丸山正樹のレビュー一覧
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丸山正樹『刑事何森 孤高の相貌』創元推理文庫。
『デフ・ヴォイス』シリーズのスピンオフ。『デフ・ヴォイス』にも登場した、昔気質で組織に迎合することなく、一途で正義の使徒のような刑事、何森稔を主人公にした中短編3編を収録。
硬直化した組織に於いては一途で実直であり過ぎると疎まれる傾向にある。適度が良いと言うことだが、その適度の加減が解らぬ男も居るのだ。それが何森稔という刑事だ。一途で実直であり過ぎるが故に幾ら実績を挙げようと所轄署をたらい回しにされ、昇進は見送られる。
3編共に読み応えがある本格的な警察小説に仕上がっている。事件の表面ばかりを見て、組織の面目を保つのに必死な所轄署の中で異彩 -
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まずはこの題名でロック好きの私にとって思い出すのが、「キッズ・アー・オールライト」イギリスのロックバンドザ・フーのドキュメンタリー映画であり楽曲でもある。
丸山正樹さんがまたやってしまいました。
ヤングケアラー、日系ブラジル人の居場所これらを題材にした社会問題を考えさせられる素晴らしい作品でした。そしてとても印象に残ったセリフで河原が悩む言葉に共感しました。「はたして自分は彼らに「将来」を考えさせ、「未来」に希望を抱かせることかできるのだろうかー。
「ピアカウンセリング」や「レスパイト」などの専門用語への関心
あなたも読んで共感して下さい。感動して下さい。 -
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居所不明児童の問題を扱ったお話
フリーランスカメラマンの二村直は、恋人で小学校教師の祥子から妊娠を告げられる。気に障る親のせいか、自分の子供を持つことに拒否感がある直は結婚や堕胎の提案をためらう。
その問題とは別に、祥子の教え子で父親と共に連絡が取れなくなった紗智を探すことになった直が、手がかりの情報を元に名古屋に向かった先での出来事。
居所不明児童、棄児、虐待、少女売春、売春斡旋、ストリートチルドレンなど……
居所不明児童
連絡を取れない子供、親とともに所在がわからない等の子供たち
行方不明や虐待のニュースを見かけるたびに、実態の数としてはどのくらいの規模感なのかと心がざわつく
普 -
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居所不明児童、という言葉をこの作品で知った。
虐待などによってうまれるそういった子どもやストリートチルドレンの背景や、暮らしについても描かれているドキュメンタリーとも言える小説。
話としては、お父さんとともに行方不明になった婚約者が担任で受け持っている娘を、なんとなくのきっかけで主人公が追っていく…というのがメインストーリー。
その主軸をもとに、主人公と家族の関係、婚約者との関係、仕事との向き合い方、関連する登場人物の背景などがしっかりと描かれているので、物語に深みが出ている。
デブヴォイスの時もそうだけど、この作者さんはその辺り上手いなと思う。
デフボォイスを読んでいると、少しオヤっと -
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主人公の荒井尚人が手話通訳者として、そして過去に警察事務官をしていたことから法廷の通訳もこなす。
そんな中で、荒井も家族を持ち、悩んで子どもを持つことを選択する。
そして生まれてきた瞳美はろう者だった…
母親のみゆきは、聴者に近づけるよう人工内耳を手術で埋め込みたい、と悩み、最後にろう者として育てる決断をする。
荒井家に産まれた瞳美は、かなり恵まれた環境だと思う。でもここでコーダとして育ち当たり前に日本手話を使いこなせる荒井と、小さい頃から面白がってアラチャンの手話を覚え使いこなせる美和の間で、以前、万一子どもが、ろう者だとしてもわたしが覚える!と言ったことが自分の枷になり、みゆきは別の意味 -
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デフヴォイスシリーズ第三弾!
