んでいるわけではない。
原告の悲痛な言葉が胸に刺さりました。
『医療関係者は、しばし -
購入済み
心に沁みます
デフ・ヴォイスシリーズで初めて読んだ作家さんです。文章も場面転換も分かりやすく読みやすいです。でもサクサク読んでしまう軽い内容ではなく、本当に心に沁みる良い小説でした。
手話の種類や『聴こえ』の度合いなどについても勉強になることが多く、もっと理解していきたいと思いました。 -
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丸山正樹『漂う子』文春文庫。
丸山正樹の作品を読むのは『デフ・ヴォイス』に続き2作目となる。本作は『居所不明児童』をテーマにした社会派小説である。
大人になりきれず、自覚を持たない親たちの身勝手な論理により、疎まれ、虐げられ、まともな社会生活を送れず、社会から遺棄される子供たち。連日のようにテレビや新聞は子供の虐待や殺害死体遺棄といった悲しい事件を伝えている。
長年の親との確執により、自分が子供を持ち、親になることに疑問を抱くフリーカメラマンの二村直を主人公がある居所不明児童の調査をきっかけに、家族について見詰め直すという救いのある物語である。しかし、結末には少し納得できなかった。
二 -
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「デフ・ヴォイス」シリーズ第3弾。手話通訳士・荒井の仕事を横軸に、みゆき・美和との家族としての成長、甥っ子(兄の息子)司の悩みを縦軸に6年間が描かれています。
第1話「慟哭は聴こえない」
男性通訳者は歓迎されない産婦人科での通訳。初めての出産を控えたろうの夫婦と出会う。
美和は小学3年生。
冒頭の居酒屋でのトラブルには、蛇の目寿司事件が思い出されます。
第2話「クール・サイレント」
ろうの人気モデルHALの通訳を引き受ける。テレビ業界が求める「かっこいい手話」とは?
美和は小学5年生。2016年の設定。
第3話「静かな男」
廃業した安宿で変死体が発見される。この事件を何森が担当。亡くなっ