今回も初めて知ることもたくさん。また新たな世界を見せて頂きました。
丸山さんの社会派小説は、毎回心に訴えかけられるものがあって勉強になる。
広く読まれて欲しい作品です。
*「慟哭は聴こえない」
産婦人科での通訳。
読後、胸を抉られる思いでした。
医療通訳をめぐる問題や聴覚障がい者の緊急通報に関する問題の深刻さを改めて感じた。
*「法廷のさざめき」
勤め先を雇用裁判で訴えた民事裁判の通訳。
悲しいけどリアルな現実なんだろうな…と。障がい者雇用は進んでも人への理解が同じように進んでいるわけではない。
原告の悲痛な言葉が胸に刺さりました。
『医療関係者は、しばし -
購入済み
心に沁みます
デフ・ヴォイスシリーズで初めて読んだ作家さんです。文章も場面転換も分かりやすく読みやすいです。でもサクサク読んでしまう軽い内容ではなく、本当に心に沁みる良い小説でした。
手話の種類や『聴こえ』の度合いなどについても勉強になることが多く、もっと理解していきたいと思いました。 -
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丸山正樹『漂う子』文春文庫。
丸山正樹の作品を読むのは『デフ・ヴォイス』に続き2作目となる。本作は『居所不明児童』をテーマにした社会派小説である。
大人になりきれず、自覚を持たない親たちの身勝手な論理により、疎まれ、虐げられ、まともな社会生活を送れず、社会から遺棄される子供たち。連日のようにテレビや新聞は子供の虐待や殺害死体遺棄といった悲しい事件を伝えている。
長年の親との確執により、自分が子供を持ち、親になることに疑問を抱くフリーカメラマンの二村直を主人公がある居所不明児童の調査をきっかけに、家族について見詰め直すという救いのある物語である。しかし、結末には少し納得できなかった。
二 -
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「デフ・ヴォイス」シリーズ第3弾。手話通訳士・荒井の仕事を横軸に、みゆき・美和との家族としての成長、甥っ子(兄の息子)司の悩みを縦軸に6年間が描かれています。
第1話「慟哭は聴こえない」
男性通訳者は歓迎されない産婦人科での通訳。初めての出産を控えたろうの夫婦と出会う。
美和は小学3年生。
冒頭の居酒屋でのトラブルには、蛇の目寿司事件が思い出されます。
第2話「クール・サイレント」
ろうの人気モデルHALの通訳を引き受ける。テレビ業界が求める「かっこいい手話」とは?
美和は小学5年生。2016年の設定。
第3話「静かな男」
廃業した安宿で変死体が発見される。この事件を何森が担当。亡くなっ -
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ネタバレコーダを初めて知った。
ろう者の親をもつ聴者の子どものことを指すんですね。
恥ずかしながら、「ろう者」「聴者」の言葉もなじみが薄く、耳の聞こえない方々をとりまく様々な問題について、今回の小説を読んで初めて知ったことも多かった。
コーダの存在なんて考えもしなかった。
転んで泣いても親に気づかれない。我慢するしかない。
両親とは、聴者の世界を分かち合えない。
コーダの孤独に気づかされる。
本当に理解や寄り添いが必要なのは障がいをもつ人だけではないのだ。
手話ができる。
仲間だと思われる。
でも聴者だとわかると「仲間ではない」と落胆に近い表情をされる。
ここでも孤独を感じる。
「損なわれ -
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「デフ・ヴォイス」4冊目。コロナ禍の下での荒井と家族の物語。
今朝の朝日新聞「天声人語」に、1880年にミラノで行われた聴覚障害教育国際会議での決議(ろう者教育では口話法が手話より優先されるとされた)のことが載っている。
2010年のバンクーバーでの会議でその決議が完全撤回されるまで日本も含めて多くの国々の教育現場で手話が禁止されてきたこと、50年ほど前から手話を独自の言語として認める動きが出始めたこと、今のニュージーランドでは手話が英語・マオリ語に次ぐ公用語になっていることなどが紹介されており、日本で初めてとなるデフリンピックの開幕を契機に、ろう者のコミュニケーションについても考えたいと結 -
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オーディブルで聴きました。
デフ・ヴォイスシリーズの作家の作品。面白かった。染みた。。
万引き犯の素性ら動機やらを見て警察に引き渡す渡さない⋯とやっていたら、それはそれでおかしなことになるとは思いつつ、人の人生がそれきっかけにすっかり狂ってしまうこともあると思うと、難しい。万引きができないシステムを開発できないかね。
SNSでの誹謗中傷する人たちの描写も、私が言ってほしいことを的確に表現してくれていて、やはり言葉のプロは違う。
そんなめぐり合わせないでしょ、とは思いつつ、最後まで一気聴き。最後はあっけなかったけれど、読後感も悪くなく、選んで良かった。
それにしても、ホストへ貢ぐためのお